特集3 私にできること
障害者差別解消法がスタートします
誰もが住み良い社会を実現するため、この4月から「障害者差別解消法」が施行されます。この法律を紹介しながら、普段の生活の中でできることは何かを考えます。
問合先 障害福祉課 電話620-1636
差別のない社会の実現へ
「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮」
「障害者差別解消法」は障害のある人もない人も、互いに人格と個性を認め合いながら共に生きる社会の実現をめざしたものです。その中では、障害者に対する「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮」について行政機関と民間企業が取り組むべきことが規定されています。
不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害があるという理由だけで、サービスの提供をしなかったり、特別な条件をつけたりすることをいいます。また合理的配慮とは、障害者から助けを求められたとき、できる範囲で対応をすることをいいます。障害者が困っているにもかかわらず、対応を全く行わないことは、差別にあたると定められています。
また、行政機関は職員対応要領を作成し、民間企業は国の対応指針を参考にして障害者に適切な対応をすることとされています。
一人ひとりの声に耳をかたむけて
「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮」は、市民と障害者が個人的な関係で接する場合は対象ではありません。ですが、障害者に対する差別は障害者と行政機関や民間企業との間だけにあるものではありません。差別をなくすためには、行政機関や民間企業だけでなく、すべての人がこの問題について考えなければなりません。
そのためには、まずは障害者が困っていること、求めていることを知ることが必要です。障害にはさまざまな種類や程度があり、障害者の生活環境もそれぞれ違うため、求めるものは人によって異なります。大切なのは一人ひとりの声に耳をかたむけ、その人を知ること。それが、差別をなくす第一歩になります。
「不当な差別的取扱い」ってどういうこと?
行政機関も民間企業も禁止
- スポーツクラブや習い事の教室などで、障害があることを理由に入会を断る。
- 聴覚障害者が筆談を求めても、時間がかかるからと筆談をしない。
- 車椅子を利用しているという理由で、入店を断る。
- 視覚障害者に書類への記入を求め、自筆でなければサービスを断る。
「合理的配慮」ってどういうこと?
行政機関は必ず、民間企業はできる限り取り組まなければならない
- 知的障害者や精神障害者に質問されたら、やさしい言葉で丁寧に繰り返し説明する。
- 交通機関に遅れが発生した際、音声だけでなく電光掲示板等を使い、聴覚障害者にも情報が届くようにする。
- 段差等で車椅子利用者が施設内を移動できない場合、サポートする。
- 視覚障害者に書類等を渡す際、内容を読み上げる。
行政機関 Interview
障害福祉課長 成田康治
高い水準の対応へ
職員対応要領(市ホームページで閲覧可)や対応指針は、不当な差別的取扱いとはどういうことか、合理的配慮とはどうすれば良いのかなどを示すものです。市の職員対応要領を作成する際に、高い水準の対応をめざして、多くの障害者から話を聴きました。その結果、職員対応要領にさまざまな状況の対応の仕方を、具体的に盛り込むことができました。
障害者への差別がなく、誰もが尊重し合える社会の実現には、市だけでなく市民の理解と協力が何より不可欠です。そのためにはまず市が率先して、差別をなくすための取組みを行い、それをどんどん地域に広めていかなければなりません。そして、市と地域が連携を深め、啓発活動などさまざまな取組みを共に進めていきたいと考えています。
民間企業 Interview
日東電工ひまわり株式会社 代表取締役 石井明彦さん
それぞれに合った仕事が必ずある
弊社は日東電工の特例子会社です。障害者と高齢者が協働し、仕事を通じて社会に貢献するために平成12年(2000年)に設立しました。主に名刺やカタログ等の印刷や清掃、緑化の業務に取り組んでいます。
これまでの経験から、障害者にはそれぞれに合った仕事が必ずあります。現在、複数の業務の中から自分に向いている仕事を見つけてもらっています。3月に人財育成と研究施設を融合させた「inovas(イノヴァス)」を茨木に開設しました。その中で今後、多くの新たな業務が発生してくると考えられ、障害者の業務の幅をさらに拡大していこうと考えています。
障害者差別解消法が施行され、民間企業もより柔軟な対応が求められるので、今後も障害者のための取組みを推進していきます。
何ができるか考えてみませんか
バリアはさまざま
市内では公共施設や大型商業施設などを中心にバリアフリー化が大きく進んでいます。けれども、まち全体をみると、さまざまなバリア(障害がある人の障壁となるもの)がまだ多く存在しています。例えば難しい漢字や言葉ばかりの書類は知的障害者や精神障害者にとってはバリアです。しかし、全てではありませんが、そうしたバリアは少しの気づかいで無くすことができます。
誰にでもできることがある
困っている人を見かけたとき、「どうしたらいいか分からない」「私にできることなんてあるのかな」と思い、サポートすることをためらってしまうこともあるかもしれません。ですがそれこそが人の心の中にあるバリアです。困っているかどうか分からないときでも、一度声をかけてみてください。その人の助けになることができるかもしれません。「私にもできることがある」と分かれば、心のバリアがなくなって、誰もが暮らしやすいまちになっていきます。
少しの気づかいに感謝
肢体不自由 竹澤嘉則さん(50歳)
私は身体を上手に動かすことができません。ですが、電動車椅子があると、近所なら一人で出歩くことができます。外に出てたくさんの人と交流したり、大阪や京都の中心部に出かけたりすることが好きです。
病院にリハビリに行くときなど、一人で出歩いているときに、段差やドア、エレベーターなどで立ち往生してしまうことがよくあります。そんなとき、周りにいる人が車椅子を押してくれたり、ドアを開けてくれたりとサポートをしてくれます。そういった少しの気づかいがとてもありがたいです。いつも精一杯感謝の気持ちを伝えることを心がけていて、サポートしてくれる人が気持ち良くサポートできればなと思っています。
目で見てわかるとありがたい
聴覚障害 森川 茜さん(39歳)
私は生まれつき耳が聞こえません。補聴器をつけて、大きな音や笑い声などの音の方向が分かる程度にしか聞こえません。今は障害者団体に勤めていて、事務作業の傍ら、同じ聴覚に障害のある人の悩みを聴くこともあります。聴覚障害は一目見ただけでは、障害があることが気付かれにくい障害です。道で自転車のベルや車のクラクションを鳴らされても聞こえませんので、そんな場面に出くわしたときは、「この人は耳が聞こえないのかもしれない」とほんの少し考えていただけるとありがたいです。また、大きな声で話されても聞こえないので、身振りや筆談、携帯電話のメール画面を使うなど、目で見てわかるように説明してもらえるとありがたいです。
声をかけてもらえると助かる
視覚障害 髙橋あい子さん(66歳)
私は生まれたときから目が見えにくく、色は少し分りますが、文字を読むことができません。盲学校を卒業してからマッサージ師をしていました。今でもときどき昔のお客さんが来てくれます。歌やお花、お琴が趣味で、自分で着物を着付けて、よく出かけています。
相手の姿が見えない視覚障害者にとって、周りに助けを求めることは難しいことです。だから例えば、信号が変わったのかどうかが分かりにくいとき、「青になりましたよ」と声をかけてもらえると、とても助かります。知らない人に話しかけるのは勇気がいることだと思いますが、ためらわず声をかけてほしいです。
やさしい言葉だとうれしい
知的障害 井出 ジャンス ハナリアさん(25歳)
生まれたときはフィリピンに住んでいて、中学生の頃日本に移り住みました。今は介護施設で主に清掃の仕事をしています。施設のスタッフや利用者に仕事ぶりをほめられるととてもうれしいです。仕事の後、家に帰って飼っている犬の散歩に行くのが日課です。
私は同時にものを考えたり、計算をするのが苦手です。日本語を覚えるのも大変でした。一人で買い物に行ったとき、レジでどのお金をいくら出せばいいのか分からなくなることがあります。そんなときに店員さんや後ろに並んでいる人が教えてくれることがあって、助かります。難しい言葉は分からないことがあるので、できるだけやさしい言葉で話してくれるとうれしいです。