広報いばらき

特集 地域で命を守る
~いつか起こる災害、その時のために~

 阪神・淡路大震災から、まもなく23年目を迎えようとしています。その間にも東日本大震災など多くの自然災害が発生し、甚大な被害をもたらしてきました。こうした災害は、またいつ襲ってくるかわかりません。災害が発生した時、被害を最小限に抑えるためには、地域の一人ひとりの力が必要です。今回は、地域で行われている防災の取組みや市全域防災訓練について紹介します。
問合先、危機管理課 電話620-1617

地域で地域を守る

災害はいつ起こってもおかしくない

 平成7年(1995年)に起こった阪神・淡路大震災では、府域でも大きな揺れを観測し、市内でも家屋の損壊などの被害が発生しました。

 日本には、地震を引き起こす可能性のある断層がたくさんあります。本市にも、北摂山地から大阪平野・六甲山地にかけて走る有馬ー高槻断層帯があり、今後、地震が引き起こされる可能性も考えられます。また、南海トラフによる大きな地震も30年以内に70%、50年以内に90%と、高い確率で発生すると予測されていることから、本市においても大災害がいつ起こってもおかしくありません。

自助、互助・共助、公助

 阪神・淡路大震災のような大災害が起きたとき、すぐに支援があるとは限りません。警察・消防などの行政が支援する「公助」には限界があります。阪神淡路大震災で、崩壊した建物等に閉じ込められた人の97.5%は、自力での脱出や家族・知人によって救助されたと言われています。

 自分自身で命を守る「自助」、そして、地域の人たちで互いに助け合う「互助・共助」は災害に対応するためには必要不可欠です。いざという時に備えて、より多くの人が協力し合い、地域が一丸となれる関係を作っておくことは、自分自身を守るだけでなく、地域全体を守る力になります。

 では、自助、互助・共助の力を高めるために、地域でどのような取組みをしているか見ていきましょう。

Interview 地域と密な関係をつくる

NPO 法人プラス・アーツ神戸事務所長 室﨑友輔さん

 テレビなどで阪神・淡路大震災や東日本大震災の状況を見た人は、行政が支援する公助には限界があることが理解できたのではないでしょうか。災害時はみんなが被災者であり、自分で守る自助を基本に、みんなで助け合う互助・共助が大切なのです。

 私たちは、おもちゃの交換会と防災訓練を合わせ、子ども向けの「イザ!カエルキャラバン」というイベントを行っています。このイベントでは、一緒に来た保護者も参加してもらい、しっかりと防災の知識や知恵を学んでもらっています。楽しみながらも防災に触れることで自然と自分の身を守る術になり、防災意識の高まりにつながります。また、防災に限らず、地域の夏祭りなどの地域活動に繰り返し参加することで地域の人と顔見知りになり、地域の関係が密になって、互助・共助の力を高めることにつながります。まずできる事として、地域活動などに一度参加してみてください。

自主防災組織で災害に備える

自主防災組織連絡会代表幹事 水野保夫さん

地域を守る自主防災組織

 自主防災組織は、災害時に地域で率先して避難所運営や安否確認などを行います。本市では、自治会や地区の民生委員を構成員とし、小学校区単位で結成されており、32小学校区のうち29校区で立ち上げられています。

被災地を訪れて実感した自主防災組織の必要性

 「十数年前は市内に自主防災組織は10校区もありませんでした。今では29校区で結成され、防災意識が高まっています」と語るのは自主防災組織連絡会代表幹事の水野保夫さん。水野さんは、阪神・淡路大震災の時に、物資を届けるなどの被災地支援に取り組みました。避難所では食料などの物資が不足したり、水洗トイレが使用できなくなったりと、避難した人は過酷な状況を余儀なくされました。

 また、被災した町の町長の「うちの町は職員が少なく対応がスムーズに進まない」という言葉に「行政の支援を待ってばかりではいられない。災害はどこでも発生し、茨木でも同じことが起きるかもしれない」と水野さんは、防災への思いを強めていきました。

 また、「互助・共助の力を高めるためには、日頃からの地域でのコミュニケーションは欠かせません。地域活動が活発なところほど災害への対応力は強くなります。災害を乗り切るため、防災訓練などの地域活動を通じて人のつながりをつくることが大切です。だからこそ、それを推進する自主防災組織が必要なのです」と語ります。

訓練で防災への意識を高める

 さらに、「実際に訓練しないと、いざ災害が起こった時には何も実践できません。日頃から防災訓練などを繰り返し行い、災害時にあの時の訓練でこんなことをやったなと思い出せることが重要です」と訓練の意義を話します。水野さんが会長を務める東小学校区では、東日本大震災で避難所を運営した経験のある講師を招くなど、避難所運営訓練に取り組んでいます。この訓練の参加者からは「仮設のトイレはどこに置くべきか」「体育館の硬い床に高齢者が長時間座っていられるのか」などと声が上がり、避難所では細かい配慮が必要であると確認する機会となっています。

 また、「訓練参加者も高齢化が進んでいる」と言います。そこで、東小学校区ではプラス・アーツと連携した訓練を実施するなど若い世代に向けた「楽しい防災」の工夫をしています。

地域での取組み

地域防災訓練

 市内各地域では、自主防災組織が中心となり、小学校などで防災訓練が行われています。訓練では、誰もが災害時に率先して行動できるように、消火器の使い方や毛布を使った搬送法など基本的な動作や役立つ知識などを学んでいます。

 11月5日に玉櫛防災会が行った訓練では、100人以上が参加し、3グループに分かれ、非常用トイレの使い方や煙体験、水消火器での初期消火訓練などを行いました。その他、防災用具・非常持出品の展示なども行われ、防災の知識と意識が高まりました。

 また、来年1月21日に実施する市全域防災訓練(下記参照)では、玉櫛防災会をはじめほとんどの自主防災組織が、各小学校区で防災訓練を実施します。

地域で連携した取組み

 自主防災組織と他の団体が一緒になって防災の取組みを行っている地域もあります。

 10月21日に東中学校で、中学生が中心となって行われた「東中フェスタ」では、防災の要素を取り入れたアトラクションなどが実施されました。東中学校区青少年健全育成運動協議会や自主防災組織と中学生が指導役となり、毛布を使った担架での搬送ゲームや水消火器の的当てゲームなど6つの防災アトラクションで地域の子どもたちは防災を楽しみながら学びました。

 このように、各地域で防災意識を高めるための取組みが広まっています。

地域防災訓練参加者の声

藤村満男さん、直輝さん

 災害時に各自が行動できるように家族で参加しました。消火器を使うのは初めてでしたが、自力でできる初期消火方法を学べました。また、煙体験や心肺蘇生法など色々な体験ができたのがよかったです。これからもっと災害に備えようと思います。

市全域防災訓練で防災力を強化

市全体の防災力アップ 全域防災訓練を実施

 市では、市全体の防災力を高めるため、平成27年度から市全域防災訓練を実施しているところです。初回の昨年は、全指定避難所の開設と16自主防災組織による地域訓練を実施し、7719人の参加がありましたが、若年層の参加が少ないなど課題が残りました。そこで、2回目の今年は、保育所(園)・幼稚園、小・中学校、高校、企業等に働きかけ、事前登録して行う「シェイクアウト訓練」を平日に実施したところ、約5万人の参加があり、若年層の参加も増えました。アンケートでは、7割以上から「防災意識が高まった」と回答があり、意義のある訓練となりました。

 来年の「市全域防災訓練」(下記参照)は3年間の集大成として、これまでの成果を活かしながら、地域・行政・防災関係機関が連携して実施します。今回は各地域の自主防災組織等が主体となって訓練を行うため、市と訓練内容などを何度も打ち合わせし、独自のプログラムを企画しています。また、より地域に密着した訓練を行うため、防災士(下記参照)が、自主防災組織に訓練指導を行う事前研修会を開くなど準備しています。

市内で活躍する防災士

中津校区防災会防災士 川井悦子さん

 私は防災士の資格を持つ一方で、いばらき女子防災部にも所属しています。多くの女性が参加していて、防災について考えている女性は多いんだなと思いうれしくなりました。避難所では運営者に男性が多く、女性や子どもが声をかけにくいとか、デリケートなことなどを話しにくいことが多いです。特に、トイレなどの衛生面の問題は大きな問題です。女子防災部では、女性ならではの問題とより良い解決法などを話し合っています。今後も、このような場をもっと活用して、女性の力も災害時には必要なんだよと伝えていきたいです。

中津校区防災会防災士 山本哲也さん

 防災士は、地域で防災訓練等の指導ができるよう講習を受け、防災訓練・研修を主導する防災のリーダー的な存在です。阪神・淡路大震災の時、もし茨木で同じような震災が起きたら、自分に何かできないかと思ったことがきっかけで、資格を取りました。防災士になって、研修や訓練に参加し、多くの知識・情報を得ることができ、スキルアップしたと実感しています。この先、茨木でも起こるかもしれない災害のために、私たち防災士が先頭に立って地域の防災力を高めていき、地域全体で災害に備えていきます。

地域の防災リーダー防災士と女子防災部

 市では、地域の防災力強化のため、自主防災組織会員を対象に、防災士養成支援を行っており、昨年度末までに32人が資格を取得しました。防災士は、地域の防災リーダーとして市や地域の防災訓練・研修等で指導しています。

 また、男女のニーズの違いや多様な視点に配慮した防災対策ができるよう、女性防災リーダーの育成を進めており、これまでに延べ450人が研修会や訓練に参加しました。さらに、「いばらき女子防災部」を立ち上げ、「女性による防災訓練」を実施したほか、災害時のトイレ対策等の研修や訓練を行うなど、高齢者や障害者、乳幼児など配慮が必要な人が安心できる避難所づくりのため、防災の知識を高めています。

いざ市全域防災訓練へ

 このように地域には、いつか起こる災害に備えている人が多くいます。自助、互助・共助の意識を高め、地域で命を守るための第一歩として、「自分の命は自分で守る。自分たちの地域は自分たちで守る」を合言葉に、ぜひ市全域防災訓練に参加しましょう。

市全域防災訓練

とき、来年1月21日(日曜日)、午前9時から

有馬ー高槻断層帯を震源としたマグニチュード8.0(最大震度7)の地震が発生。ライフラインが途絶し、家屋などに甚大な被害が発生したとの想定で実施します。

(1)訓練開始
市内の屋外スピーカーからのサイレンにより、地震発生を知らせます。
(2)身を守る行動
姿勢を低く、頭を守り、動かない
(3)避難訓練
戸締りと火の元を確認したら、指定避難所へ向かいましょう。住所によって向かう避難所は決めていませんので、前もって家族で話し合いどこへ避難するか決めておきましょう。
(4)避難所で訓練に参加しましょう
避難先の「指定避難所」で訓練を実施します。訓練の内容は各自主防災会ごとに異なります。詳細は市ホームページまたは、各地域の自主防災会または危機管理課にお問い合わせください。訓練終了後、アンケートに答えると防災グッズ(数量限定)をプレゼントします。

注意事項