特集 森にこだまする「おかえりなさい!」「いってらっしゃい!」
今年で40周年を迎える青少年野外活動センター。
レジャーを楽しむだけのキャンプ場ではなく子どもたちがさまざまな体験を通して学び成長できる場所です。
今回は、野外活動が子どもに与える変化を切り口に、同センターを紹介します。
問合先 青少年課 電話622-5180
受け継がれる キャンプによる人づくり・まちづくり
キャンプカウンセラーOB会 代表 松本 武さん
私たち歴代のキャンプカウンセラーは「キャンプで人づくり・まちづくりを行う」という考えを受け継いできました。小学生・中学生、高校生のときにキャンプに参加した子どもが大学生でキャンプカウンセラーとしてキャンプ場に帰ってくる。キャンプを通して、「人のために」という奉仕の精神が自然に身に付くので、卒業後も多くのキャンプカウンセラーOBが地域のボランティア活動に参加して、まちづくりに関わっています。そして、現在はその子どもがまたキャンプ場に来ています。キャンプを通してできた人のサイクルが、市の活力になっていると思います。だからこそ、40年間も続いてきたのだと思いますし、今後も、続いていくと思います。
キャンプによる 人づくり・まちづくりサイクル
社会人
地域のボランティア活動
小学生・中学生、高校生
こども会キャンプ、中学生・高校生リーダーキャンプ等参加
大学生
キャンプカウンセラー
40年も続いているキャンプ場
- 昭和43~47年
- 忍頂寺キャンプ
- 昭和50年
- 青少年野外活動センター竣工
- 平成17年
- (公社)日本キャンプ協会より「キャンピングアワード」受賞
- 平成26年
- ユニバーサルキャンプエリアオープン
キャンプ場は学びの場
市の中心部から車で約40分、脇に田んぼや畑が広がる曲がりくねった山道を登った先に青少年野外活動センターはあります。同センターは、子どもが自然と親しみながら楽しい集団生活を送り、たくましい実践力をつちかう野外教育施設です。ここでは、キャンプについてのアドバイスやお手伝いをする大学生のキャンプカウンセラーと専門の職員が、利用者のサポートを行っています。
昭和50年(1975年)に銭原に開設する以前は、忍頂寺小学校の校庭に仮設キャンプ場を設営していましたが、「子どもたちのため、このまちにも常設のキャンプ場を」という市民の声に応えて建設しました。
野外活動に適した環境
同センターは、標高500メートルの場所にある、総面積38万平方メートルの豊かな自然に囲まれたキャンプ場です。市街地よりも気温が4度〜5度低く、夏の暑い時期でも過ごしやすい環境です。また、テントやロッジには電気を通さず、夜はランタンの明かりで過ごすなど、できる限り自然を感じられるような環境にしています。
また、各キャンプ場のテント・ロッジには、自然にゆかりのある名前がついており、そこに宿泊した子どもが自然に興味を持てるような工夫をしています。例えば、第三キャンプ場のテントには星の名前をつけています。宿泊したテントの名前と同じ星座を実際の星空で発見したときは感動もひとしおです。
では、そのような活動を通じて子どもはどのようなことを学んでいくのでしょうか。次は野外活動と子どもの成長の関わりについて紹介します。
キャンプで成長する
Interview
桃山学院大学社会学部教授・府キャンプ協会副会長
石田易司さん
野外活動を通して子どもはどう成長するのでしょうか。
府キャンプ協会副会長を務める桃山学院大学社会学部教授の石田易司さんにお話を聞きました。
非日常へ飛び込む
野外活動と聞いて皆さんはどんなことをイメージしますか。どちらかというと、子どもが楽しく遊んでいるだけのように思うかもしれません。しかし、野外活動体験は、子どもたちが学び成長できる絶好の機会です。国も、子どもの体験活動の教育的効果に注目し、今後、推進していこうとしています。
「人は思いもよらない経験をすることで成長することができます。普段の生活ではそのような機会は少ないですが、自然という非日常の中にあるキャンプ場に行けば子どもが成長するきっかけがたくさんあります」と話す石田さん。石田さんはキャンプ場職員だった経歴を持つキャンプの専門家です。
石田さんは、子どもが成長するには、全く新しいメンバーの中に入る必要があると続けます。
「子どもの成長には、家族や友達など日常の集団から離れて行う体験が必要です。キャンプでは、初対面のメンバーで活動するため新しい人間関係を作ることができます。また、野外活動では多くの子どもが普段できない体験をするので得意不得意の差が少なく、みんなが同じスタートラインに立って活動を行うことができます」。
変われる仕掛け
石田さんは、市の青少年野外活動センターのキャンプには子どもが変われる、変わろうとする仕掛けが備わっていると話します。
「その仕掛けとは、自然の中でキャンプカウンセラーに支えられながら、初めて出会うメンバーらと相談・協力して、自分たちの手で達成するプログラムが組まれていることです。例えば、市で実施されている小学6年生対象のジュニアリーダー研修会や中学1年生対象の中学生リーダーキャンプがそれに該当します。子どもたちはこれらのキャンプを通して、体験中だけでなく、その後の日常生活にも変化が出るほどの成長をすることができます」(ケース(1))。
キャンプ場でお互いを呼び合う「キャンプネーム」も普段とは違う新しい自分になれるきっかけになるなど同センターのキャンプには変われる仕掛けがたくさんあります。
キャンプカウンセラー自身も成長
同センターで成長するのはキャンプに参加した子どもだけではありません。大学生のキャンプカウンセラーも子どもたちの成長をそばで見守りながら成長していると石田さんは話します。
「キャンプカウンセラーになることで、サービスする側になります。すると、人に合わせる力、人のことを配慮する力が身に付きます。茨木市はほかの自治体のキャンプ場に比べ大学4年間を継続して活動し続けている人の割合が圧倒的に高いと思います。彼らはキャンプカウンセラーの活動を通して自分が成長しているという自覚があるから続けているのでしょう」(ケース(2))。
キャンプをする子どもたちも、それを支えるキャンプカウンセラーも野外活動を通して成長します。次のページでは市が実施するキャンプを紹介します。
ケース(1)キャンプ参加経験者
宮下由可子さん
宮下あづみさん
行って楽しく、親も安心なキャンプ場
宮下あづみさんは3歳のときに初めて青少年野外活動センターでキャンプに参加し、それからほぼ毎年のように訪れています。「母に連れて行ってもらったキャンプで知らない人と出会えたのがすごく楽しかったです」と当時を思い出すあづみさん。
母親の由可子さんも、同センターの魅力を話します。「キャンプカウンセラーが、子どもたちの仲間づくりのきっかけを作ってくれるので、すぐにほかの参加者と仲良くなれるようです。子どもたちにとって、キャンプカウンセラーは心強い存在だと思います。センターは何かあったらすぐ行ける距離にありますし、参加費が安いので親としては助かります」。
成長の兆し
あづみさんの普段の生活に変化が起こったのは、小学6年生のときです。参加したジュニアリーダー研修会を終えた頃からあづみさんは時間管理が上手くなり、考える力、周りを見る力が付いたそうです。「同研修会では班のことを考え、自分たちで時間を考えて活動する必要がありました。その力が自然に付いたのだと思います」とあづみさんは振り返ります。
中学3年生になった今でも、キャンプで身に付いた、周りに配慮する力や効率の良い段取りは、部活動や進路について考えるときに役に立っているそうです。「これからもセンターのキャンプには行きたいと思います。大学生になったら憧れのキャンプカウンセラーになりたいです」と今後の抱負を語ってくれました。
ケース(2)現役キャンプカウンセラー
鹿田優美さん
キャンプネーム:メロディー
きっかけは楽しい思い出
鹿田優美さんは今年で活動4年目を迎えた現役キャンプカウンセラーです。小学6年生で初めて青少年野外活動センターでキャンプを経験しました。「すごく楽しくて、最後にみんなと別れるのが寂しくて号泣してしまいました」と当時を振り返ります。その後、高校卒業前に学校で配られたキャンプカウンセラーの募集チラシを目にし、「楽しかったあのキャンプ場だと思い応募しました」。
子どもの成長がやりがい
鹿田さんがやりがいを感じるのは子どもがキャンプを通して成長した姿を見たときです。「ある子どもが、みんなで作業している中、自分の興味があることだけしか取り組んでいませんでした。私はその子と2人でじっくりと語り合いました。次の日、その子が自分の仕事がなくなると、何をしたらいいか私に聞いてきたのです。さらに、今度は自分から仕事を探しだしました。その姿はまるで別人のようで、その子がキャンプを通して大きく変わったことが嬉しかったです」。
自分の成長も実感
さらに、鹿田さんは自身の成長についても語ります。「活動を通して私も変わっていきました。以前は自分中心に物事を考えていましたが、子どもたちがどう感じているかくみ取ることを心がけるようになりました。今では相手の立場などを考え、周りを見ることができているように思います。また、参加してくれる子どもたちや保護者など、たくさんの人に日々支えられて活動できているのだと感謝の気持ちを持つようになりました」と笑顔で語りました。
キャンプをしよう
さまざまな野外活動体験
青少年野外活動センターでは、子どもを中心に幅広い年齢の市民を対象としたキャンプを実施しています。「キャンプフェスティバル」や「高校生ボランティアキャンプ」、「トムソーヤキャンプ」など種類もさまざま。開設40周年を迎える今年は、子どもの体験活動の機会をより充実させるため、今まで対象ではなかった学年にも新たなキャンプを実施します。
「おかえりなさい!」「いってらっしゃい!」
キャンプカウンセラーは子どもたちがキャンプ場を退所する際、「また会いましょう」という意味を込めて「いってらっしゃい」と声をかけます。そして、次に来たときには「おかえりなさい」と声をかけます。
皆さんの中には、「何度行っても同じでは」と思う人もいるかもしれません。確かに場所は同じですが、参加するメンバーや訪れる時期が違えば、そのキャンプは今までのものとは全く別物になります。前回とはできること、見えるものが違ってくるかもしれません。実際、多くの利用者がリピーターとなって、別のキャンプに参加しています。
子どもに日常ではできない体験をさせたいと思った皆さん、野外活動に興味を持った皆さん、ぜひ同センターを利用してみてください。今より少し成長した子どもや自分に出会えるかもしれません。
誰でも参加できる 家族で気軽に野外活動体験
キャンプフェスティバル
初めての飯ごう炊さん、美味しそうなご飯が炊けました
キャンプフェスティバル参加者
子どもが3歳になり、キャンプデビューをさせたいと思い、来所しました。キャンプカウンセラーが火おこしのときについていてくれたので、安心して子どもと一緒に調理できました。初めての野外料理に子どもは興味津々でした。
トムソーヤキャンプ参加者
知らない人ばかりで初めは緊張したけど、すぐにみんなと仲良くなれました。森の中で遊んだり、畑で苗を植えたり、普段できないことができてとても楽しかったです。今から夏のキャンプが待ち遠しいです。
高校生対象 ボランティアの楽しさとやりがいを実感
高校生ボランティアキャンプ
火おこし大成功♪ 頑張ってくれた子どもにも感謝!!
この日は朝から雨。利用者のために雨よけテントを設営
火おこし体験の道具を準備中
高校生ボランティアキャンプ参加者
ボランティア活動はやりがいがあって、充実した2日間でした。このキャンプを通して人のために何かしたいという思いが強まりました。来年はキャンプカウンセラーになりたいと思います。
小学4年生対象 同学年の新しい友達と思い出作り
トムソーヤキャンプ
ドキドキの初対面。キャンプカウンセラーがみんなの緊張をほぐします
サツマイモの苗植えにみんなで挑戦
青少年野外活動センター 開設40周年記念キャンプ
小学校低学年のキャンプデビューに 親子体験ワクワクキャンプ
とき、【夏コース】8月15日(土曜日)〜16日(日曜日)(1泊2日)、【秋コース】9月20日(日曜日)〜21日(祝日)(1泊2日)、ところ、青少年野外活動センター、対象、市内在住の小学1〜3年生と保護者、定員、各コース先着50人、内容、かまどを使ったご飯づくり、森の探検や自然観察など親子で楽しみながら体験、費用、1人3,500円、申込、6月8日、午前9時から、電話で青少年課 電話622-5180
小学6年生・中学1年生で長期キャンプ体験を
ホップステップキャンプ
とき、8月19日(水曜日)〜22日(土曜日)(3泊4日)、ところ、青少年野外活動センター、対象、市内在住の小学6年生・中学1年生、定員、各学年先着50人、内容、キャンプカウンセラーと一緒にグループ活動、野外料理やテント泊など森の中での生活にチャレンジ、費用、5,000円、申込、6月15日、午前9時から、電話で青少年課 電話622-5180
青少年野外活動センター施設利用のご案内
交通
阪急バス81忍頂寺線余野行に乗り、「銭原」バス停下車徒歩20分
利用料
無料。ただし市外在住者は有料(詳細はお問い合わせください)
利用期間
【日帰り】毎年3月20日〜11月30日
【宿 泊】毎年5月1日〜9月30日
申込
【市民が半数以上の団体等】
使用日の3か月前から14日前まで
【市外在住者が半数を超える団体等】
使用日の2か月前から14日前まで
ただし、7月・8月の受付開始日については別に定めます(詳細はお問い合わせください)。
いずれも申込は電話で、青少年課 電話622-5180(7月18日〜9月14日は青少年野外活動センター 電話649-2351)