本棚から一冊~おすすめ図書を紹介します~

更新日:2026年05月19日

ページID: 58168

5月のおすすめ

«ラン・ガール・ラン!女子マラソンのとびらをあけたボビー・ギブ»アネット-ベイ-ピメンテルさく ミーシャ-アーチャーえ 偕成社

ボストンマラソンは世界で一番古く、ランナーたちの憧れの大会。走るのが好きな女の子ボビー・ギブは、学校では決まりを守ってスカートをはいていますが、家に帰るとズボンに履き替え森へ走りに出かけます。ある春、ボストンマラソンのランナーたちを見て走りたくてたまらなくなるボビー。「女の子が走っているわ」と驚かれても、走ることで心は自由になるのです。練習を重ね協会に手紙を書きますが「女性は42キロも走れるようにできていない」との返事が。「わたしがせかいの人たちに見せてやろう。女の人になにができるかということを。」決意したボビーの闘いの日々が描かれています。ボビーのニュースを見て走り出す女性たちの姿、女子優勝者たちの名前が刻まれたページに心が躍ります。こうやって歴史が作られてきたのかと胸が熱くなる絵本です。親子で味わってみてくださいね。

 

 

4月のおすすめ

≪TRUE Colors 境界線の上で≫神戸遥真ほか著 講談社

10代のこどもたちの抱える違和感や生きづらさに向き合う5つの物語。生理は将来ママになるために必要なもの…わたしはママになるのだろうか?「To Be a Mam」。中学公式野球のエースになったのに、女の子は甲子園に出られないという現実にショックを受ける「三月のグラウンド」。大切な人に性自認について告白された時、どう受け止めたらいいのか考える「親友のカレ」。お母さんの出張で家事を任されたけれど、なぜわたしばかり?と悩む「ダイニングテーブル」。満員電車で痴漢の被害者になったぼくを描く「ぼくと、体と。」…それぞれの主人公たちが痛みや苦しみの中にあっても、前向きに逞しく歩いていく姿に勇気をもらいます。表紙の少女のように、若者たちが生き生きと輝いていてほしいと思います。ジェンダーについての理解を深めたいおとなの方にも。

 

3月のおすすめ

≪AはアセクシュアルのA~恋愛から遠く離れて≫川野芽生著 リトルモア出版

アロマンティック・アセクシュアルという言葉を知っていますか。アロマンティックとは「相手のジェンダーに関係なく他者に恋愛面で惹かれないこと」。アセクシュアルは「他者に性的な面で惹かれないこと」。それがどういうことなのか。当事者である著者がどのような痛みを感じながら生きてきたのかを、まっすぐに伝える本です。人は恋愛をし性的に惹かれるのが当たり前という世界の中で生きるのが、どれほど苦しいことなのか、読まなければ知ることはなかったかも。「相手は恋愛のつもりでも自分にとっては性暴力」と感じる日々の生きづらさは計り知れません。自分の認識を根本から問い直さなくては。誰もが自分らしく生きるために。誰かの言葉を自分のこととして受け止め、分かりたいと思います。そして自分一人だと思っている人に、この本が届きますように。

 

2月のおすすめ

≪子どもの本でジェンダーレッスン~学びたいあなたのためのブックガイド≫藤木直実編著 かもがわ出版

ジェンダーについての本を子どもに手渡すとき、役立つ本です。「専門知識にもとづく読み解きとともに、子どもと本に接する人たちに届けたい。おとなにとっても、子どもとともに学ぶきっかけになるような入門書をつくりたい」という筆者たちの熱い思いから生まれました。絵本、幼年文学、小説、コミックなど様々な分野の本が紹介されています。「最初から最後まで順番に読むことを想定して、ゆるやかな流れのもとに配列」されているので、ブックガイドではありますが、学びたい人が読みやすくなっています。作家のエッセイや、巻末には用語集もある手厚さです。ローズWAMにはほとんどの本が揃っていますので、気になったらすぐに手に取って読んでみてくださいね。

 

 

1月のおすすめ

« BUTTER»柚月麻子 新潮社

次々出てくる料理が何とも美味しそう。思わずレシピをメモしたくなります。けれどもそれは、愛人業を生業とし三人の男性の命を奪った、若くも美しくもない「カジマナ」がブログで公開するバターたっぷりの料理たち。女性記者の町田里佳は、殺害容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)との拘置所での面会を取り付けます。取材を重ねるうち、本能のままに生き、食べ方や行動まで指南してくる彼女に翻弄され、やがて自分自身を見失っていくのです。彼女は本当に男たちを殺したのでしょうか。獄中のカジマナに振り回されながらも、そこからたくましく自分を見つけていく主人公の姿を、ドキドキしながら体験してみてください。

 

12月のおすすめ

«わたたしたちを阻むもの 女性が抱える生きづらさの根源»対馬ルリ子著 青月社

産婦人科医である著者が女性たちに「自分の身体の声に耳をすましてほしい」と書いた本です。「女性の心身の揺れ動きは、命の希求にあふれています。だからこそ、生命力に満ちた新しい命を生み出すエネルギーである女性ホルモンを、社会全体で大事にしていきませんか」。女性たちを包み込むような、あたたかいメッセージが語られます。身体についての正しい知識を持たないでいると、不調に気づかないふりをしたり、「がんばりすぎ」を止めれず自分を苦しめてしまいます。本書では、著者の半生を振り返りながら、女性の内側(身体の仕組み)と外側(社会の構造)に目を向けています。月経、更年期だけでなく、ホルモンの揺らぎが大きい時期に増悪する「わけのわからない体調不良」についても着目。気になるワードから読んでみては。

 

11月のお知らせ

≪元気でいてね≫藤原ハル著 祥伝社

こどもを持つこと、持たないこと、持てないこと。それぞれの登場人物が、悩みながら迷いながら自分の人生を選んでいきます。産む選択をしなかったことで離婚した女性、仕事と子育ての両立に苦しむ女性、同性愛を選ぶ人たち、ひとりで生きていく決意をする女性…それぞれの思いを知ることで、手を繋ぐことができるのではと、あたたかな希望に包まれるコミックです。「どこか岸の向こう 遠くのあなたへ 祈りを込めて ずっと手を振る」そんな主人公の思いを受け止めてください。

 

10月のおすすめ

≪月収≫原田ひ香著 中央公論新社

ベストセラー「三千円のつかい方」の著者の新作です。女性の自立を考えるとき、月収で見えてくる世界が描かれています。「月収四万円の女」から「月収三百万円の女」まで、それぞれの生き方がリアルで身につまされます。始まりは、どの女性も幸せそうには見えません。お金を得るために犠牲にするものがどれほどあるのか。何と引き換えにお金を得るのか。女性であることの生きづらさを抱えつつ、それでも逞しく困難に向かっていく登場人物たち。強く生きてほしいと応援したくなります。あらためて自分の人生を見つめるきっかけになるかもしれません。

 

9月のおすすめ

≪ふたり暮らしの「女性史」≫伊藤春奈著 講談社

家制度があった時代に、結婚ではないパートナーシップを選び、女性がふたりで暮らすという道を選んだ「歴史に埋もれてきた女性たち」について研究し著された一冊。陸上選手、新聞記者、パイロット、鉱山師、騎手など、戦前期の「女性」としては珍しい職業の女性たち。世間が求めてくる「あるべき女性像」も「家族」も拒み、違和感を言葉や行動で示し、闘ってきた主人公たちの姿に「あまりに不当な努力ではないかと、私も怒ったことが何度もあった」と著者。そして「自分たちだけの部屋を守り抜くことで生き残った人たちでもある」と述べています。ただ自由に愛しいと思う相手と暮したかった彼女たちの道のりはあまりに険しく、またそのことがほとんど語られてこなかったことにも驚きます。世界的スプリンターとしてオリンピックにも出場した人見絹江と藤村蝶の物語。数少ない女性飛行士となった馬淵てふ子と長山きよ子、木部シゲノ。五代友厚の娘、藍子と徳本うめ。女性騎手斎藤すみと芳江。彼女たちの足跡を語り継ぐことで、同じ苦しみを持つ女性たちに希望を与え、歴史を変えていけるのではないでしょうか。

 

8月のおすすめ

≪老いを読む 老いを書く≫坂井順子著 講談社

ここ数年、本屋の棚の幅を広げているのはエッセイコーナーだと著者はいいます。その中でも老いをテーマにした‟老い本”が平積みの大半を占めていると。「世界トップクラスの高齢化率」の中で不安を受け止める役割をしている‟老い本”と、その著者たちを検証することで高齢化について考えます。

老いの名作『楢山節考』から『いじわるばあさん』までを読み解く第1章‟名作は老いない”。第2章では‟老いをどう生きるか”。[定年クライシス]や[「乙女少女」は未来志向]などの言葉が気になります。第3章‟老いのライフスタイル”は、一人暮らし、おしゃれ、料理、移住など。第4章では‟老いの重大問題”を語ります。「金は足りるのか、配偶者の死、死との向き合い方、老人と性」。書きながら著者は、老いが視野に入ってきた自分たちの世代もまた読者であることに気付きます。老い本の量は、「よりよく生きたい」という希望の量。本を傍に置いてたくましく、前を向いて生きていけたらと思います。

 

7月のおすすめ

≪望まれて生まれてきたあなたへ≫やまもとりえ著 KADOKAWA

悲しすぎるニュースから始まるこの物語りは衝撃的だけれど、すぐそこにあることのようで思わず引き込まれます。テレビに映る新生児遺体遺棄事件の容疑者がかつての友人だったことに気付き、彼女との時間と、その後の二人の歩いて来た人生について考える主人公。シンプルなイラストが、厳しい現実をどこか幻のようにも感じさせます。二人の間にある境界線を、私たちはどうすればいいのでしょうか。誰かが分かってくれることが、せめてもの救いになると信じたくなります。このような現実があることを知り、自分のこととして考えられることが求めれれるのではないでしょうか。

 

6月のおすすめ

≪おおきなて≫チェ・ドッキュ著 ひだまり舎

本を包み込む帯と、たったひとつの文章なはっとさせられます。この本のテーマである〈おとうさんの手〉について、絵が静かに語りかける絵本です。左のページには我が子を慈しむ手、右のページには父親を支える手が描かれています。そしていつしか我が子は大きくなり、自分は年老いた父親になっていきます。時の流れが立場を変えてゆく瞬間です。最後のページのそっとつないだ手から、読み手はそれぞれ何を感じるでしょうか。「私は、父の手が伝えてくれた愛を忘れません。」そんな作者の思いのこもった絵本が、大切な人をすぐそばに感じさせてくれるのでは。

 

5月のおすすめ

≪ロンドンの片隅で、この世界のモヤモヤに日々クエスチョンしているよ≫クラーク志織文・イラスト 平凡社

イラストレーターの著者の、ロンドンで暮らしながら感じるフェミニズムについての思いが、ポップなイラストと共に本になりました!もともと「フェミニズム」を否定していた著者ですが、女性として生きていく中で「なんで?」と感じることがたくさんあったり、「女の子なのに」と行動を制限されたりするうちに疑問を感じます。20代後半ロンドンに引っ越したことで、自由な気持ちに。ロンドンでは女性を性的に表現する広告を見なかったり、女性キャスターが堂々と意見を述べたり、「女の人が怒っても変じゃないんだ!」と気付くのです。「私は『女の子』である前にひとりの人間なんだ」と。10年以上たった今、イギリスにもまだまだ課題は存在し、フェミニストたちは闘っています。けれど日本でもこの数年間で急速に社会が変わり始めているといいます。
へなちょこで完璧じゃない自分でも、世界のモヤモヤに声をあげていいんだと教えてくれます。「フェミニズム」が身近になる1冊です。

 

4月のおすすめ

≪さくららら≫升井純子文 小寺卓矢写真 アリス館

日本一遅く咲くさくらちゃんを描いた写真絵本です。主人公は5月の下旬に咲く北海道の「さくらちゃん」。

「ねむりすぎだよ さくらちゃん」「ほかのさくらと ぜんぜんちがう」まわりのみんなは「さくらちゃんも はやくはやく」と急かします。

けれど遅いってだれが決めるのでしょう?みんなと同じでなくてはダメ?大きくなければいけないでしょうか?

「わたし さきました」さくらちゃんの言葉にはっとします。

「わたしのさく日は わたしがきめる おそくたって これがわたし ちいさくたって  これがわたし!」

自分の気持ちを大事に自分の思いで踏み出せばいい、そんな大切なメッセージを届けてくれます。はじまりの春に、すべてのこどもたちに届けたい絵本です。

 

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