広報いばらき

市史編さん室だより

費用の記載がない場合は参加無料。定員・申込などの記載がない場合は事前申込不要または当日直接会場へ。

其ノ34

問合先、市史編さん室 電話622-2184

下津氏と長谷川氏陣屋

 安威川の山科橋を西に下ったところ、星見町児童遊園の敷地内に、地蔵院というお堂があります。このお堂は、江戸時代に二階堂村(星見町)、十一村(玉島二丁目)、平田村、野々宮村を領知していた旗本長谷川氏の建てたものだといわれています。もとはここより南の、現在は安威川の堤防敷になっている場所にありましたが、昭和10年(1935年)の水害の後に現在の場所に移転したようです。

 また、同じ敷地に「下津氏始祖之墓」と記された石碑が残されています。これはいわゆる墓ではなく、文化6年(1809年)に下津氏が江戸に移り住むのを機に先祖の供養のためその事績を石碑に刻んだもので、下津武幸が建立しました。この碑文によれば、下津氏は伊勢の国司北畠氏の一族で、戦国末期に長谷川氏に仕えたそうです。しばらくは伊勢で、主君のために奔走していましたが、江戸時代の初め頃、長谷川氏の代官としてこの地に赴任したようです。その後下津氏は150年余り、長谷川氏の陣屋(役所が置かれている屋敷)で代官をしていたことになります。

 長谷川氏の陣屋は、領地・領民を天皇に返す版籍奉還時に廃止になり、厩や家来の住居などが組み込まれた門である門屋は民間に払い下げられました(『新修茨木市史第5巻史料編近世』)。なお、その門屋は現在も、個人宅の門として活用されています。

 長谷川氏陣屋は、二階堂村にあったことから「二階堂役所」とも呼ばれ、跡地は今では民家が建ち並んでいます。