広報いばらき

特集 銅鐸のセカイ in いばらき

鋳型の発見から、今年で50周年!

今年は市内で貴重な銅鐸鋳型が発見されてから、50周年のメモリアルイヤー。
知れば知るほど面白くなる、奥深い銅鐸のセカイに触れてみませんか?

問合先 文化財資料館 電話634-3433

完全な形の銅鐸鋳型としては国内唯一の例!

これが鋳型
高さ:43.5センチメートル 横幅:29センチメートル
厚さ:14.5センチメートル 重さ:28キログラム

いばらきと銅鐸鋳型50年前の大発見

 昭和48年(1973年)、弥生時代の集落・東奈良遺跡の発掘調査現場で、文様が刻まれた石が出土。それは、青銅器の銅鐸をつくる際に使われる鋳型のかけらでした。さらに翌年には完全な形の鋳型も発見。これらは銅鐸の生産だけでなくその流通までも明らかにできる大発見であり、その後の発掘・研究によって、東奈良遺跡が弥生時代を代表する青銅器の生産地であったこともわかってきています。

気になる疑問にお答え!
そもそも「銅鐸」と「鋳型」って?

Q 銅鐸ってなに?どうやって使うもの?

銅鐸は、近畿やその周辺地域を中心に、祭りの場で使われていました。銅鐸の内側に舌という青銅製の細長い棒をぶら下げ、揺らすことで音を鳴らしました。弥生時代当時、金属音自体が珍しかったため、神聖なものとして扱われたと考えられます。また、全国各地で20センチメートル~1メートル30センチメートル程度の高さの銅鐸が出土していますが、東奈良遺跡では約30センチメートルと約45センチメートルの高さのものがつくられていました。

Q 銅鐸と“銅鐸鋳型”はどう違うの?

銅鐸をつくるために、青銅を流し込む型として使われたのが銅鐸鋳型です。東奈良遺跡で見つかったものは石製の鋳型で、銅鐸の形に彫った石に文様を描き、鋳型として使用していました。

Q 茨木の銅鐸鋳型はスゴイもの?

石製の銅鐸鋳型は、鋳型としての役目を終えると刃物などを砥ぐ砥石として使われたので、かけらとなって発見されるのが一般的です。しかし東奈良遺跡の第1号鋳型は片面がほぼ完全な形のまま出土しました。これは現在でも国内唯一の例として、とても貴重なことなのです。

Q 鋳型からどうやって銅鐸をつくるの?

2つの鋳型(一対)をぴったりと向かい合わせ、その中に溶かした青銅を流し込みます。しっかりと固まったら、鋳型の通りに文様が刻まれた銅鐸が完成。そのため銅鐸の形や大きさ、文様を見れば、どの鋳型からつくられたのかがわかります。

インタビュー 出土当時の様子は?

元東奈良遺跡調査会 発掘に携わった白井忠雄さん

当時は空前の考古学ブーム。茨木市でも何か第一級のものが出土するのではと期待されていました。銅鐸の製造について解き明かすカギとなる第1号鋳型の発見当日、私は別の場所で調査していましたが、その日の調査を終えた夕方に「スゴイものが見つかったぞ」と発掘チームのみんなと盛り上がったことを覚えています。

銅鐸鋳型からひも解く
いばらき弥生ワールド

銅鐸鋳型が使われていたのは、今から約2千年も前の弥生時代。
当時の茨木では、人々は集落をつくり、稲作を主な生業として暮らしていました。
そのころの様子を、銅鐸鋳型を中心に見ていきましょう。

どこで?

現在の東奈良二丁目付近で発見

現在文化財資料館がある場所から東へ200メートルほどの場所で、鋳型は発見されました。周辺からは他にも鋳造(金属を溶かして鋳型に流し込み、固めて製品をつくる、金属加工法の一つ。)に使用された道具などが数多く見つかっており、この場所に青銅器の工房があったと考えられています。

どんな風に?

米づくりのかたわら副業的に製作か

東奈良遺跡の集落では、いくつかの集団が同じ集落に暮らしていました。一部の集団の中のさらに数人が、青銅器生産の工房で作業をしていたと考えられます。毎日つくっていたわけではなく、あくまでも主な仕事は米づくりで、副業的に銅鐸などを生産していたと考えられています。

当時の工房の様子

高温の炎で青銅を溶かし、鋳型に流し入れる工程が行われていた。

「送風管・るつぼ・鋳型」のセットでの出土はとても貴重な例!

土製の鋳型

銅鐸以外の鋳造に使われていた

送風管

炉の炎に空気を送るために、袋にとりつけて使った

るつぼ

溶かした青銅を入れていた

どこへ?

四国や伊勢まで銅鐸は旅をした

東奈良遺跡の鋳型と文様が完全に一致する銅鐸の発見は香川・我拝師山などの3例のみですが、これらと類似する特徴を持つ銅鐸の出土地を調べることで、どこまで流通していたのかを知ることができます。道の整備も十分でなかった時代に、川や海を越え、はるばる四国や伊勢(現在の鈴鹿市近辺)まで運ばれていたようです。

どんな人が?

鋳型からつくった人の性格が見えてくる

実は、鋳型について観察・考察してみると、当時銅鐸をつくっていた人々の「人となり」まで想像できるのです。文様の描き方や銅鐸の形など、他の遺跡での出土物と比較しながら、鋳型を詳しく見てみましょう。

CHECK! 文様の書き間違いをごまかした?

うねる線は流水文と呼ばれる文様。他でつくられた銅鐸では上から下まで線が途切れることはありませんが、この鋳型では途中で別の線に合流して途切れているような線も見られます。もしかしたら、線の描き間違いをごまかすおおらかな性格の人たちだったのかも。

CHECK! 河内の人との交流があったかも?

東奈良産の銅鐸は若干古い時代の形を残す一方で、「飾り耳」が片側3つあるという新しい特徴もありました。それは当時、青銅器の一大生産地であった河内でつくられる銅鐸にも取り入れられたものであることがわかっています。技術面で人々の交流があったかどうか、研究が進められています。

CHECK! 技術や形から見ると、ちょっと昔かたぎ?

文様がない下部の「裾」と呼ばれる部分の上下幅は、同時期の他所の銅鐸に比べて狭いのが特徴です。これは当時からすると若干古い時代の銅鐸の特徴でもあります。そのため、古き良き形や技術を大切にする、少し昔かたぎな人々だったとも考えられるのです。

コラム 弥生いばらき人のルックスを想像してみる

遺跡からは、人をかたどった土偶や人の描かれた土器が出土しています。また、出土品の中には、髪にさしていた櫛や首飾りの一部と考えられる鏡の破片など、装飾品も多数。それらから、当時の茨木に住んでいた人々の姿を思い浮かべてみるのも面白いですね。

もっと知りたい!楽しみたい!
銅鐸のアレコレ

この秋は、文化財資料館がおもしろい!
50周年を記念した特別展や講演会で知見を深めたり、体験に参加したり、周辺で銅鐸モチーフを探してみたり…。
もっと「銅鐸を楽しみたい」人は、ぜひ文化財資料館へ!

知る 資料館でトコトン深堀り

「銅鐸をつくる‒弥生時代の鋳造技術‒」

9月30日(土曜日)~11月27日(月曜日)
多くの銅鐸を所蔵する辰馬考古資料館(西宮市)と連携した特別展。銅鐸をつくる技術にスポットを当てており、東奈良だけでなく弥生時代の日本全体の鋳造技術を学べます。期間中はクイズラリーも開催。
※通常は銅鐸鋳型のレプリカを展示していますが、特別展では実物を展示します。

造る 自分の手で完成させる!?

公開鋳造「大阪湾型銅戈・小銅鐸の鋳造」

10月28日(土曜日)
弥生時代の鋳造技術に詳しい現代の鋳金作家が、実際に銅鐸を鋳造する様子を見学できます。
時間 午後2時~
申込期間 9月30日(午前9時)~10月9日(午後5時)
※応募者多数の場合は抽選
詳しくは申込フォーム

鋳造体験

9月30日(土曜日)~11月25日(土曜日)※期間中の10月28日、11月4日を除く土曜日
ミニ銅鐸鋳型を使って、手のひらサイズの小さい銅鐸をつくってみよう。
2部制(受付開始:午前9時30分~、午後1時30分~)/当日先着/定員各2人

レポート ミニ銅鐸づくり体験に行ってきました!

溶かした金属を慎重に鋳型に流し込み、真剣な表情で作業する子どもたち。鋳型を開く工程では、驚きの表情や笑みがこぼれる瞬間も。できあがった自分の銅鐸を鳴らして、音の聞き比べも楽しんでいました。

細かい部分がうまくいかずやり直しもしましたが、とても楽しかったです。
藤原颯乃さん

カラカラ音が鳴るのが、想像より大きい音で面白い! ランドセルにつけて登校します!
藤原柚基さん

実は「紙」でもつくれる!?

銅鐸ペーパークラフト
詳しくは市ホームページ

聴く 語られる考古ロマン

時間 講演会:午後2時~3時30分(午後1時開場)
   講座:午後2時~3時(午後1時開場)
定員 各80人(当日先着・事前申込なし)

講座

10月11日(木曜日)~11月22日(水曜日)
※期間中の11月1日を除く水曜

学芸員講座
各回によりテーマは異なる
講師:清水邦彦(本市学芸員)
講演会
「銅鐸研究の歩みと東奈良遺跡・辰馬考古資料館」

10月22日(日曜日)
講師:青木政幸さん(辰馬考古資料館学芸員)

「近畿地方における銅戈の生産‒茨木市東奈良遺跡出土の土製銅戈鋳型をめぐって‒」

11月26日(日曜日)
講師:菊池 望 さん(東京国立博物館研究員)

見つける 街中にひそむ銅鐸を探そう!

東奈良遺跡は、現在の文化財資料館がある周辺一帯です。それにちなんで、まちのなかには銅鐸をモチーフにしたものがあちらこちらに。あなたはいくつ見つけられますか?

チャレンジ

全箇所の写真を撮影して、文化財資料館の窓口へ。
写真(画面可)を見せて「おにクルグッズ」をゲットしよう!
※先着90人

見つけたらチェック

文化財資料館

東奈良三丁目12‒18
電話 634‒3433
午前9時~午後5時
火曜日・祝日翌日休(火曜日が祝日の場合、または祝日翌日が日曜日の場合は開館)

ぜひ遊びに来てくださいね!
文化財資料館 館長
黒須靖之