○茨木市障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例

平成30年3月27日

茨木市条例第17号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第6条)

第2章 障害を理由とする差別の解消(第7条―第14条)

第3章 情報の取得及び意思疎通

第1節 言語としての手話に対する理解(第15条・第16条)

第2節 多様な意思疎通手段の確保(第17条―第22条)

第4章 誰もが安心して暮らし続けられるまちづくり(第23条―第37条)

第5章 雑則(第38条)

附則

私たちのまち茨木市は、恵まれた自然と豊かな歴史を受け継ぎ、発展し続けているまちであり、多くの住居、事業所、大学等が立地し、様々な人々が集い、学び、働き、暮らしているが、障害のある人にとっては、周囲の理解不足や偏見のほか障害への配慮が十分でない仕組みや慣習といった社会的障壁により生きづらさや差別を感じる状況もある。

誰もが安心して暮らし続けられるまちづくりを進めていくには、私たちが一人ひとりの違いを認め合い、障害の特性や社会的障壁を取り除く必要性に対する理解を深めながら、市、市内で暮らす人や活動する人々、事業者が互いに協力し、様々な場において障害の特性に応じた適切な配慮に努める必要がある。

ここに、障害を理由とする差別をなくすとともに、障害のある人もない人も互いの人権や尊厳を大切にし、支え合う「共に生きるまち茨木」を実現するため、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、誰もが安心して暮らし続けられるまちづくりの推進について、基本理念を定め、市、市民及び市民活動団体並びに事業者の責務を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、「共に生きるまち茨木」の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「障害のある人」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病(治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病をいう。)に起因する障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」という。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

2 この条例において「市民」とは、市内に居住し、通勤し、又は通学する者をいう。

3 この条例において「市民活動団体」とは、市内において活動を行う団体をいう。

4 この条例において「事業者」とは、市内において商業その他の事業を行う者(市を除く。)をいう。

5 この条例において「社会的障壁」とは、障害のある人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

6 この条例において「障害を理由とする差別」とは、障害を理由とする不当な差別的取扱いにより障害のある人の権利利益を侵害すること又は合理的な配慮の提供をしないことをいう。

7 この条例において「障害を理由とする不当な差別的取扱い」とは、正当な理由なしに、障害又は障害に関連する事由を理由として、障害のある人を排除し、その権利の行使を制限し、その権利を行使する際に条件を付ける等の取扱いをすることをいう。

8 この条例において「合理的な配慮の提供」とは、障害のある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(その者の家族、後見人又は支援者がその者を補佐して行ったものを含む。)があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害のある人の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を提供することをいう。

(基本理念)

第3条 誰もが安心して暮らし続けられるまちづくりの推進は、次に掲げる事項を基本として行われなければならない。

(1) 障害に対する理解を深め、社会的障壁の除去のための環境整備が図られること。

(2) 障害のある人の言語その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。

(3) 障害のある人が社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を確保されること。

(4) 障害のある人もない人もつながり、支え合い、障害のある人の自立及び社会参加が促進され、障害のある人の福祉の向上に関する施策の連携が図られること。

(5) 障害を理由とする差別を身近な課題と捉え、建設的な対話を通じて互いの立場を理解し、合理的な配慮の提供が図られること。

(市の責務)

第4条 市は、前条に定める基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、市民及び市民活動団体並びに事業者の障害に対する理解を深めるとともに、障害を理由とする差別を解消し、「共に生きるまち茨木」を実現するために必要な施策を講じるものとする。

(市民及び市民活動団体並びに事業者の責務)

第5条 市民及び市民活動団体並びに事業者は、基本理念にのっとり、障害に対する理解を深めるとともに、「共に生きるまち茨木」の実現に取り組むよう努めるものとする。

(啓発活動)

第6条 市は、誰もが安心して暮らし続けられるまちづくりを推進するため、市民及び市民活動団体並びに事業者に、障害の特性及び社会的障壁の除去の必要性に対する理解を深めるための啓発を行うものとする。

第2章 障害を理由とする差別の解消

(差別の禁止)

第7条 市及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、次に掲げることをしてはならない。

(1) 障害を理由とする不当な差別的取扱いにより障害のある人の権利利益を侵害すること。

(2) 合理的な配慮の提供をしないこと。

(相談及び対応)

第8条 市内に居住し、通勤し、又は通学する障害のある人、その家族、後見人及び支援者並びに事業者は、市長に対し、前条各号に掲げることに関する相談を行うことができる。

2 市長は、前項の相談を受けた場合は、必要に応じて、次に掲げる対応を行うものとする。

(1) 助言、情報提供その他の前項の相談に係る事案を解決するために必要な支援

(2) 前項の相談に係る事案の当事者及び関係者に対する事実の確認及び調整

(3) 関係機関への通知

(当事者及び関係者の協力)

第9条 前条第2項第2号の当事者及び関係者は、市長の同項各号に掲げる対応に対し、正当な理由がある場合を除き、必要な協力をしなければならない。

(あっせんの申立て)

第10条 第8条第1項の相談を行った障害のある人並びにその家族及び後見人は、事業者が第7条の規定に違反すると思料する場合であって、第8条第2項の規定により市長が対応してもなおその解決が見込めないときは、当該事業者を相手方として、市長に対し、当該事案の解決のためのあっせん(以下この条及び次条において「あっせん」という。)の申立てをすることができる。ただし、当該あっせんの申立てをすることが当該障害のある人の意に反することが明らかである場合は、この限りでない。

2 前項の規定にかかわらず、行政庁の処分その他の公権力の行使により解決できるものであるときは、あっせんの申立てをすることができない。

(あっせん)

第11条 市長は、前条第1項の規定によるあっせんの申立てがあったときは、当該あっせんの申立てに係る事案について調査を行うものとする。

2 前項の規定により調査を行う場合において、当該事案の当事者及び関係者は、正当な理由がある場合を除き、当該調査に協力しなければならない。

3 市長は、第1項の調査の結果により、あっせんを行うことの適否を決定し、あっせんを行うことが適当であると決定したときは、茨木市障害者差別解消支援協議会(以下この条第13条第3項及び第14条において「協議会」という。)にあっせんを行うよう求めるものとする。

4 市長は、前項の規定によりあっせんを行うことの適否を決定する際に、協議会に助言を求めることができる。

5 協議会は、第3項の規定によるあっせんの求めがあったときは、あっせんを行うものとする。

6 協議会は、あっせんを行うために必要があると認めるときは、当該事案の当事者及び関係者に対し、あっせんを行うために必要な限度において、資料の提出及び説明を求めることその他の必要な調査を行うことができる。

7 協議会は、当該事案の解決のため必要なあっせん案(次条第1項において「あっせん案」という。)を作成し、これを当該事案の当事者に提示することができる。

8 協議会は、あっせんを終了したときは、その旨を市長に報告するものとする。

(勧告)

第12条 市長は、前条第8項の規定による報告を受けたもののうち、正当な理由なく、あっせん案を受諾せず、又は受諾したあっせん案に従わない場合であって、必要があると認めるときは、当該差別を行ったとされる事業者に対し、障害を理由とする差別を解消するために必要な措置を講じるべきことを勧告することができる。

2 市長は、前項の規定による勧告をしようとするときは、当該勧告に係る者に、あらかじめその旨を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。

(公表)

第13条 市長は、前条第1項の規定による勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わず、かつ、当該障害を理由とする差別に故意又は重大な過失があると認めるときは、その旨を公表することができる。

2 市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該公表に係る者に、あらかじめその旨を通知し、その者又はその代理人の出席を求め、釈明及び資料の提出の機会を与えるため、意見の聴取を行わなければならない。

3 市長は、第1項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ協議会の意見を聴かなければならない。

(茨木市障害者差別解消支援協議会)

第14条 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。次項第1号において「法」という。)第17条第1項の規定に基づき、協議会を設置する。

2 協議会は、次に掲げる事務を行う。

(1) 法第18条第1項に規定する障害者差別解消支援地域協議会の事務

(2) 第11条第4項から第8項まで及び第13条第3項の規定によりその権限に属することとされた事項

3 前2項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営について必要な事項は、規則で定める。

第3章 情報の取得及び意思疎通

第1節 言語としての手話に対する理解

(手話に対する理解の促進等)

第15条 市は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解の促進及び普及を図るものとする。

2 市民及び市民活動団体並びに事業者は、前項の認識に基づき、手話に対する理解を深めるものとする。

(学校における手話に対する理解の促進等)

第16条 市は、茨木市立小学校及び中学校において、前条第1項の認識に基づき、手話に対する理解の促進及び普及を図るため、次に掲げる取組を行うよう努めるものとする。

(1) 手話を必要とする児童及び生徒が授業内容を理解するための手話を使った授業の実施

(2) 児童及び生徒が手話に接し、親しむ機会の提供

2 市は、前項各号に掲げる取組を行おうとするときは、必要に応じて、関係機関と連携を図るものとする。

第2節 多様な意思疎通手段の確保

(多様な意思疎通手段の普及等)

第17条 市は、手話、要約筆記、点字、音訳、字幕、文字表示、平易な表現その他の障害の特性に応じた多様な意思疎通のための手段(以下「多様な意思疎通手段」という。)の普及を図るとともに、その利用が促進されるよう環境整備に努めるものとする。

(手話等を学ぶ機会の提供)

第18条 市は、手話、要約筆記、点字又は音訳(以下この条において「手話等」という。)を必要とする障害のある人、その者の意思疎通を支援する者及び関係機関と連携して、市民に手話等を学ぶ機会を提供するものとする。

(意思疎通を支援する者の養成)

第19条 市は、多様な意思疎通手段により障害のある人の意思疎通を支援する者を養成するために必要な取組を行うものとする。

(障害の特性に配慮した情報の発信等)

第20条 市は、障害のある人が情報を円滑に取得することができるようにするため、多様な意思疎通手段による情報の発信及び提供を行うものとする。

(市民及び市民活動団体の理解等)

第21条 市民及び市民活動団体は、多様な意思疎通手段に対する理解を深めるとともに、多様な意思疎通手段に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の理解等)

第22条 事業者は、多様な意思疎通手段に対する理解を深めるとともに、多様な意思疎通手段を必要とする者が利用しやすいサービスを提供し、及び多様な意思疎通手段に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。

第4章 誰もが安心して暮らし続けられるまちづくり

(交流の機会の充実)

第23条 市は、障害のある人とない人がコミュニケーションをとることにより互いの理解を深めるため、交流の機会を充実させるものとする。

2 市民及び市民活動団体並びに事業者は、障害のある人とない人がコミュニケーションをとることにより互いの理解を深めるため、交流の機会を充実させるよう努めるものとする。

(市民等が活動を行うための情報提供等)

第24条 市は、市民及び市民活動団体並びに事業者が自主的に障害に対する理解を深める活動を行うために必要な情報の提供等を行うものとする。

(医療機関の合理的な配慮の提供に対する理解の促進)

第25条 市は、障害のある人が必要な医療を受けることができるようにするため、医療機関の合理的な配慮の提供に対する理解を促進するための啓発に努めるものとする。

(保育等の実施)

第26条 市は、障害のある人が必要な就学前の教育、保育又は療育を受けることができるようにするため、関係機関及び事業者と連携して必要な取組を行うものとする。

(包括的な教育の実施)

第27条 市は、茨木市立小学校及び中学校において、障害のある人とない人が共に学ぶことができる包括的な教育を実施するため、障害のある人が障害の特性に応じた教育を受けることができるよう努めるものとする。

(学校における障害に対する理解の促進)

第28条 市は、茨木市立小学校及び中学校において、障害に対する理解を促進するために必要な取組を行うものとする。

(生涯を通した支援)

第29条 市は、障害のある人が生涯を通してその心身の発達のための支援を受けることができるようにするために必要な取組を行うものとする。

(雇用の促進及び就労の支援等)

第30条 市は、障害のある人の雇用の促進並びに就労の支援及び定着を図るために必要な取組を行うものとする。

2 事業者は、障害の特性を理解し、障害のある人に対する雇用の機会の拡大及び障害のある人が働き続けられる職場環境の整備を行うものとする。

(障害福祉サービスの充実)

第31条 市は、障害福祉サービスの充実を図るために必要な取組を行うものとする。

(バリアフリー化等の促進)

第32条 市及び事業者は、バリアフリー化(障害のある人が円滑に利用できるように施設及び設備を整備することをいう。)及び障害のある人も利用しやすいデザインの導入を促進するために必要な取組を行うものとする。

(移動手段の確保)

第33条 市及び事業者は、障害のある人の移動手段を確保するために必要な取組を行うものとする。

(交通安全の確保)

第34条 市民及び事業者は、車椅子を使用する者その他の交通の安全に配慮が必要と認められる障害のある人が通行し、又は歩行しているときは、その通行等を妨げないようにするとともに、その安全を確保するために必要な取組を行うものとする。

(災害時等の支援)

第35条 市は、関係機関及び事業者と連携して障害のある人に対する災害時又は緊急時の支援に努めるものとする。

(地域におけるつながり等)

第36条 市民は、障害のある人もない人もつながり、支え合う地域づくりに努めるものとする。

(社会参加の促進)

第37条 市は、障害のある人の社会参加を促進するために必要な取組を行うものとする。

2 市民及び市民活動団体並びに事業者は、文化芸術活動、スポーツ活動その他の活動を通じ、障害のある人の社会参加が促進されるよう努めるものとする。

第5章 雑則

(委任)

第38条 この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。

この条例は、平成30年4月1日から施行する。ただし、第14条の規定は平成30年8月1日から、第10条から第13条までの規定は平成31年8月1日から施行する。

茨木市障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例

平成30年3月27日 条例第17号

(令和元年8月1日施行)

体系情報
第8類 生/第4章 心身障害者福祉
沿革情報
平成30年3月27日 条例第17号