広報いばらき

文化財めぐり

問合先、文化財資料館 電話634-3433

Vol.115

古代の硯

 鉛筆やボールペンがない時代、文房具といえば、墨・紙・筆・硯でした。この4つの中でも、とりわけ硯は動物をかたどったものなど、さまざまな形状のものがあり、多くの文人に愛されてきました。

 日本で本格的に硯が用いられるようになったのは7世紀以降でした。それ以前の文字は、硯はおろか墨や筆も使わずに、須恵器などに刻んでいたようです。現代の硯はおもに石製やセラミック製ですが、初期の硯は、焼き物である陶器でした。市内では、郡遺跡、穂積廃寺、鮎川遺跡、宿久庄西遺跡、耳原遺跡と、さまざまな場所で平安時代のものと思われる硯が出土し、中でも古代の役所である郡家があったと考えられている郡周辺では数多く発見されています。また、鮎川遺跡で発見された中央に平らな円形部とその周りに溝がある円面硯は、市域で見つかったものの中で最もきれいな状態で残っています。この硯は円形部で墨をすり、周りの溝に墨汁をためて使います。

 文化財資料館では7月18日まで、「発掘された文字 市域出土の墨書土器・刻書土器・硯」を開催しています。硯だけでなく、墨で文字が書かれた土器である墨書土器も展示していますので、ぜひ一度足を運んでみてください。