特集 新年は備えを見直すチャンスです。
2年半前の大阪北部地震や風水害などの被災体験で改めて日頃の備えの大切さに気付いた人も多いはず。
備えは定期的に見直してこそいざというときに有効です。
家族が揃いやすい新年、ちょっと楽しい防災チェックをしてみませんか。
危機管理課 電話620-1617
家族が揃いやすい時期こそ防災チェックに最適
毎年のように起こる風水害や南海トラフ地震への不安。もしもの時に必要な備えは、家族みんなに必要なものだから、家族が揃いやすい新年は、再確認するのにいい機会です。
「みんなで助かる」ために、まちも、地域も、一人ひとりも災害への準備をする、これが防災の基本。一人ひとりの防災への対策がつながり合うことで、大きな力となって災害にも強いまちをつくります。
防災対策のポイントは、日々の暮らしの中で備えること。楽しく実践的に、自分にとってベストな方法を積み上げていきましょう。
防災対策のポイント
- 非常持ち出し袋[最低限の必需品]+備蓄品[3日〜1週間分]
- 家の安全対策[家具などの配置、転倒防止など]
- 避難行動[避難先・家族ルール]
BOSAI check1 非常持ち出し袋&備蓄品
今の備えは大丈夫? 防災イベントで実力チェック
備えといえば防災グッズや備蓄品。でも、備えただけでそのままにしていませんか?
市民モデルさん一家に手持ちの備蓄品を試してもらいました!
せっかく備えても使えないと意味がない
非常食や水、電池などにも消費期限があります。防災グッズもいざという時に使えなければ命に関わることも。
不用品を整理する機会の多い年末年始は、備蓄品の定期チェックにぴったり。防災グッズを使って非常食レシピを作ってみるなどチェックを兼ねた家族イベントにしてみるのも手です。口に合わなかったり、使いにくかったり、足りないものがわかったり。体験しながら自分に合うものにしていきましょう。
災害時でも好きなものやほっと息抜きできるものは大切。不安な気持ちを和らげてくれます。
防災対策は、自分で考え、楽しく続けることが大切です
監修/湯井(ぬくい)恵美子さん
防災士。防災企業連合 関西そなえ隊事務局、おおさか災害支援ネットワーク 世話役(日本防災士会大阪府支部)等に従事。大阪府教育委員会委嘱学校防災アドバイザーとして茨木支援学校などで地域全体の防災減災活動をサポート
水、食料、衣類、衛生用品、医薬品、貴重品、日用品……
[防災備蓄のコツは自分に欠かせないものを備えること]
- とくに女性や小さな子ども、持病や障害のある人などは注意して
- 乾電池や充電器、バッテリーは必須
- 季節に応じて防寒や熱中症対策品を
- 風邪対策にのどあめや風邪薬を
- 周りの助けが必要なら、保護者の連絡先や何をすれば助かるのかを書いたSOSカードを
- 非常持ち出し袋は玄関に。しまっていると持ち出せないことも
ライフライン復旧のめやす
電気 6日
上水道 30日
ガス 55日
※内閣府発表の首都直下地震等による東京の被害想定より
湯井さんのアドバイス
子どもや力のない人などは、必要なものをポケットがたくさん付いた服に入れておき、はおって逃げるのがおすすめ。リュックよりも負担が少なく、確実に持ち出せます
- 湯井さんによる「withコロナのしなやか防災講座」を1月25日(月曜日)ローズWAMで開催!詳しくは「講座・講習」ページ
ライフラインが止まったら?! 年に一度はおうち防災イベントを
体験しておけば訓練にもなり、いざというときに役立ちます。非日常体験を楽しみながら防災力をアップできます。
停電体験ゲームで明かりをゲット
いきなりの停電では、明かりがないとパニックになりがち。その備えができるのが、これ。
「1、2、3」ですべての電気を消して真っ暗にした中、懐中電灯など非常用の明かりを備えている場所にたどり着けるか確かめます。場所があいまいなほど大変に。
ランタンの置き場を決めていたから楽勝
「懐中電灯はしまっていましたが、ランタンはすぐ手に取りやすい場所に置いていてよかった」
非常用トイレの設置を体験する
大規模な災害では、トイレも被災する可能性大。生きることと排泄はセット。安心して使える自分用のトイレの備えは、備蓄品の中でも優先順位を高く。
また、ぶっつけ本番にならないよう、非常用トイレの使い方を、使い心地や使用後の後始末まで体験しておきましょう。
意外とカンタン
「段ボール製の簡易トイレもけっこう丈夫で使えそうですね」
湯井さんのアドバイス
紙製のねこ砂をコップ1杯くらいと、黒ビニール袋でも簡易トイレが作れます。
非常食ごはんDAYでお手軽グルメ
食品は、食べながら補充を繰り返す循環備蓄(ローリングストック)で。普段食べ慣れている食品を多めにストックしておき、古いものから食べて常に予備があるようにするのがコツ。消費期限が近いものを食べる日をつくって、定期的にチェック・補充できるようにするといいでしょう。
非常食で作るごはんは、いつもと違って新鮮で、ちょっとした楽しみにも。本やWEBで紹介されている防災クッキングのレシピも参考になります。
[停電時には、まずは冷蔵庫の食材から]
〈食べる順番〉
冷蔵庫(腐りやすいものから)
↓
冷凍庫(解凍された保存食品を)
↓
非常食(そのままでも、備蓄品などと組み合わせても)
普段から常備菜などを少し多めに作って冷凍保存しておく習慣は、災害時にもお役立ち。
※ニオイや味に違和感を感じる場合は食べないで。
湯井さんのアドバイス
冷凍庫は絶対最初に開けないで! 冷蔵食材から使っていって最後に冷凍庫を開けると、ほどよく解凍されています
非常食と備蓄品で防災クッキングにチャレンジ!
カセットコンロとカセットボンベがあれば
お湯が沸かせる、温かいものが食べられるのは、避難生活の大きな支えに。
食品用の高密度ポリエチレン製袋は強い味方
災害時は水が貴重。ポリ袋に入れて混ぜるだけのメニューや、ポリ袋を使った湯せん調理なら、調理器具は不要。湯せんのお湯は繰り返し使えるし、ポリ袋のまま器にかぶせて袋の口を切って食べれば、洗い物も出ない。
非常食は飽きずに食べられる工夫を
定番のアルファ化米は水よりもお湯で作るほうがおいしい。また、野菜ジュースやサバの味噌煮などの缶づめなどでアレンジすれば、おいしさも栄養価もアップ。
ホットケーキミックスを使った蒸しパンと、ツナ缶の水分で戻す切り干し大根のサラダにトライ
アルファ化米は水の代わりに野菜ジュースでアレンジ。缶入りパンの試食も
初めて食べたけど、けっこうおいしい
「子どもが喜んで食べてくれたことに一番ホッとしました。工夫次第でいろいろできますね」
災害時、トイレに水を流すのは待って! とくに集合住宅では、詰まってあふれ出すおそれがあります。配管の無事が確認できるまでトイレを含め、排水はすべて厳禁
BOSAI check2 家の安全対策
家にキケンは潜んでない? 家の弱点を点検
地震のときに負傷の原因となる家具の転倒や落下の防止策は、もっとも有効な防災対策です。
玄関
- 自転車など大きなものを置いていない?
窓
- 窓ガラスに飛散防止フィルムを貼っている?
※厚手のカーテンでも一定の効果あり
雨どい・側溝
- 壊れていない?
- ゴミや土砂がたまっていない?
ブロック塀・門柱
- 土中に基礎部分がある、もしくは鉄骨が入っている?
- ひび割れや鉄骨にサビはない?
燃料
- 貯蔵タンクは倒れないよう固定している?
屋根
- 不安定なアンテナや屋根瓦は補強できている?
ベランダ
- 手すりに鉢植えを置いていない?
- 整理整頓している?
家具
- 背の高い家具を寝る場所に置いていない?
- 倒れても逃げ道をふさがない向きや配置にしている?
- 軽いものは上、重いものは下に置いている?
- 転倒防止の固定をしている?
- 開き戸や引き出しに飛び出し防止をしている?
照明
- 天井直付けタイプや揺れないよう固定をしている?
集合住宅はここもチェック
通路や踊り場などの共有部分
- 自転車や古新聞などを置いて逃げ道をふさいでいない?
ベランダ
- 非常脱出口の周りや上にものを置いていない?
家具の固定には合わせ技も
転倒防止はL字金具、ベルト式(ストラップ)、ポール式(突っ張り棒)、粘着マットやストッパーの順に効果が大。ただ、ポール式とマットやストッパーを併用すれば、L字金具と同じくらいの効果が。自宅に合った工夫で対策を
安全な家で被害を最小限に
年末の大掃除と合わせて、新年の運動不足解消に、おうちをチェックしてみませんか。災害時に下敷きになったりケガをしたりしないか、逃げ道がふさがれたりしないかがチェックのポイント。固定が不十分だったり、補強や修理が必要だったり、危険なものが飛び散りそうだったりしていたら、できるだけ早く対処を。
雨どいや側溝は、水が流れないと浸水被害の原因にも。また、消火器や火災報知器、消火栓などの位置や使い方を確認しておくにもいい機会です。
湯井さんのアドバイス
自宅の安全点検はまず地域のリスクを知ることから。ハザードマップを活用しましょう。
ハザードマップポータルサイトにある「重ねるハザードマップ」なら、住所を入力して知りたいリスクを選ぶだけでOKとチェックも手軽。市町村のハザードマップが閲覧できる「わがまちハザードマップ」も便利
BOSAI check3 避難行動
どこに逃げる? どう逃げる? イザというときの行動を確認
いつ、どこに、どのように行動するか。日頃から家族で把握し、共有しておくとスムーズです。
避難所はどこ?実際に歩いて確認を
どこに逃げるのかと、そこへの避難ルートをわかっていたら安心です。事前に歩いてみて、危険な場所はないか、どのルートで向かうのがいいか、距離や時間とともに把握しておきましょう。
被害状況によっては、別ルートが必要なことも。お散歩がてら、シミュレーションを。
湯井さんのアドバイス
広域避難地や一時避難地の公園へ、ルートチェックを兼ねて、備蓄品を使って楽しむ防災ピクニックに出かけるのもアリ
災害の種類ごとに行動ルールを決めておく
災害時、急に冷静な行動をとるのは難しいもの。地震と風水害では避難する場所も変わってきます。避難のタイミングも大事。家族で話し合ってルールを決めておきましょう。
メモにして見える場所に貼ったり、身につけたりしておくと、いざというときにも安心です。
湯井さんのアドバイス
安否情報を確認できる「災害用伝言ダイヤル171」の体験もおすすめ。お正月の1月1〜3日はちょうど、災害用伝言ダイヤル171の体験日です
※災害用伝言ダイヤルの体験日はほかに、毎月1日、15日、防災とボランティア週間(1月15日〜21日)、防災週間(8月30日〜9月5日)
ライフラインが止まったときに在宅避難している場合は、なんらかの方法で周囲に居場所を伝え、安否確認可能な状態にしておくことが大切。定期的に確認し合える関係を近所の人などとつくっておきましょう
体験を終えて
やってみることが大事だと思いました
防災というと難しくとらえていて、モノを揃えなくてはと考えていました。買ったままになっていましたが、どんなものかもちゃんと試して備えておけばいいんだと思いました。もしもの時でも落ち着いて行動できそうです。
MESSAGE 市民のみなさんへ
「みんなで助かる」防災で、災害にも強い茨木をめざしましょう。
「自助」「公助」「共助」と役割を線引きするのではなく、一人ひとりを大切に、障害などで支援が必要な人には「大丈夫、一緒に乗り越えましょう」というコミュニティの力がまちを強くし、防災力も上がっていくのだと思います。茨木は市民活動がとても盛んなまちです。「自分で考え」「それぞれの人のペースに任せ」「無理強いをせず」「仲間と楽しく続け」ながら、「気づいたら防災活動」だったというのが理想です。人と人、人とまちが肩ひじ張らずにつながり合う茨木のまちづくりは、災害時にきっと生きてくるはずです。
湯井恵美子