広報いばらき

特集 障害のある人もない人も共に生きるまちへ

条例施行から1年

 市では、誰もが互いに協力し支え合うまちづくりを実現するため、昨年4月に「障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例」を施行しました。今月の特集では、条例の中で大きなポイントとなっている「民間事業者による合理的配慮の提供の義務化」に注目し、進みつつある市内事業者のバリアフリーの取組み等を紹介します。 問合先 障害福祉課 電話620-1636

条例を施行

「共に生きるまち茨木」をめざしてつくられた条例

 行政や市民、民間事業者等みんながお互いに協力して「共に生きるまち茨木」を実現するため、昨年4月に「障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例」を施行しました。

 この条例は、さまざまな障害のある人それぞれの状況に応じた困難を解消することなどにより、誰もが安心して暮らせるまちをめざすためのものです。

事業者の合理的配慮が義務化

 条例のポイントの一つに、民間事業者による合理的配慮(下記参照)の提供の義務化があります。民間事業者は正当な理由や過重な負担がある場合を除き、障害のある人への配慮を進めていく必要があります。今回は進みつつある、さまざまなバリアフリーの取組みを紹介します。

合理的配慮とは

 障害のある人の特徴や場面に応じて発生する困りごとに、負担が重すぎない範囲で対応することです。理由もなく対応を拒否することは差別に当たります。

読み書きが難しい人に
タブレットや音声読み上げソフトを利用する。
移動が難しい人に
段差を解消したり、スロープを設置したりする。
会話が難しい人に
筆談やイラストの説明カード、手話を用いる。

Interview
助成金で合理的配慮の取組みが進んでいけば

桝井歯科医院 院長
(新郡山二丁目2-31)
桝井今日子さん

 私は平成15年(2003年)から、この医院を継承してたくさんの患者さんを診てきました。この辺りは長年住み続けている人が多い地域なので、たくさんの高齢者が当院を利用しています。また、当院では障害のある人の通院もあり、そのような人たちへの配慮も特に必要だと考えています。昨年、「障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例」ができたことで、茨木全体として配慮が必要な人への取組みや理解が進んでいくと思います。これはとてもいいことで、このような取組みに対して助成金が用意されていることも、とても有意義なことだと思います。

 当院では、助成金を使ってコミュニケーションボード、集音器、筆談ボード、歩行器、車いす、手すり等を導入しました。コミュニケーションボードは、イラストがたくさんあるので会話をすることが難しい人でもスムーズにやり取りができ、助かっています。今後、小児の患者さんにも効果的に使っていこうと思っています。また、歩行器や車いすも待合から診察台まで高齢者等に安全に移動してもらうために活用しています。患者さんからは「手すりや歩行器があって安心できるわ。ありがとう」と声をかけてもらい、導入して良かったと実感しています。

バリアフリーの取組み

 民間事業者による合理的配慮の提供が義務化されたことに伴い、市内のお店等でバリアフリーの取組みが進んできています。

 市の助成金を利用した、コミュニケーションボードの作成、筆談ボード、集音器、スロープ(簡易型含む)、車いす、歩行器、起立補助具、高さ可変机等の購入、階段等の手すりの設置、段差解消工事、和式トイレから洋式トイレへの改修などが導入・実施されています。

事業者の皆さん
合理的配慮の提供に係る助成金支給制度のご利用を

 障害のある人がお店やサービスを不便なく利用できるようにするための費用全額を対象に、助成します(上限額あり)。

 利用には事前の申請が必要です。昨年度は26事業者から申請がありました。詳細は市ホームページ参照またはお問い合わせください。

対象
市内の中小企業者(個人事業主含む)・特定非営利活動法人
内容
下記のとおり
申込
来年1月31日までに、障害福祉課
合理的配慮の提供に係る助成金一覧

(※各項目、対象経費、例、上限額の順で)

コミュニケーションツールの作成経費
点字メニュー・コミュニケーションボードの作成
50,000円

物品の購入経費
筆談ボード、集音器、折りたたみ式スロープ
100,000円

工事施工経費
階段等の手すりの設置、段差の解消、ドアの改修・取替え
200,000円

取材にご協力いただいた市内事業者

障害のある人もない人も共に生きる
まちづくり条例のその他のポイント

 民間事業者による合理的配慮の義務化以外にも、いくつかポイントがあります。ここで紹介する以外にもさまざまな取組みを実施します。

相談体制の仕組みを構築します

 民間事業者等による障害を理由とする差別に関する相談を、相談支援課やそれぞれの事業を担当する窓口で受け付けています。また、相手方との調整が必要であれば、職員が詳しい事情を聴くなどし、主に話し合いを通じて解決を図ります。それでも解決しなかった場合には、市障害者差別解消支援協議会によるあっせんのほか、状況に応じ市長が勧告・公表を行うなど、解決に向けて取り組みます(あっせん等の手続きは今年8月から)。

手話に親しむ機会を増やします

 市では、手話通訳者を養成する講座以外にも、市民が学ぶことができる簡単な手話教室を開催するなど、手話に親しむ機会を増やしていきます。また、子どもの頃から、手話に親しむことが大切なことから、小学生・中学生等を対象にした、「こども手話教室」等を開催する予定です。

障害理解の取組みを推進します

 条例では、市民や市民活動団体、民間事業者は障害への理解を深め、「共に生きるまち茨木」の実現に取り組むための努力をすることと定めています。そのため市では、障害への理解を深めるための講座等を開催する予定です。日程等詳細は、広報いばらき等で随時お知らせします。また、障害理解促進の取組みを行う市民活動団体や民間事業者に対して補助を行っています(下記参照)。

その他

障害理解促進事業補助

対象、市内で活動する10人以上で構成される団体・事業者、内容、障害者福祉の啓発、障害者との交流行事、理解促進のための研修会等に補助、費用、対象費用の5分の4または50,000円のいずれか少ない額(1,000円未満切り捨て)、備考、事前申請要、申込、申請書(障害福祉課に設置または市ホームページからダウンロード可)と必要書類を、郵送または直接、〒567-8505 同課

Interview
障害があるから特別扱いしてほしいわけではない

茨木障害フォーラム 事務局長
六條友聡さん

 私は、身体の筋肉が萎縮し筋力が低下する先天性ミオパチーという病気で、電動車いすに乗って生活しています。普段は、障害のある人の社会参加の促進、啓発等の活動を行っていて、「障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例」の制定にも携わらせていただきました。制定以前から私は、セミナーを開催して条例の必要性を訴え、市にも希望を伝えてきました。障害者施策推進分科会にも参画し、専門部会や障害者団体へのヒアリングを行うなど、深く関わったこともあり、条例が制定されたときは本当にうれしかったです。

 条例は、私たち当事者の想いがしっかりと反映されているものになっていると思います。中でも民間事業者の合理的配慮の提供を義務化としたことは画期的だと思います。これまではバリアフリーが進んでおらず、入りにくいお店はあきらめていましたが、配慮していただけるお店が増えれば、色々な所へ行けるという楽しみもきっと増えます。単に「やりなさい」というだけでなく、助成金も併せて設けたことは、民間事業者の理解も得やすく、バリアフリーなどに取り掛かりやすいのではないでしょうか。

 私たち当事者は、障害があるから特別扱いをしてほしいわけではありません。障害のある人もない人もみんな一緒に気持ちよく暮らせるようになることを願っているのです。条例施行から1年が経ちましたが、条例を知らない市民の方も多く、今はまだ根付かせていく段階です。私も啓発活動等をもっと進めて「共に生きるまち茨木」の推進に努めていきたいです。

私たちにできること

進みつつある障害のある人への理解や取組み

 条例が施行され、事業者によるバリアフリーの対応や、相談体制を充実するなどの取組みが始まり、障害のある人への理解や配慮は着実に前へ進んでいます。

 しかし、条例は施行からまだ1年と、走り出した段階で、更なる周知を図っていく必要があります。市では、条例への理解を深めていくためのリーフレット(市ホームページ参照)を作成し、また、内閣府ホームページでも、3年前に施行された障害者差別解消法や合理的配慮についてのリーフレットが掲載されています。加えて市では、小学生・中学生でもわかりやすいような啓発冊子の作成も予定しています。

 法律や条例のことを少し知っているだけでも、障害のある人への理解は深まっていきますので、ぜひ一度ご覧ください。

自分にできることからやっていく

 杖を使っている人や車いすに乗っている人、コミュニケーションを取ることが難しい人などが困っているところを見かけたら、何かできることはないかとまずは声掛けから始めてみてください。お店などを経営している方は、店内を確認し、バリアフリー等の配慮ができているかを考えてみてください。

 自分にできることを考え、行動する。無理のない範囲から始め、障害のある人もない人も暮らしやすいまちを一緒につくっていきましょう。