本棚から一冊~おすすめ図書を紹介します~
更新日:2026年09月01日
9月のおすすめ
«たったひとつのひかりでも»キャット・イエイ文 イザベル・アルスノー絵 工学図書
お日さまが雲に覆われ、暗闇に包まれるところから、物語は始まります。
「ふあんや しんぱいや おそれで いっぱいな とき どうかひとつ しんこきゅう」
「きっと こころの なかに ちいさな ひかりが みえるから」と、どこかから聞こえてきます。
そして何度も繰り返される「ちいさな ひかりでも たった ひとつの ひかりでも みちを てらすのに じゅうぶんだから」というフレーズがお守りのように、寄り添ってくれます。辿り着いた場所には何があるのか。出てくるこどもたちと一緒に歩いて、見届けたくなります。柔らかな描写と静かな語りに、いつの間にか心が穏やかに。一人静かに読みたくなる絵本です。
8月のおすすめ
«ママのおむかえ、どっちがはやい≫エマ・ヴィルケ/文 ヨアンナ・ヘルグレン/絵 徳間書店
ほいくえんで、ママのお迎えを待つ二人の女の子。まだかまだかと待ちながら、窓辺で想像力をふくらませます。乗り物に乗ったり、とぶように走れる靴を履いたり、サメより速く泳いだり!ママたちはスーパーウーマンのように、猛スピードで子どもたちのもとにやってきて、お庭にすとんと着陸。飛び上がって駆け寄る子どもたちの姿に、ママを思う気持ちが伝わります。世界中の頑張ってるお母さんたちは、こんな存在なのかもしれません。
7月のおすすめ
≪共働き夫婦の忙しくてもつくれる簡単おうちごはん≫yayoi著 宝島社
夏休みが始まりました。この時期、子育て世代を悩ませるのがご飯作りではないでしょうか。Instagramで日々のご飯を発信している著者は、共働きの会社員なのだそうです。平日は仕事終わりにパッと作れる時短ご飯、休日は疲れを癒しご褒美となるように、と発信してきたそう。「食卓の時間をあたたかく、明日を頑張る力になるように」との思いがこめられています。大きな写真に、大切な工程やコツが手書きで書かれ、見やすいレシピ本です。長い夏休み、子どもと一緒に作ってみるのも楽しそうですね。
6月のおすすめ
«はんなちゃんそうり~総理大臣になりたい女の子とおばあちゃんおばけの話≫伊藤孝恵作 松本えつを絵 三恵社
昨年、日本で初めて女性の総理大臣が誕生しました。その少し前に作られた絵本です。
はんなちゃんは総理大臣になりたいという夢を持つ女の子。けれど女の総理大臣なんて「へんだ」とからかわれます。そこに現れたのは、日本で初めて女性国会議員になったというおばあちゃん幽霊。国会議員について、色々なことを教えてくれます。「できるかできないか それをきめるのは ほかのだれかではなく あなたじしんであることを けっして わすれないで。」とメッセージを残し消えていきます。
著者自身、育休中に参議院議員となり、愛知県選挙区の中で女性議員が“2期目の壁を破る”という歴史を作っています。思い込みをなくし自分を信じて進むことで歴史が作られていくのだと気づかせてくれます。
5月のおすすめ
«ラン・ガール・ラン!女子マラソンのとびらをあけたボビー・ギブ»アネット-ベイ-ピメンテルさく ミーシャ-アーチャーえ 偕成社
ボストンマラソンは世界で一番古く、ランナーたちの憧れの大会。走るのが好きな女の子ボビー・ギブは、学校では決まりを守ってスカートをはいていますが、家に帰るとズボンに履き替え森へ走りに出かけます。ある春、ボストンマラソンのランナーたちを見て走りたくてたまらなくなるボビー。「女の子が走っているわ」と驚かれても、走ることで心は自由になるのです。練習を重ね協会に手紙を書きますが「女性は42キロも走れるようにできていない」との返事が。「わたしがせかいの人たちに見せてやろう。女の人になにができるかということを。」決意したボビーの闘いの日々が描かれています。ボビーのニュースを見て走り出す女性たちの姿、女子優勝者たちの名前が刻まれたページに心が躍ります。こうやって歴史が作られてきたのかと胸が熱くなる絵本です。親子で味わってみてくださいね。
4月のおすすめ
≪TRUE Colors 境界線の上で≫神戸遥真ほか著 講談社
10代のこどもたちの抱える違和感や生きづらさに向き合う5つの物語。生理は将来ママになるために必要なもの…わたしはママになるのだろうか?「To Be a Mam」。中学公式野球のエースになったのに、女の子は甲子園に出られないという現実にショックを受ける「三月のグラウンド」。大切な人に性自認について告白された時、どう受け止めたらいいのか考える「親友のカレ」。お母さんの出張で家事を任されたけれど、なぜわたしばかり?と悩む「ダイニングテーブル」。満員電車で痴漢の被害者になったぼくを描く「ぼくと、体と。」…それぞれの主人公たちが痛みや苦しみの中にあっても、前向きに逞しく歩いていく姿に勇気をもらいます。表紙の少女のように、若者たちが生き生きと輝いていてほしいと思います。ジェンダーについての理解を深めたいおとなの方にも。
3月のおすすめ
≪AはアセクシュアルのA~恋愛から遠く離れて≫川野芽生著 リトルモア出版
アロマンティック・アセクシュアルという言葉を知っていますか。アロマンティックとは「相手のジェンダーに関係なく他者に恋愛面で惹かれないこと」。アセクシュアルは「他者に性的な面で惹かれないこと」。それがどういうことなのか。当事者である著者がどのような痛みを感じながら生きてきたのかを、まっすぐに伝える本です。人は恋愛をし性的に惹かれるのが当たり前という世界の中で生きるのが、どれほど苦しいことなのか、読まなければ知ることはなかったかも。「相手は恋愛のつもりでも自分にとっては性暴力」と感じる日々の生きづらさは計り知れません。自分の認識を根本から問い直さなくては。誰もが自分らしく生きるために。誰かの言葉を自分のこととして受け止め、分かりたいと思います。そして自分一人だと思っている人に、この本が届きますように。
2月のおすすめ
≪子どもの本でジェンダーレッスン~学びたいあなたのためのブックガイド≫藤木直実編著 かもがわ出版
ジェンダーについての本を子どもに手渡すとき、役立つ本です。「専門知識にもとづく読み解きとともに、子どもと本に接する人たちに届けたい。おとなにとっても、子どもとともに学ぶきっかけになるような入門書をつくりたい」という筆者たちの熱い思いから生まれました。絵本、幼年文学、小説、コミックなど様々な分野の本が紹介されています。「最初から最後まで順番に読むことを想定して、ゆるやかな流れのもとに配列」されているので、ブックガイドではありますが、学びたい人が読みやすくなっています。作家のエッセイや、巻末には用語集もある手厚さです。ローズWAMにはほとんどの本が揃っていますので、気になったらすぐに手に取って読んでみてくださいね。
1月のおすすめ
« BUTTER»柚月麻子 新潮社
次々出てくる料理が何とも美味しそう。思わずレシピをメモしたくなります。けれどもそれは、愛人業を生業とし三人の男性の命を奪った、若くも美しくもない「カジマナ」がブログで公開するバターたっぷりの料理たち。女性記者の町田里佳は、殺害容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)との拘置所での面会を取り付けます。取材を重ねるうち、本能のままに生き、食べ方や行動まで指南してくる彼女に翻弄され、やがて自分自身を見失っていくのです。彼女は本当に男たちを殺したのでしょうか。獄中のカジマナに振り回されながらも、そこからたくましく自分を見つけていく主人公の姿を、ドキドキしながら体験してみてください。
12月のおすすめ
«わたたしたちを阻むもの 女性が抱える生きづらさの根源»対馬ルリ子著 青月社
産婦人科医である著者が女性たちに「自分の身体の声に耳をすましてほしい」と書いた本です。「女性の心身の揺れ動きは、命の希求にあふれています。だからこそ、生命力に満ちた新しい命を生み出すエネルギーである女性ホルモンを、社会全体で大事にしていきませんか」。女性たちを包み込むような、あたたかいメッセージが語られます。身体についての正しい知識を持たないでいると、不調に気づかないふりをしたり、「がんばりすぎ」を止めれず自分を苦しめてしまいます。本書では、著者の半生を振り返りながら、女性の内側(身体の仕組み)と外側(社会の構造)に目を向けています。月経、更年期だけでなく、ホルモンの揺らぎが大きい時期に増悪する「わけのわからない体調不良」についても着目。気になるワードから読んでみては。
11月のお知らせ
≪元気でいてね≫藤原ハル著 祥伝社
こどもを持つこと、持たないこと、持てないこと。それぞれの登場人物が、悩みながら迷いながら自分の人生を選んでいきます。産む選択をしなかったことで離婚した女性、仕事と子育ての両立に苦しむ女性、同性愛を選ぶ人たち、ひとりで生きていく決意をする女性…それぞれの思いを知ることで、手を繋ぐことができるのではと、あたたかな希望に包まれるコミックです。「どこか岸の向こう 遠くのあなたへ 祈りを込めて ずっと手を振る」そんな主人公の思いを受け止めてください。
10月のおすすめ
≪月収≫原田ひ香著 中央公論新社
ベストセラー「三千円のつかい方」の著者の新作です。女性の自立を考えるとき、月収で見えてくる世界が描かれています。「月収四万円の女」から「月収三百万円の女」まで、それぞれの生き方がリアルで身につまされます。始まりは、どの女性も幸せそうには見えません。お金を得るために犠牲にするものがどれほどあるのか。何と引き換えにお金を得るのか。女性であることの生きづらさを抱えつつ、それでも逞しく困難に向かっていく登場人物たち。強く生きてほしいと応援したくなります。あらためて自分の人生を見つめるきっかけになるかもしれません。
9月のおすすめ
≪ふたり暮らしの「女性史」≫伊藤春奈著 講談社
家制度があった時代に、結婚ではないパートナーシップを選び、女性がふたりで暮らすという道を選んだ「歴史に埋もれてきた女性たち」について研究し著された一冊。陸上選手、新聞記者、パイロット、鉱山師、騎手など、戦前期の「女性」としては珍しい職業の女性たち。世間が求めてくる「あるべき女性像」も「家族」も拒み、違和感を言葉や行動で示し、闘ってきた主人公たちの姿に「あまりに不当な努力ではないかと、私も怒ったことが何度もあった」と著者。そして「自分たちだけの部屋を守り抜くことで生き残った人たちでもある」と述べています。ただ自由に愛しいと思う相手と暮したかった彼女たちの道のりはあまりに険しく、またそのことがほとんど語られてこなかったことにも驚きます。世界的スプリンターとしてオリンピックにも出場した人見絹江と藤村蝶の物語。数少ない女性飛行士となった馬淵てふ子と長山きよ子、木部シゲノ。五代友厚の娘、藍子と徳本うめ。女性騎手斎藤すみと芳江。彼女たちの足跡を語り継ぐことで、同じ苦しみを持つ女性たちに希望を与え、歴史を変えていけるのではないでしょうか。
8月のおすすめ
≪老いを読む 老いを書く≫坂井順子著 講談社
ここ数年、本屋の棚の幅を広げているのはエッセイコーナーだと著者はいいます。その中でも老いをテーマにした‟老い本”が平積みの大半を占めていると。「世界トップクラスの高齢化率」の中で不安を受け止める役割をしている‟老い本”と、その著者たちを検証することで高齢化について考えます。
老いの名作『楢山節考』から『いじわるばあさん』までを読み解く第1章‟名作は老いない”。第2章では‟老いをどう生きるか”。[定年クライシス]や[「乙女少女」は未来志向]などの言葉が気になります。第3章‟老いのライフスタイル”は、一人暮らし、おしゃれ、料理、移住など。第4章では‟老いの重大問題”を語ります。「金は足りるのか、配偶者の死、死との向き合い方、老人と性」。書きながら著者は、老いが視野に入ってきた自分たちの世代もまた読者であることに気付きます。老い本の量は、「よりよく生きたい」という希望の量。本を傍に置いてたくましく、前を向いて生きていけたらと思います。
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