広報いばらき

特集 認知症にやさしいまち

その人らしさを みんなでサポート!

 カフェでゆったりとしたひとときを満喫。このカフェは「いばらきオレンジかふぇ」と呼ばれ、認知症の人やその家族、介護者などがお茶を飲みながら、楽しく話したり、スタッフに日常の悩みを相談したりできる場所です。今月の特集では、認知症の人やその家族へのサポートや市内で数を増やしているいばらきオレンジかふぇについて紹介します。

問合先 高齢者支援課 電話620-1637

認知症とは?

増加する認知症

 現在、市の65歳以上の人口は約6万5千人で、これは総人口の約23%に当たります。市内には認知症の人やその疑いのある人が約1万8千人いると推計され、2024年には、約2万3千人に増えると予想されています。

認知症は誰もがなりうる脳の障害

 認知症とは、脳細胞のはたらきが低下することで、生活のさまざまな場面で支障がでてくる状態のことを言います。初期段階では大切なことや数分前のことを忘れてしまう記憶障害や、理解・判断力が低下する症状が表れ、症状が進行すると、睡眠障害になったり、徘徊などの行動が現れたりします。

 認知症は、誰でもかかる可能性があります。決して他人事ではありません。もしもの時を考えて、家族みんなで認知症についての正しい知識を学びましょう。

早期発見・早期対応が大切

 認知症の治療には、早期発見・早期対応が最も大切です。認知症はこれといった予防法が確立されておらず、症状が完全に回復することはありません。しかし、初期段階であれば、生活習慣を改善することで、症状の進行を遅らせることができます。

 「自分は大丈夫」と思わずに、次のチェック項目で確認してみてください。チェック後に「認知症かも」と思い当たる節があれば、一人で抱え込まずに、直接本人からではなくても、その家族や周りの人でも良いので、早めにかかりつけの医師やチーム・オレンジいばらき、地域包括支援センターなどに相談してください。ご相談いただければ治療や介護、心のケアなど幅広い対応で身体面と精神面をサポートします。

認知機能チェック項目

「もしかして」と思ったら、早めにかかりつけの医師やチーム・オレンジいばらきにご相談を。

さまざまなサポート

 市では国の認知症施策推進総合戦略の「新オレンジプラン」をもとに、認知症の早期発見・早期対応や、地域での生活を支える医療・介護サービスなどの連携、情報共有に力を入れています。市内の取組みやその現状などについて2人の医師に聞きました。

DMSSで早期発見

市医師会高齢者対策委員会委員長(なかじま内科) 中島周三さん

 認知症をとりまく問題点は、全国的に認知症の専門医が少なく、市内にも5人・6人しかいません。認知症の人全てが、専門医に診断してもらうことは不可能でしょう。また専門外の医師では、認知症の診断がとても難しく、認知症かどうかは判別できても、どういった種類の認知症なのか、どのような薬を処方するのが適切なのかが判断できません。

 そこで市医師会では、平成27年に全国で初めて、認知症の専門医ではない医師でも認知症の診断ができる、スウェーデンで開発されたDMSSというアプリを導入しました。協力してくれる診療所にタブレットを無償貸与し、使用を勧めています。このアプリのおかげで、認知症を専門としない内科や整形外科など、かかりつけの医師でも、認知症の診断が可能になりました。現在、市内28か所の診療所でDMSSを使って診断・治療を行っています(認知症診断医の一覧は、市医師会ホームページを参照)。今後もDMSSでの診断ができる診療所が市内で増えていけば、認知症の早期発見・早期対応につながっていくと思います。

密な連携で優れた支援を

市医師会高齢者対策委員会委員(藍野病院) 杉野正一さん

 認知症は日常生活に支障がでてくる病気です。医療の分野だけでは、日常生活の全てを支えることは難しいです。また、認知症の人だけではなく、その家族や介護者も支えなくてはなりません。そこで行政や介護など、それぞれのスペシャリストが協力し、補い合っていく必要があります。

 茨木では、早くから医療・介護・行政の3者が連携し、認知症など高齢者に関する問題に取り組んできました。そうした積み重ねがあり、3者は他の市町村よりも強固なネットワークを構築してきました。このネットワークによる密な繋がりができていたおかげで、認知症予防・連携のための「はつらつパスポート」の発行や、認知症の状態に応じた適切なサービスの提供の流れをまとめた「認知症ケアパス」の市民用と専門職用の作成、DMSSの導入など、優れた取組みを多数行うことができ、「茨木市モデル」として全国的に注目されてきました。

 しかし、こうした優れた取組みも、地域に根付き、利用されなければ意味がありません。私が院長を務める藍野病院では「あいの認知症プロジェクト」を立ち上げ、認知症に関わっている医師、看護師だけでなくいろいろな職の人が集まり、市や介護事業所と連携しながら、取組みの紹介や認知症ケアの講座など、地域全体で認知症ケアの向上と啓発活動に取り組んでいます。これらの活動を通じて、たくさんの人を巻き込みつつ、地域に認知症に関する知識を浸透させていき、正しい理解が広まることを願っています。

頼りになるパートナー

チーム・オレンジいばらき(認知症初期集中支援チーム)

 チーム・オレンジいばらきとは、高齢者支援課に設置されたチームです。40歳以上の市内在住の在宅者で認知症の診断を受けていない人、医療サービスや介護サービスを利用していない人や中断している人を対象に、専門職が家庭を訪問し、認知症の人やその疑いのある人とその家族の支援を行っています。

症状に応じて適切な対応を

認知症専門医(市嘱託員、藍野病院) 園田 薫さん

 チーム・オレンジいばらきは、認知症の人とその疑いのある人の早期発見・早期対応を目的に、認知症の専門医である私と、保健師、社会福祉士の3人がチームとなって活動しています。主な活動は、保健師と社会福祉士が相談を受けた家庭を訪問し、本人と家族の同意のうえで、当事者の生活状況など情報を収集します。そして、2人から私のもとに送られてきた生活状況などの情報をもとに、その人の認知症の可能性や、認知症だとしたら症状の重さを検討します。緊急性がある場合は、すぐに治療ができる病院を紹介するなど迅速に対応します。緊急性がない場合でも、2週間に1度のチーム員会議等で、今後のサポート方法等を決めていきます。認知症は、何もしないと症状が進行することも多く、早期発見・早期対応につながるように活動しています。少しでも気になることがあれば、チーム員の保健師と社会福祉士にご相談ください。

認知症地域支援推進員

 市には認知症地域支援推進員が2人います。医療と介護の分野をそれぞれが担当し、医療・介護等の支援ネットワーク構築や、いばらきオレンジかふぇの開設の支援など、地域の認知症への対応力の向上などに努めています。

地域全体で支える

認知症地域支援推進員 寺川真由子さん

 私は介護系の推進員で、その役割は大きく分けて2つあります。1つは、地域包括支援センターに寄せられた相談や推進員が直接受けた相談などから、認知症の人やその家族を医療と介護に結びつける役割です。もう1つは、いばらきオレンジかふぇの開設に協力したり、時には地域で認知症の講座などを実施したりして、地域での認知症への対応力を向上させる役割です。地域全体で認知症の人やその介護者を支えていくために、こうした取組みを地域に広めていきたいと思っています。機会があれば、講座などに参加してみてください。

相談はこちらまで

認知症オレンジダイヤル 電話0120-556-806
平日、午前9時〜午後5時
認知症地域支援推進員が対応します。

チーム・オレンジいばらき 電話622-0655
平日、午前9時〜午後5時

地域包括支援センターでも相談できます

 認知症などの高齢者の相談を受け付けています。また、徘徊行動のある高齢者の早期発見と事故の防止のために、衣服や靴等に貼り付けることができる見守りシールを配付しています。

(※各項目、名称、住所、電話番号、担当小学校区の順で)

社会福祉協議会
駅前四丁目7-55
627-0114
清溪、忍頂寺、中条、茨木、大池、中津

天兆園
安威二丁目10-11
640-3960
安威、山手台、耳原、福井

常清の里
清水一丁目28-22
641-3164
豊川、郡山、彩都西

エルダー
庄二丁目7-38
631-5200
三島、太田、庄栄、西河原、東、白川

春日丘荘
南春日丘七丁目11-48
625-6575
郡、沢池、西、穂積、畑田、春日、春日丘

葦原
真砂二丁目16-15
636-8000
玉島、玉櫛、天王、東奈良、葦原、水尾

みんなで集まろう いばらきオレンジかふぇ

気軽に集える場所 いばらきオレンジかふぇ

 市では認知症に関する取組みを多数行っていますが、その一つに「いばらきオレンジかふぇ」があります。ここは、認知症の人やその疑いのある人だけでなく、その家族や地域の人、医療・介護の専門職の人なども、気軽に集まり、交流や情報交換をすることができる憩いの場所です。また交流以外にも、認知症の専門職に悩み事を相談することができます。

カフェに行ってみよう

 いばらきオレンジかふぇは市内に9か所(ラガールカフェは3月7日から)あります。各カフェが工夫をこらしたイベントを実施したり、オリジナルのドリンクや軽食などのメニューを提供したりしています。カフェごとに個性があって、気軽に集える場所になっていますので、近くのカフェに一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

みんながやさしいまちへ

 認知症は誰もがなりうる病気です。そして、その症状は人それぞれで、不安や悩みも異なります。家族や友人など、大切な人と一緒に、今後もこのまちで暮らしていくためにも、悩みや不安を抱え込まないでください。相談できる場所は茨木にはたくさんあります。まずは、いばらきオレンジかふぇに立ち寄ってみてはどうでしょう。

 認知症を正しく理解し、みんなで認知症にやさしいまちをめざしましょう。

いばらきオレンジかふぇ運営団体募集

 いばらきオレンジかふぇを運営したい、または同様の活動をしている団体は、高齢者支援課までご連絡ください。

実施日、ところ、費用(記載がない場合は無料)、問合先の順で記載しています。

1 ラガールカフェ

第1火曜日、午後1時30分〜3時、安威12、コーヒー200円、お菓子100円、茨木特別養護老人ホーム 電話648-1500

3月7日にオープンします。元気!いばらき体操などレクリエーションを行います。飲み物やお菓子は持込みもできます。

2 いっぷく 認知症カフェ

不定期、西福井四丁目4-22、認知症対応型通所介護いっぷく 電話643-5181

お茶会バザーや駄菓子屋などを実施しています。

3 子民家よってこ

木曜日、午後1時〜4時、耳原三丁目6、100円、市社会福祉協議会 電話627-0033

古民家を改修してつくられたカフェ。座敷席があり、ゆったりとくつろげます。

4 かふぇリーラ

不定期、見付山一丁目11-18、コーヒー100円、ケーキ付コーヒー300円、小規模多機能センターはぎ 電話631-8031

認知症の講座や茶話会などを実施しています。

5 アピスパーク

月末の水曜日、西駅前町13-25、NPO法人ボランティアネットコル 電話620-0909

お菓子やお茶が振舞われ、ハンドマッサージやスタッフによるマジックも行っています。

6 いこいのカフェ

毎月第2木曜日(祝日の場合は第1木曜日、8月、12月は休み)、主原町6-1、市社会福祉協議会 電話627-0033

全スタッフが認知症の介護経験者で、安心して相談できます。また、大正琴の演奏に合わせて合唱を行っています。

7 なかよしクラブ

不定期、午後2時〜3時30分、シニアプラザいばらき、シニアいきいき活動ポイント事務局 電話657-8819

認知症サポーターステップアップ講座の受講生が運営しています。みんなで軽い運動やミニゲームなどを行います。

8 cafeオレンジハウス

火曜日、第2土曜日、第4木曜日、東奈良一丁目5-5、500円、ヘルパーハウス茨木 電話636-9015

火曜日は茶話会とミニ相談会を実施し、その他は特別講師を招き、ロコモ体操や簡単な編み物など、さまざまなレクリエーションを実施しています。

9 ティータイムりんりん

火曜日・金曜日、午前8時〜午後2時、玉櫛一丁目2-11、ドリンク100円、モーニング(パン、手作りスープなど)150円、市社会福祉協議会 電話627-0033

お茶会や作品作りを実施し、さまざまな情報提供も行っています。

カフェ運営者インタビュー

いこいのカフェ 坂口義弘さん

 いばらきオレンジかふぇは単なるカフェではなく、認知症に関わる人のための憩いの場所です。

 認知症の当事者はもちろん、介護する家族もたいへんな思いをしています。そんな人たちが、少しでもつらい思いやストレスを発散する場所なのです。私が運営するいこいのカフェでは、安心して話してもらうため、市介護家族の会の認知症介護経験者がスタッフになっています。ほかのカフェでは、体験型のイベントを実施しているところもあります。利用者の選択肢が増えるように市内各所に多様なカフェができたらいいなと思っています。

利用者インタビュー

ティータイムりんりん利用者 梅原有子さん

 家の中にいると、話す相手がいないので、ついふさぎがちになってしまいます。でも、カフェに来るといろんな人とお話ができて、気分がとても明るくなります。カフェで知り合った人とも仲良くなり、カフェ以外の場所で会って、お話するようになりました。カフェを通じて、地域の人たちとのつながりが広がっていくのを実感しています。電話でもお話はできますが、定期的に集まって、みなさんの元気な顔を見ながらお互いの健康状態を確認し、お話をする場があるだけで、認知症の予防に役立っていると思います。