広報いばらき

川端康成と茨木

日本人初のノーベル文学賞受賞作家で本市名誉市民である川端康成と茨木とのかかわりについて紹介します。問合先、川端康成文学館 電話625-5978

川端康成の舞姫

 『舞姫』というと、森 鷗外が思い浮かぶかもしれませんが、川端康成にも『舞姫』という小説があります。1950年(昭和25年)から1951年(昭和26年)にかけて『朝日新聞』に連載された『舞姫』は、朝鮮戦争を背景に、国文学者の夫・矢木元男、バレエ教室を主宰する妻・波子、バレリーナをめざす娘・品子、大学生の息子・高男からなる家族の崩壊を描いています。

 アメリカによる占領の末期に連載された『舞姫』は、第29回で官能的な表現が朝日新聞社内で問題視されました。あくまで社内での自主規制でしたが、川端は指摘を受け入れて、表現を改めました。修正前の表現については、編集者の澤野久雄が『川端康成点描』(実業之日本社、1972年)で公開しています。

 連載時に挿絵を担当したのは、洋画家の佐藤泰治です。佐藤は小牧バレエ団の日高 惇というバレリーナをモデルにしたそうですが、川端は「小説の品子と日高さんとは無論なんのつながりもない」と述べています。若くして亡くなった佐藤にとって、『舞姫』の挿絵は代表作の一つとなりました。

 『舞姫』は、一休宗純の言葉「仏界易入 魔界難入(仏界入り易く、魔界入り難し)」が用いられた作品として、有名です。「魔界」なくして「仏界」はないと喝破する川端は、美や善、真などを象徴する「仏界」の裏にある「魔界」への関心を所々で表明していました。この「魔界」は、川端文学を理解するうえでのキーワードとされています。

 川端康成文学館では、2月11日からテーマ展示「川端康成を彩る装丁・挿絵」を開催し、ギャラリーでは、佐藤泰治による『舞姫』の挿絵原画を展示します。第29回の挿絵も展示します。また、関連講座(講座・講習ページ参照)も開講しますので、ぜひお越しください。

【川端康成文学館テーマ展示「川端康成を彩る装丁・挿絵」】

とき、2月11日(祝日)〜5月31日(日曜日)(2月11日・5月5日除く火曜日、祝日の翌日休み)、午前9時〜午後5時