広報いばらき

川端康成と茨木

日本人初のノーベル文学賞受賞作家で本市名誉市民である川端康成と茨木とのかかわりについて紹介します。問合先、川端康成文学館 電話625-5978

川端康成の初恋

 大正8年(1919年)20歳の康成は、カフェ・エランで働く14歳の伊藤初代と出会い心惹かれます。永井荷風や北原白秋なども常連だったというエランは、近くにある旧制第一高等学校の学生たちのたまり場でした。看板娘の「ちぃちゃん」こと初代は、一高生のアイドル的な存在で、康成も遠巻きで彼女を見つめる学生の一人でした。

 ほどなくエランは人手に渡り、初代は店主の親戚にあたる岐阜の寺に引き取られますが、慣れない寺での生活は苦労が多かったようです。それを知った康成は、大正10年(1921年)10月に岐阜を訪れ初代に求婚。結婚の約束を交わした2人は、記念の写真を撮って別れ、手紙で愛を確かめ合います。ところがそれからわずか1か月後、新生活の準備にいそしむ康成のもとに、初代から一方的に別れを告げる手紙が届きます。「私には或る非常があるのです」 — 謎めいた言葉に驚いた康成は必死に翻意を迫りますが、初代は去っていきました。これが「川端康成の初恋」として知られる若き日の恋のてんまつです。初代が康成に別れを告げた真の理由は、今も謎に包まれたままです。

 この破局は康成にとって大きな打撃となっただけでなく、その後の川端文学にも影響を与えました。初代との恋のいきさつはたびたび小説化され、「ちよもの」と称される作品群をなしていますが、求婚のための岐阜行きを描いた『篝火』もその一編です。

 2月11日から始まる川端康成文学館のテーマ展示では、『篝火』の自筆原稿を中心に、「ちよもの」作品をご紹介します。また、バレンタインデーの2月14日には生涯学習センターきらめきで、出張展示も行います。寒い冬の日に、若き康成の熱いハートに触れてみてはいかがでしょうか。

【川端康成文学館テーマ展示「川端康成の恋」】

とき、2月11日(祝日)〜5月27日(月曜日)(火曜日、3月22日休み)、午前9時〜午後5時

【川端康成文学館出張展示】

とき、2月14日(木曜日)、午後4時〜7時、とき、生涯学習センター2階ホワイエ