広報いばらき

川端康成と茨木

日本人初のノーベル文学賞受賞作家で本市名誉市民である川端康成と茨木とのかかわりについて紹介します。問合先、川端康成文学館 電話625-5978

川端康成と映画

 現在、制作中の映画「葬式の名人」はオール茨木ロケであるとともに、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングで映画作りのご協力をお願いする画期的な方法も話題となっています。実は川端康成本人も画期的な手法を使って映画を作り上げ、注目を集めました。大正15年(1926年)に川端が脚本を執筆し、衣笠貞之助が監督した「狂った一頁」という作品です。

 当時、「新感覚派」の旗手と目されていた川端にとって、見る人に新しい感覚を与える映画は非常に重要な意味を持っていました。映像という新しい表現方法は、言葉によって新しい感覚を表現しようとしていた川端の味方であり、敵でもありました。

 当時の映画は白黒でサイレント(無声)でしたが、弁士と呼ばれる人が上映の場で即興的に解説を加えていました。また、状況説明や会話が文字として画面に現れる字幕があるのが当然でした。しかし、「狂った一頁」はこの弁士と字幕を無くして上映が行われました。これは川端にとって、言葉を排して映像だけで表現するという実験であり、逆に言葉による表現の独自性を見出していく作業でした。

 「狂った一頁」は長らく幻の映画となっていましたが、昭和46年(1971年)に監督の衣笠の家で発見されて、再編集が加えられたバージョンが作られました。京都市文化博物館では定期的に「狂った一頁」のフィルム上映を行っています。一度、ご覧になられてはいかがでしょうか。

 川端康成文学館では9月1日よりテーマ展示「川端康成と映画」を開催します。「伊豆の踊子」など川端原作の映画を紹介するだけでなく、川端にとって映画とは何だったのか「狂った一頁」を通して考えてみる展示をご用意しております。ぜひお立ち寄りください。

 川端康成文学館テーマ展示「川端康成と映画」 とき、9月1日(土曜日)〜11月30日(金曜日)(火曜日、10月6日、11月24日休み)、午前9時〜午後5時、ところ、同館