広報いばらき

特集1 茨木の教育

これからの時代を、自分らしく生きるために——

問合先 学校教育推進課 電話620-1683

「一人も見捨てへん教育」で内面の力も伸ばしていく

 茨木では平成20(2008)年度から3年間を1つのサイクルとして、教育を充実させる取組み「茨木っ子プラン」を進めてきました。単にテストの平均点を上げるだけではなく、学力高位層を増やして低位層を減らすことに力を注ぎ、小中学校の学力レベルを高めることに成功。すべての子どもに寄り添う「一人も見捨てへん教育」を軸に、やり抜く力や自制心、コミュニケーション力など、テストの点数では測れない内面の力=非認知能力の向上にも力を注いできました。そんな12年間の成果を踏まえ、さらに発展させた5か年計画「茨木っ子プラン ネクスト5.0」が、今年度から始まっています。

 変化が激しい現代社会において、正解は必ず見つかるものではありません。先行き不透明な時代を生き抜くには、直面する状況に対し、修正しながら最適な答えを見出していく力が求められます。こういった環境変化に対応するために、「茨木っ子プラン ネクスト5.0」では、内面の力を「茨木っ子力」と名づけ、その育成に重点を置きました。プランの考え方を整理した左ページの「学力の樹」のとおり、元気力を土台とした茨木っ子力を伸ばすことで、自分なりの考え=思考系能力を育み、教科の学力=認知能力の向上にもつなげます。

学力の樹

これからの社会を生きる子どもたちに必要な能力

認知能力…葉 教科の学力

思考系能力…幹 思考力・判断力・表現力など

非認知能力…根 茨木っ子力

元気力…土台 元気力 体力・運動習慣・生活習慣など

「茨木っ子プラン ネクスト5.0」でめざすもの

すべての子どもが、自分らしく生きられるように

 「茨木っ子プラン ネクスト5.0」では、「情報や技術を適切に利活用する」「ネットやスマホとうまく付き合う」「これまでにない新しい価値を創造する」「多様な他者とつながり協力する」といった力を子どもたちに育成することと、支援が必要な子どもやつまずきやすい子どもをきめ細かく支援するとともに、子どもたちの豊かな人間関係と安心できる居場所をつくることをめざしています。

 そのため、「これからの社会を生きる力を育む(茨木っ子力の育成)」「ともに学びともに育つ支援教育の充実」「いじめ・不登校対策の充実」「確かな言語力の育成」を最重点の4つの取組みとし、本市のすべての子どもが、これからの社会で自分らしく生きることができるようサポートしていきます。

※「茨木っ子プラン ネクスト5.0」は市ホームページに掲載しています

〔最重点の取組み〕

Interview! 保護者に直撃!
茨木の教育のいいところは?

読書欲に火がついて、どんどん本を読むように

林さん(お子さんの学年 小学2年生・4年生)

映像などを使った好奇心をくすぐる授業も行われ、おもしろかったと喜んで報告してくれます。関心が高まったことを図書室の本で調べるなど、意欲が派生していくのもうれしいです。

それぞれの個性や考えを大切にしてくれる友達ばかり

池田さん(お子さんの学年 中学2年生)

学期ごとに自分の思いを発表する行事があるなど、個性を尊重し、違いを認め合う教育を続けてくれるのがすごい。一人で本を読んだり大勢で遊んだり、自由に過ごせるようです。

授業以外からも、子どもの興味関心が広がっています

浅川さん(お子さんの学年 小学1年生・3年生)

自治会などによる地域のイベントも活発で、学校だけに留まらない学びも多い。ネットリテラシーのことを学校でもっと教えてもらえると、これからの時代には役に立つのかなと思います。

地域の方とふれあう場が多く、社会性も身につきます

村永さん(お子さんの学年 中学3年生)

保護者や地域の方と学校の関わりが深く、ボランティアで授業をサポートしてくれたことも。地域で子どもを育てる土壌があると思います。コロナ禍で関わりが少なくなっているのは少し心配です。

先生方が一人ひとりに向き合い、見守ってくれます

前川さん(お子さんの学年 中学1年生)

担任だけでなく、いろいろな先生がいろいろな角度から、親身になって関わってくださるのを強く感じます。一人ひとりに向き合ってもらえ興味を育んでくれる教育を、今後も期待しています。

できるまで寄り添ってもらえ、自信がもてるように

久保さん(お子さんの学年 小学1年生)

支援が手厚いと聞いていましたが、想像以上に丁寧で安心です。大好きな先生に会いたいからと登校し、「将来は先生になりたい」と夢を語るようになった子どもの成長を実感しています。

細やかなフォローで引き上げてくれ、子ども同士での教え合いも

東條さん(お子さんの学年 中学3年生)

英語や数学などは、本人の希望によって習熟度別の少人数授業を選べるのがいい。上級生が下級生を教えたり、みんなで話し合い、協力し合う機会も多いように思います。今後も続けていって欲しいです。

Report!
時代とともに進化する「一人も見捨てへん教育」

「茨木っ子プラン ネクスト5.0」は、どのように進められているのでしょうか。最重点の取組みのうち「これからの社会を生きる力を育む」「確かな言語力を育む」学びの現場を、授業風景とともに紹介します。

成長を実感し、未来への見通しを持てるように

 「これからの社会を生きる力を育む」ために、「茨木っ子プラン ネクスト5.0」では「茨木っ子力」を高めることに重点を置いています。茨木っ子力は自分自身で伸ばす力。子どもたちが、茨木っ子力をどの場面で求められ、どう発揮できたのかを自身で内省し、自分に必要な茨木っ子力を「もっと伸ばしたい」と意識できるようにすることが大切です。新ツール「茨木っ子キャリアパスポート」と「いま未来手帳」は、こうした行為を習慣化するために導入されました。

 キャリアパスポートは、自身の現状や今後の目標などを絵や文字で表し、茨木っ子力がどれだけ高められたかを自分で評価。年齢に合わせたシートには、先生はもちろん、小学校までは保護者や地域の大人もコメントを添えられるようにし、対話的なつながりも可能にしました。中学生に配布するいま未来手帳は、日々の記録をつけることで、状況に応じて行動できる自己管理能力を身につけるのがねらいです。目標設定や振り返りはこれまでも学校単位で行われてきましたが、ツールを統一することでより成長を把握しやすくなりました。

 たとえば南中学校では、さまざまな取組みを行った際の振り返りをキャリアパスポートにとじ込み、個々の生徒の成長を見える化。茨木っ子力を指標に自身の変化を捉えられるようにしています。いま未来手帳には、毎日の帰りの会で予定や振り返りを記入。テスト前は、授業でいつ何を勉強するかの計画を立てて、記入しました。

「茨木っ子力」を育む新ツール

「茨木っ子キャリアパスポート」と「いま未来手帳」

「茨木っ子力」を伸ばすためには、幼少期からの継続的な教育とともに、子どもが自身の思考や行動を振り返ること、今後の見通しをもつことが大切です。繰り返し振り返ることは、その時々に自分で自分のことを見つめられる「メタ認知」を可能にします。メタ認知ができるようになれば、つねに状況に応じて自ら行動を調整できるようになり、自分で自分の茨木っ子力を意識的に伸ばし、状況に応じて使いこなせるようにもなるでしょう。それは、時代の変化に対応しながら生き抜く力にもつながってくるはずです。

4歳児から中学3年生まで一貫して使用する「茨木っ子キャリアパスポート」と中学生用の「いま未来手帳」

コロナ禍の休校中には小中学校全体でオンライン授業を展開。
来年度には1人1台タブレット貸与も

休校中、小中学校の先生たちが分担して動画を作成し、市教育センターのサイトから配信。興味深い内容になるよう工夫した動画は、外国語や体育、音楽も。さらに、来年度には小中学生に1人1台学習用端末を配備する「GIGAスクール構想」を推進。誰ひとり取り残すことがないよう、より深い学びと学習しやすい体制をめざす。

南中学校

テストに向けて「いま未来手帳」を活用する授業風景

自分を見つめ、振り返り、夢の実現へと生かす力を

南中学校 こども支援コーディネーター 井上博斗先生

自身の現状をつかみ、立てた目標がどうすれば達成できるかの見通しをもって行動して、その振り返りを今後に生かすことは、社会に出てからも重要となる成長のサイクルです。このサイクルを習慣づけるために、「茨木っ子キャリアパスポート」や「いま未来手帳」は役立つと思います。繰り返し活用すれば、考える行為自体も習慣になるはず。子どもたちの考えを評価し成長を促すことで、これからの社会を生きる力を育めるようサポートしています。

彩都西小学校

『注文の多い料理店』を読み解く国語の授業風景

Report!
時代とともに進化する「一人も見捨てへん教育」

言語力を磨き、人や社会とつながれる土台を

 「確かな言語力を育む」ことは人や社会と豊かにつながるために必要です。キャリアパスポートやいま未来手帳で周囲の大人と対話的に関わる(つながる)ために大切になるのも、自分の思いを表現し伝える力=言語力です。

 数学も問題の意味がわからなければ解けないように、読解力や語彙力などを含めた言語力は、すべての基本となります。茨木ではこれまでも国語や外国語教育に力を入れ、とくに読書活動を重視。朝に読書の時間を設けたり、充実度が北摂随一の中央図書館などを使って調べる学習コンクールを行ったり、さまざまな取組みを続けてきました。しかし、全国的な傾向と同様に、茨木でも国語に課題が見られたため、改めて言語力の育成を最重点の取組みのひとつに位置づけたのです。 

 たとえば彩都西小学校では、従来から低学年・高学年別の図書室を設け、「読書ノート運動」に励んでいましたが、さらに学力向上担当の先生が、子どもたちが興味をもって臨めるよう毎回工夫を凝らした授業を展開。言葉の表現やニュアンスを自分で考え見つけることを楽しみながら、繰り返し「使える力」に変えていきます。昨年度までは、まず隣同士で、次に人を変えて、全員が自分の考えを伝え合う時間をつくっていましたが、現在は感染症対策に配慮しながら少しずつ、発表の機会を増やすように工夫しているそうです。

 一人ひとりの違いを認め、人を思いやり、支え合っていく力を見つけるためにも、茨木っ子力は欠かせません。子ども同士や大人とのつながりを積み重ね、リアルな体験を豊かにすることで、未来を拓こうとする子どもたちと茨木の教育の新たな挑戦を、まちじゅうが見守っています。

言葉を使って表現し、言葉でつながり合える人に

彩都西小学校 学力向上担当 平家健太先生

国語は学年が進むにつれ楽しいと思う子が減ってくるんです。そこを打破しようと、物語に出てくる道具を再現し、登場人物になりきって発表するなど、子どもたちの興味をひく工夫を重ねています。言葉を使って表現し、言葉でつながり合える力こそが、言語力です。自分の思いをうまく表せず、相手の思いを想像できなければ、人とつながるのは難しいもの。語彙を増やし、どう使うかを自ら考え、人に伝えられる力を、楽しみながら育めるよう心がけています。

Interview!
小中学生に聞きました!

茨木での学びってどんな感じ?

日坂隼敏さん(小学6年生)

みんなと話し合う授業が多く、人前でもうまく話せるようになったと思います。キャリアパスポートで、中3になったときどんな変化があるのか楽しみです。

畑地美来さん(小学6年生)

道徳や平和の授業などで感想や振り返りなどを書いて提出することがよくあるのですが、先生が温かいコメントを添えて返してくれるのでやる気が出ます。

谷瑠莉杏さん(中学2年生)

授業中でも放課後でも、わからないことは教え合う習慣が小学校の頃から続いているから、自然と助け合えるようになりました。生徒会発の学習会もあります。

小林瑞果さん(中学2年生)

みんなが挨拶を大事にしているから距離が縮まります。キャリアパスポートで目標達成までの目安がつけられるように。いま未来手帳ではメモを取る習慣がつきました。

田中眞椰さん(中学3年生)

いろいろな人の意見を聞いて話し合うグループワークが小学校から日常的にあって、気づきが多い。自分の考えを深めやすいし、みんなと仲良くなれます。

山本雪乃さん(中学3年生)

授業にサポートの先生がいて個別に質問しやすいです。自分を見つめる授業は以前からあったので、キャリアパスポートやいま未来手帳は書きやすく、活用しやすいです。