令和6年12月7日 室町時代からの伝統を受け継ぐ茨木唯一の酒蔵「中尾酒造」で杉玉吊り
更新日:2024年12月10日



今月、ユネスコの無形文化遺産への登録が決定したばかりの日本の「伝統的酒造り」。
明治2年創醸で茨木唯一の酒蔵「中尾酒造」では、新酒の完成を知らせる「杉玉(すぎだま)」作りが16年ぶりに行われ、12月7日、完成した杉玉を茨木神社で奉納した後、酒蔵の軒下に吊るしました。
中尾酒造の杉玉作りは、今年11月中旬から下旬にかけて行われました。竹を直径20cmほどのまり状に編み、その隙間に杉の葉を差し込み完成させた杉玉は、直径30cmほど。鮮やかな緑色をした真新しい杉玉は新酒が出来た目印となります。1年間吊るされる間に杉の葉が枯れ、月日と共に色褪せていく様は、酒の熟成度を表すと言われています。
中尾酒造では、平成20年の酒蔵の移転以来、杉玉作りを中断していたといいます。杜氏(とうじ)でもあり経営者でもある蔵元5代目の中尾宏さんは、「杉玉は日本の酒造りの文化の一つ。ユネスコの無形文化遺産への登録検討を受けて、今年は再開することにしました。青々とした杉玉を見上げると、今年の酒造りもいよいよ本番だと、気が引き締まります」と話します。
茨木の酒造りは400年以上の歴史を誇ります。市内の造り酒屋も全盛期には数十軒を数えたと言われますが、現在まで伝統をしっかり受け継ぐのは中尾酒造一軒だけ。機械で酒を造るという近代化の波にのまれることなく、『槽(ふね)』を使って自然圧で酒を絞るなど室町時代から継承される伝統の手造りを守り続けてきました。
完成した新酒『旬』は、しぼりたてのフレッシュな味わいと、甘くて飲みやすいのが特徴。酒造りを地域文化に根付かせることにも心を砕く中尾酒造では、『旬』のほかにも、地元農家でも多く生産される「キヌヒカリ」で造った特別純米酒『龍泉(りゅうせん)』や、茨木に伝わる幻の酒米「三島雄町(みしまおまち)」を復活させて造った米吟醸酒『見山』などを醸造、販売しています。