広報いばらき

特集1 市民会館跡地エリアのこれから

 2015年12月に閉館した元市民会館。1969年の開館以来、立地的に市の中心にあるだけでなく、成人祭や茨木フェスティバルなど、たくさんの人に利用され、市民の「心の中心地」として愛されてきました。

 この地が新しい心の中心地となるように、市民会館跡地エリアの活用を検討し、基本構想を策定しました。特集1では、これまでの検討の経緯とともに、決定したコンセプトなど跡地のこれからを紹介します。問合先 市民会館跡地活用推進課 電話655-2757

歴史

思い出の1ページに刻まれた元市民会館

 1968年、元市民会館は市制施行20周年記念事業として建設されました。市制施行周年記念式典や成人祭などで使われたほか、茨木フェスティバルやコンサートなど、市民の身近な文化・芸術活動の場としても活躍してきました。また、かつては結婚式場としても使用され、たくさんの市民の思い出の1ページに刻まれているのではないでしょうか。

さまざまな問題を抱え46年の歴史に幕

 たくさんの市民に愛され、親しまれてきた元市民会館も、歳月とともにさまざまな問題を抱えるようになりました。経年劣化による修理等の維持管理経費の増加や耐震性、バリアフリーの課題などに加えて、舞台装置等の面でも、利用者の多様なニーズに対応できなくなっていきました。これらの課題を抱え、2015年12月、元市民会館はたくさんの市民に惜しまれながら、46年の歴史に幕を下ろしました。

 多くの市民の想いがつまった元市民会館の跡地エリア(市民会館跡地・福祉文化会館・元市民会館前の広場(人工台地)・南グラウンド)が、今まで以上に多くの人の心の中心地となるよう、現在、これからの活用について検討を進めています。

検討

市民ニーズを知る

 市民会館跡地の今後を考えるために、市民ニーズや社会情勢の把握、政策課題等の整理を行いました。特に市民の皆さんの想いを基本と考えることを大切にしました。

 市民ニーズを知るために、まず18歳以上の市民5千人へのアンケートに加え、インターネットを通じたアンケートも行いました。その結果、市民会館跡地には、ホールや音楽会などこれまでの市民会館の機能に加え、公園やカフェのような、憩える場所やにぎわいなどの機能が求められていることなどが分かりました。

 また、アンケートのほかに、無作為抽出した市民5千人の中から、参加を希望した人や関係団体など約100人と市長が対話し、想いや意見を聞く「市民会館100人会議」を開催しました。この会議では、「ホール」「憩い」「交流」「にぎわい」という4つのキーワードが挙げられました。その結果を踏まえて最終報告会で行ったワークショップでは、市民の皆さんの想いの根底に「ハレの特別な日」「日常のいごこちのよい場」という2つの視点があることが分かりました。

キーコンセプトは「育てる広場」

 市民会館跡地エリアの活用には、母子保健や子育て支援の利便性向上、中心市街地活性化といった本市の政策課題や社会情勢も、考慮する必要があります。これらの課題と市民の皆さんの想いから導かれた4つのキーワード・2つの視点を合わせて、機能検討のベースとしました。また同時にこのエリアの活用にあたって、キーコンセプトを「育てる広場」としました。提供された場をどう使い、どう活動し、どう変えていくかは、市民自身が考え、作り上げていく、そのような場をめざします。

コンセプトを踏まえた4つの導入機能

 次に、決定したキーコンセプト「育てる広場」を踏まえた市民会館跡地エリアの機能を検討しました。4つのキーワード、2つの視点、2つの政策課題から波及効果や相乗効果が望めるものを検討し、(1)ホール機能、(2)憩い、(3)にぎわい・交流・中心市街地活性化、(4)子育て支援の4つの機能を導入することに決定しました。

 後のページでは導入する機能の詳細や今後の取組みについて紹介します。

Interview

利用し賑わいをつくるそれが市民の責任

市民会館100人会議参加者 渡辺志穂里さん

 市民会館は、小学校の連合音楽会や成人祭で訪れ、特別な日を彩る素敵な場所だと感じていました。100人会議では、みんなが積極的に意見を出し合う中で、多世代と交流したいという意見が多くて、驚きました。市民会館の跡地を私たち市民がどう使っていくかが大切だと思います。どんなに良い施設があっても、誰も使わないともったいないです。私たちが使いたいのはどのような施設なのかを考え、それを市に伝えて、利用し賑わいをつくっていく、それが私たち市民の責任だと思います。

基本構想イメージ

市民の想い

アンケート結果

100人会議

4つのキーワード

ホール

憩いの場

交流の場

にぎわいの場

市民の想い

最終報告会

ワークショップ

2つの視点

ハレの特別な日

日常のいごこちのよい場

社会情勢

政策課題

子育て支援

中心市街地活性化

導入機能とその方向性

ホール機能「市民の“ハレの場”」

憩い「サードプレイス」

にぎわい・交流・中心市街地活性化「普段使いできる交流とにぎわいの空間」

子育て支援「いばらき版ネウボラ」

Key Concept「育てる広場」

機能

最適な敷地設定を検討

 コンセプトや4つの導入機能を踏まえ最適な敷地設定を検討し、エリアイメージを「2つの空間がリンクするひろがりのあるエリア」としました。施設の配置等は現時点でのイメージで、今後も検討を重ね、具体化していきます。

「対話」から「参加」へ

 今年度は、より具体的な施設機能について検討する基本計画の作成を行います。また「育てる広場」を実現するため、市民の皆さんにワークショップや社会実験など、検討課程への参加をお願いします。その一つに社会実験として、期間限定で人工台地の一部に、市民の皆さんとともに芝生を張るなど、これまでの「対話」から「参加」につなげます。そうして、広場を育てる「仲間づくり」を進めます。

生まれ変わる心の中心地

 市議会に新たに設置された市民会館跡地等整備対策特別委員会など、さまざまな場で検討を重ね、市民会館跡地エリアの未来は、明確になりつつあります。基本計画を作成した後、2020年度から施設等整備を開始し、2023年度の開館を予定しています。市民会館跡地エリアは、今まさに新たな市民の心の中心地として、生まれ変わろうとしています。

ホール機能「市民の“ハレの場”」

 使いやすい規模・形態・設備を備え、発表会や講演会、イベントなど多目的に利用できる、市民にとって特別な「ハレの日」にふさわしい場所とします。設備は2階席以上の大ホールと多目的ホールの設置を検討し、大ホールは、1階客席のみ使用の場合、中規模ホールとしても使える仕様を検討します。また、たくさんの人が気軽に文化・芸術に触れ、身近に感じることで、文化・芸術が育ち、発展していく空間をめざします。

憩い「サードプレイス」

 跡地エリアは、芝生が広がる公園など、中心市街地でありながら、緑に囲まれた憩いの場とします。例えば、テラスのあるカフェが併設された図書スペースがあり、天気の良い日はそのまま外の芝生で読書ができるなど、誰もが心地よく過ごせるようなエリアにします。また、一時保育など子育て支援機能と連携することで、子育て世代でも、ホールで音楽を聞いたり、演奏活動に取り組んだり、一人の読書時間が持てたりするなど、自分の憩いの時間や活動ができる、家庭、職場や学校に次ぐ第3の居場所「サードプレイス」をめざします。

にぎわい・交流・中心市街地活性化

「普段使いできる交流とにぎわいの空間」

 施設の入口に大屋根の設置を検討し、屋内と屋外をつなぐオープンな中間領域とし、ステージや催し、ダンスの練習など、誰もが自由に活動できる気軽なスペースを作ります。ここではいつも誰かが何かをしていて、それを眺めている人がいて、その活動がきっかけでつながりが生まれ、日常的にさまざまな人が交流できる、出会いやにぎわいの空間とします。また、樹木やベンチを配置し、子どもから高齢者まで、自然に人が集まり交流する場所をめざします。子どもたちには、安全・安心に遊べる場所を提供するとともに、多世代間の交流を図るイベントも開催できる魅力的なスペースにします。

子育て支援「いばらき版ネウボラ」

 ネウボラとは、妊娠・出産から就学前までの育児を切れ目なく継続的に支援する、フィンランド発祥のワンストップ子育て支援施設や制度を意味します。安心して相談でき、「困る前につながる」環境を整えることで、リスクの早期発見とその後の支援を可能にします。一時預かりや相談窓口、母子保健機能のほか、子ども向け図書を揃えた図書スペースや屋内遊園スペースなど、遊びに来たついでに相談できたり、情報交換や交流ができたりするような場所にします。また、地域の相談拠点とも連携し、役割を分担しつつ、必要な情報の共有をしながら、一体的な子育て支援を行います。

敷地設定「2つの空間がリンクする広がりのあるエリア」

 これまで紹介した機能を備えた新施設を中央公園南グラウンドに建設します。市民会館跡地に加え、人工台地や福祉文化会館敷地も憩いやにぎわいを生む場所としていきます。開放感の高い市民会館跡地周辺や人工台地は、さまざまな催しにも利用でき、道行く人たちが立ち寄れる場とします。また、道路面より低く、程よい“囲まれ感”のある南グラウンドは、施設や広場の利用者が集う、いごこちのよい空間とします。そうした2つの個性を持つ空間がリンクするエリアをめざします。各施設のゾーニングなどは現時点のイメージであり、今後の検討により具体化を図っていくこととします。

施設構成(横断面イメージ)

ホール機能(大ホールなど)
子育て支援機能(ネウボラ)
多目的ホールなど
憩い機能(図書スペース・カフェなど)

大屋根

にぎわい・交流機能

にぎわい空間

広場