特集1 在宅療養を考える ~住み慣れた場所でいつまでも~
高齢社会の進展に伴い、医療や介護サービスを必要とする人が今まで以上に増加すると見込まれています。今月の特集では病院や施設ではなく、住み慣れた地域、自宅での療養「在宅療養」の現状や魅力について紹介します。
問合先 高齢者支援課 電話620-1637
超高齢社会を迎えて
市の現状
現在、全国で少子化と同時に高齢化が急速に進んでいます。本市も例外ではなく、市人口ビジョンによると、市内の約4人に1人が65歳以上であり、2040年には約3人に1人が65歳以上になると予想されています(下記参照)。
高齢化が進むにつれて、医療や介護の需要が大きくなり、病院や介護施設で対応できない場合が出てきます。これは、全ての人にとって重要な問題です。誰もが自分自身の問題として、超高齢社会の対応について考えなければなりません。
市高齢者人口予想
2015年 66,864人
2020年 72,759人
2025年 74,305人
2030年 76,125人
2035年 80,284人
2040年 86,775人
人生の最期をどこで過ごすか
本市では、昨年12月に、要介護認定を受けていない65歳以上の人3千人を対象に、市の保健福祉に関するアンケート調査を行いました。その中の「人生の最期を過ごしたい場所はどこですか」という質問に、約7割の人が「自宅」と回答しました。その一方で、病院で最期を迎える人が8割にのぼっているのが現実です。
この理想と現実の差を埋める手段として「在宅療養」が挙げられます。自宅での看取りが可能な場合、在宅療養なら最期まで家にいることができます。自宅で希望に沿った最期を過ごすためにも、在宅療養についての知識をもっと深めていきましょう。
慣れ親しんだ自宅で安心して療養を
さまざまな職種が連携
在宅療養とは、病院への通院が難しい人や、住み慣れた家で治療を望む人に対して、医師や訪問看護師、ホームヘルパーなどが定期的に自宅を訪問し、適切なケアを行うものです。何か困り事が起きたり、病状が急変したりしても、在宅療養に従事するさまざまな職種が連携し、対応することができます。
Interview 住み慣れた家で安心の生活 大城佐久枝さん
私は8年ほど在宅療養をしています。病気にかかってしまった時、今の家にはたくさんの思い出が詰まっているので、病院ではなく、住み慣れた家で暮らし続けたいと思いました。家族だけでなく、多くの人に助けてもらってますが、家にいながら病院と変わらない対応を受けられるので、ストレスなく自分のペースで生活することができています。家が近くて孫がよく遊びにきてくれるので、それが本当に生きる活力になっています。最期までこの家で生活していきたいと思っています。
住み慣れた環境で療養を
在宅療養の最大のメリットは住み慣れた環境で療養できるということです。入院治療は、患者の日常生活においてさまざまな制限を伴うため、余計なストレスがかかることもあります。それに対し、自宅での療養は慣れ親しんだ環境で、普段の生活の延長で療養をすることが可能です。入院中はあまり眠れなかった人も、在宅での療養を始めると精神的に安定しやすく、よく眠れるようになることもあります。また、費用面でも、一般的に入院治療を行うよりも在宅療養の方が安くなります。
その他にも、家族が日常生活の中で本人に寄り添うことができるというメリットがあります。また、家族と一緒に生活することで、安心感が生まれ、普段使用している薬の量が減る場合もあります。気兼ねなく会話したり、いつでも接することができる場所に家族がいることは、大きな意味を持ちます。
このように多くのメリットがある在宅療養ですが、在宅療養における医療・介護サービスの内容について知る人がまだまだ少ないのが現状です。より多くの人に知ってもらい、高齢者が安心して暮らし続けられるよう、本市もさまざまな職種との連携や地域ケア会議を行うなどの取組みを行っています。
Interview 本人の意思を尊重
おおたに内科医院(市医師会会員)大谷晃司さん
現在、私は30人ほどの患者さんに訪問診療を行っています。訪問診療とは、往診のように患者さんの要請を受けて診察に行くのではなく、家での療養を希望する人に対してあらかじめ計画を立てて、定期的に診察を行うものです。今はまだ、家での療養を選ぶ人が少ないのが現状です。それは家でも療養できるということについて知る機会が少ないというのが要因にあげられると思います。まずは訪問診療という選択肢があることを多くの人に知ってもらい、それに対応することができる医師の数も増やしていくことが大切です。
家での療養を始めるにあたって、一番重要なのは患者さん本人の意思です。病気などで生きる意欲が衰えていくところを、本人の希望を叶えることによって、楽しみを持って前向きに生きていくことができるようになります。必ず家族のサポート、理解が必要になってきますが、力を合わせてできるだけ本人の意思を尊重しましょう。
地域包括ケアシステムで自分らしい暮らしを
5つのサービスの連携
在宅療養に必要不可欠になるのが地域包括ケアシステムです(以下ケアシステム)。ケアシステムとは、介護が必要になっても住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを誰もが最期まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を行う多職種が連携し、さまざまなサービスを一体的に提供できるケア体制のことです(下記参照)。全国の各自治体で構築・推進が進められています。本市では、三師会(医師会・歯科医師会・薬剤師会)や訪問看護ステーション、地域住民などと連携し、高齢者を地域で支える取組みを行っています。
ケアシステムは、全国の市区町村・地域単位で構築・推進が進められています。住みやすいまちづくりのために、地域の実情や特性に合った体制を整えることが重要です。本市では、三師会(医師会・歯科医師会・薬剤師会)や訪問看護ステーションなどのサービス事業所、地域住民などと連携し、高齢者を地域で支える取組みを行っています。
医療
- 病院、診療所
- 歯科医院
- 薬局など
介護
- 訪問介護
- デイサービスなど
予防
- ボランティア活動
- 老人クラブなど
生活支援
- NPO
- 自治会など
住まい
- 自宅
- 高齢者向け住宅
連携で情報を共有
多職種が連携することによって、医療・介護などといったそれぞれの職種の、従事者にしかわからない、多くの情報を共有することができます。例えば、介護サービス従事者は日常的に高齢者に接する機会が多いため、細かな状態の変化などに気づくことができます。そういった情報を本人、家族をはじめ、医師や看護師と共有し、また反対に医師による適切な治療法のアドバイスを共有するなど、足りないところを補い合うことができることから、在宅療養においても安心して適切なケアを受けることができます。
Interview 地域の連携が必要
市高齢者サービス事業所連絡会 居宅サービス事業所部会長 浅野健一さん
在宅療養を行うには、特定のサービスだけでは補えないところがあります。地域包括ケアシステムで、多職種・地域全体がチームとなって一人ひとりの情報を共有し合えば、足りないところを補完し合える、そこが地域包括ケアシステムの最大の魅力だと思っています。
今後、高齢化が進むにつれて医師や看護師、介護サービス従事者等の数が不足していきます。そこで必要になってくるのが地域全体での協力です。日常生活で、地域一人ひとりが気遣い・見守りの気持ちを持ち、地域の中で力を結集して支え合っていくことで、ネットワークが広がり、今まで届かなかった生活全般の支援・サポートを行うことができるので、地域全体で主体的に取り組んでいきましょう。地域ごとの特性はさまざまですが、自分ができることは何かと意識し、多くの人が高齢者をサポートするという気持ちを少しずつでも持てるようになっていければ良いと思います。
いつまでも茨木で暮らし続けるために
連携できめ細かい支援を
本市では、医療・介護・福祉・行政などが連携し、早くから高齢者の在宅療養支援について検討しています。
また、他市に先駆け、新しい取組みを進めています。例えば、在宅療養に関わる多職種が、顔が見える連携を築くために「地域における多職種連携研修会」を行いました。これにより、職種をこえて気軽に相談できる関係づくりのきっかけになりました。他にも、適切な医療や介護のサービスを受けることができるように、本人・家族、医療・介護・福祉のスタッフ間で、本人の情報を共有するための手帳「はつらつパスポート(みんなで連携編)」の配付や、医療・介護等のサービスを提供する事業者情報を一元化し、情報提供を行うサイト「いばらきほっとナビ」の開設など、さまざまな医療・介護連携に関する取組みを行っています。ぜひご活用ください。
市制施行・医師会創立70 周年記念事業
在宅医療・介護連携シンポジウム
とき、来年2月4日(日曜日)、午後2時~午後4時30分、ところ、立命館いばらきフューチャープラザグランドホール、定員、800人(多数の場合抽選)、内容、市における在宅療養の展望~いつまでも茨木に暮らせるように~、これからの日本の医療(府医師会会長 茂松茂人さん)、パネルディスカッション(市総合保健福祉審議会会長 黒田研二さんほか)、介護から学んだ大切なこと~認知症の母と過ごして~(エッセイスト 安藤和津さん)、申込、11月30日までに、ハガキまたはファックス(1回で2人まで、氏名・住所・電話番号・参加人数・車いす席と手話通訳の有無を記入)で、〒567-8505高齢者支援課 電話620-1637、FAX622-0655
今日から療養を考える
誰でも年を重ねていくもの。今は大丈夫な人も、助けが必要になったときに困らなくていいように、今から療養についての知識を蓄えましょう。自分自身だけではなく、家族や友人など、身近な人が突然医療や介護が必要になることも十分に考えられます。いろいろな準備、また制度やサービスの知識を身に着けておくことも、自宅で暮らしたいという希望を叶えるためにはとても重要です。
いつまでも住み慣れた茨木で暮らし続けることができるように、あなたも今日から療養について考え始めてみませんか。
普段からの準備リスト
- かかりつけ医を持つ
- 医療・介護保険制度の知識を身に着ける
- 急変時の対応や相談先等を家族で話し合っておく
- 地域コミュニティに参加し、友人・仲間を作る