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年以上前、バイト帰りの電車内で「よう子ちゃん~!」と声をか

けてきたのはスキーツアーで一緒だった男性。それから数週間後、私が降りる駅でたまた

ま乗り合わせて声をかけてきた男性。どちらも今の夫です。偶然を装い私に声をかけるた

めに、何時間も前から待っていてくれたということを結婚してから初めて知りました。

 携帯もLINEもない時代。大体の時間を考えて寒い日、ずっと待っていてくれた彼。

寒い日は自分のマフラーをはずして私にかけてくれました。そんなやさしさがとてもうれし

かった。その秘密を知ってからより一層愛情が芽生えました。

 結婚後、けんかをしても冷静に考え、出会ったころのことを思い出すようにしています。

するとだんだん怒りも収まっていくから不思議です。彼の私への純粋で一途な思いが現在

の結婚生活を円満にしてくれている秘訣になっているのかもしれません。

 「困ってる事あんねん」。少し前から付き合っていた夫が言い

ました。「何?」「風呂やねん」。生まれた時に母を亡くし、終戦

時に父も亡くしていた夫は、育ててくれた祖母と二人暮らし。

足腰の弱ってきた祖母を家で行水させていたという。ところが寒くなってきてそれもできず、

思案していたとのこと。

 それから夫が祖母をおぶって銭湯まで、引き継いだ私が入浴介助、夫がおぶって帰るを

何度も繰り返しました。そのうち、入浴後、家まで帰るのがおっくうになり、「ま、いいか」。

心配した母の勧めで、翌年2月に式を挙げ、4月に寝付いていた祖母を見送りました。

 あれから

60

年、仕事、家、私の両親の事など、いろいろありましたが、夫と一緒の人生

を送れた事を何よりと思っています。その夫が7年前に神経難病を発症、入退院を繰り返し

ています。今も点滴漬けの毎日ですが、「パパさん、がんばってね」。

一途な思いが行動に

介護から愛を育み 60 年

妻45歳(筆者) 夫45歳 子 17歳、14歳 

妻 85歳(筆者) 夫 89歳

特別審査員

奥野史子

さん評 スポーツコメンテーター・「いい夫婦の日パートナー・オブ・ザ・イヤー」受賞

通信手段が限られていた当時、好きな人のために何時間も待つ男性の行動力からひたむきな愛情

が伝わります。私自身は夫が海外留学していた5年間、連絡は主に

FAX

。改めて読み返そうと思っ

たら、感熱紙だったためすべて消えてしまっていました。あの時代ならではの思い出です。

審査員賞

佳作

夫の祖母の介護をきっかけに結婚され、以来

60

年、共に支え合いながら人生

を歩んでおられます。相手の家族を思いやる優しさから愛を育み、積み重ねて

きた年輪に尊敬の念を抱きます。

40

代男性)

審査員から

ここがいいね!