広報いばらき

文化財めぐり

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Vol.106 茨木の名泉の一つ「山ノ井の清水」

 茨木に住む人は、昔から安威川・茨木川・勝尾寺川などから、豊かな水の恵みをもらって暮らしてきました。しかし、水の恵みは川からだけではありません。市内には「疣水神社の御神水」や茨木神社の境内にある「黒井の清水」など、美しく澄んだ井戸水も豊富にあり、「茨木の名泉」と呼ばれています。

 名泉の一つ「山ノ井の清水」は、現在の清水の辺りにありました。その清水という地名は、「山ノ井の清水」が広く村の水田を潤したことに由来すると伝えられています。また、別名「月の清水」や「桃ノ井」とも呼ばれています。清和上皇(850年〜880年)が勝尾寺を訪れた際、近くの寺院に宿泊し、月見の宴を催したという伝承が残っています。その折に、村民たちが寺院の前にあった「山ノ井の清水」に桃の花を挿したところ、上皇は大変気に入り、その井戸を「月の清水」と命名したとされています。後の人は、この話を聞き「桃ノ井」とも呼ぶようになりました。

 現在、山ノ井という井戸は存在しませんが、清水二丁目にある春日神社の石段を降りた道の傍らに「月の清水跡」と刻まれた石碑が残されています。清水の辺りは今でも自然豊かで、田園などの美しい景色が広がっています。この景色もきれいな水があってのことかもしれませんね。