市史編さん室だより
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其ノ37
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50歳代の死因が老衰!? 健忘症で亡くなった人も? 豊川村役場文書から
市町村役場に残る行政文書は、近現代の地域の歴史研究にとって非常に重要な史料です。茨木市への合併前の旧町村役場文書のうち、唯一残る豊川村役場文書は、市史編さん事業で多くの執筆者によって活用されました。その豊川村役場文書の中には、大正10年(1921年)から昭和25年(1950年)までに記録された、埋火葬に関する文書を綴った簿冊が35冊あります。そのうち戦前の25年間分について、調査・集計をすると、豊川村の住民の死亡平均年齢は、35.64歳。これは、当時一般的にも乳児の死亡率が非常に高かったことが原因です。そこで、6歳未満の乳幼児を除いた死亡平均年齢を算出してみると、53.04歳という結果が出ました。ここから、当時は「人生わずか50年」だったことがわかります。
では、どういう病気で亡くなったのか。死因の圧倒的な第1位は、老衰死です(下記)。現在では加齢による多臓器不全死のみを老衰死と扱いますが、当時は老齢者が死去した場合、ほかに死に至る病因があっても、ほとんどが老衰死とされたようです。豊川村の場合、老齢者だけでなく、56歳3か月という若さで老衰死とされた人もおり、ほかにも50歳代で老衰死として記録がある人はもう1人います。
豊川村の死因上位5位
(※各項目、死因、人数の順で)
老衰・老衰症・老衰病
241人
脳溢血・脳出血
133人
肺炎・急性肺炎
99人
肺結核
96人
胃がん
62人
※合併症などを含む
また、死亡診断書に記載された死因には、驚くべき病名も含まれています。口内炎や健忘症、ヒステリー、現在でいう認知症などが書かれていました。口内炎などは、口腔がんと考えられなくもありませんが、健忘症など、どう考えても死因になるはずのない病気も記載されていました。
市史編さん室が発行している「新修茨木市史年報」第14号には、この豊川村の埋火葬関係書類の詳細な報告を掲載しています。各図書館にもありますので、興味のある人はぜひご覧ください。