文化財めぐり
問合先、文化財資料館 電話634-3433
Vol.118
茨木とおし
茨木とおしは、江戸時代に茨木村で作られていた万石とおしのことをいいます。万石とおしは、千石とおしとも呼ばれた、江戸時代に発明された米や麦を選別する道具の一種です。万石という言葉には、万石ほどの大量の米を選別できるという意味がこめられています。発明される前は、細い竹ひごや金網を張った木枠を、縄でつって揺り動かす揺り板と呼ばれる道具を使って選別していましたが、万石とおしはそれよりはるかに能率が良く、急速に各地に広まりました。
上部の注ぎ口に選別したいものを入れ、斜めに固定した金網の上を滑らせて使います。粒の大きいものはそのまま金網を伝って落ち、小さいものは網目を通って別の容器に落下する仕組みになっています。例えば、稲を脱穀した籾を、籾殻と玄米に分ける作業を籾すりといいますが、当時の籾すりは精度が低く、何度も繰り返し行わなければなりませんでした。そのときに、万石とおしを使って、籾殻がとれた玄米ととれていない籾に分けたり、その分けた後の玄米から、質の悪い米や小石を除去して米の粒を揃えたりしました。
文化財資料館では、「茨木馬口引町稲扱屋細工」と墨で書かれた茨木とおしを所蔵しています。そのほか「茨木」の墨書があるものは、吹田、豊中、池田、箕面などの北摂や、枚方、兵庫県の西宮でも見つかっており、市域を超えて広い範囲で流通していたことがわかります。
文化財資料館では、来年1月11日〜3月20日に、「ちょっと昔のいばらき展」を開催します。
茨木とおしをはじめ、ちょっと昔の身近な道具や農具を展示しますので、ぜひお越しください。