広報いばらき

特集1 理科って楽しい!!

問合先 教育センター 電話626-4400

気づいて! 理科の楽しさ

子どもたちの「理科離れ」

 近年、日本を含む先進国では、子どもたちの間で理科に対する興味・関心が低下する、いわゆる「理科離れ」が問題になっています。平成23年に実施された国際数学・理科教育動向調査では、世界各国の小・中学生を対象に、理科の勉強に対しての興味・自信についてのアンケートや習熟度の調査が行われました。その結果、興味・自信については、国際平均や他の先進国と比較して、日本の子どもたちに理科離れの傾向が強くみられる内容になっています。

国際数学・理科教育動向調査(平成23年)

「わたしは理科がすきだ」の質問に「強くそう思う」と回答した割合

(※各項目、国/地域、小学4年生、中学2年生の順で。)

日本
52.0%
18.2%

オーストラリア
62.1%
27.5%

イタリア
56.9%
27.9%

アメリカ
61.7%
36.4%

国際平均値
63.7%
42.5%

理科への自信の程度の質問に「理科に自信がない」と回答した割合

(※各項目、国/地域、小学4年生、中学2年生の順で。)

日本
34%
69%

オーストラリア
22%
35%

イタリア
17%
26%

アメリカ
20%
27%

国際平均値
21%
31%

理科離れの原因

 では、なぜ理科離れが起こっているのでしょう。ゲームの発達や遊び場の環境の変化によって、子どもたちが外に出て遊ぶ機会が減ったことや、受験競争の激化によって、本来理科が持つ面白さと受験科目としての理科との間に差が出てきていること、また、疑問に感じたことを自分で調べなくても、テレビやインターネットで簡単に情報が手に入るようになったことなど、さまざまな理由が挙げられます。そして、「理科は難しい」というイメージが定着し、子どもたちが理科に対する自信を持てずにいると考えられます。

なぜ理科は難しい?

 一方で、習熟度に関しては、調査に参加した国(小学生=50か国、中学生=42か国)の中で小・中学生ともに第4位と、日本の子どもたちは国際的に見ても高い水準を示しています。つまり、テストの結果は良いのに、理科に対して苦手意識を持つ子どもたちが多い傾向にあることが見て取れるのです。理科を難しいと感じる理由として、よく、「覚えなければいけないことが多い」、「普段の生活や将来の仕事に役に立つと思えない」などが挙がります。はたして、本当にそうでしょうか?

 本市在住の女性化学者である、相馬芳枝さんに理科の魅力について話を聞きました。

理科との出会いはすぐ近くにある

きっかけは日常の中に

 私は、生まれた家が農家だったので、子どもの頃から麦刈りの手伝いなどをしていました。あたりまえの日常の中で土や虫を触ったり、天気を気にしたりしていたんですね。でもその頃は、理科の勉強をしているという意識はなかったんです。高校生の頃に医学に興味を持ち、大学で化学の魅力にのめりこみました。私は素晴らしい周りの人に恵まれてここまで化学に関わってこられましたが、そのきっかけは子どもの頃の何気ない体験だったのかもしれません。

理科は身近なもの

 私たちの身の周りをよくよく見回すと、理科に関係する物で溢れています。私たちが着ている服に使われている化学繊維や、普段乗っている車、キッチンで使う冷蔵庫や電子レンジなど、生活に関わるほとんど全ての物に理科の技術が使われています。ただ、私たちの多くはそれをあまり意識することなく、毎日を過ごしているのです。理科が生活や仕事の役に立たないというのは全くの間違いです。入学試験や入社試験に出てくる知識だけが、役に立つ知識ということではありません。

あちこちにある「理科への扉」

 理科の面白さは、教科書の中だけにとどまりません。「こんな小さな虫はいったい何を食べているんだろう」とか、「使い捨てカイロは、なぜ振っただけでこんなに温かくなるんだろう」など、子どもの頃にふと、疑問に思ったことはありませんか。子どもたちが、純粋な感性によって何気なく抱く小さな疑問の数々は、その一つ一つが理科の世界につながっている扉です。大人は、そんな疑問をばかばかしいと笑うのではなく、子どもがその扉を開くのをそっと手伝ってあげることが大切なのです。

大人も一緒に楽しもう

 子どもが理科を好きになるために効果的なこと、それは「大人も子どもと一緒に楽しむ」ということです。子どもは、勉強として押し付けられるとやる気が出なくなりがちです。家族でキャンプや釣りに行ったり、夜空の星がきれいな場所に旅行に行ったりと、一緒になって楽しむことの中に、興味を持つものが見つかるかもしれません。夏休みには、親子で一緒に体験できるようなイベントもたくさんあります(「子どもイベント」ページ参照)。勉強だと難しく考えすぎず、気軽にそういったイベントに参加するのも良いきっかけです。親子で一緒に始めてみたら、子どもより親の方が熱中してしまう、なんてこともあるかもしれません。

打ち込み、惚れ込む

 理科を好きになるということは、まずは生物や植物、天気や星座など身の回りで興味を持って打ち込める何かを見つけること。そして、段々とそれに没頭して惚れ込んでいくことです。始めるのに早すぎるとか遅すぎるということはありませんし、まして男性・女性なんて関係ありません。色々と覚えるのは難しく感じるかもしれませんが、覚えることが多いのは、理科だけでなくほかの教科でも同じこと。惚れ込んだものについて覚えることは、驚くほど苦労なくできるものです。ぜひ、理科の魅力に気づいて、好きになってください。

相馬芳枝さん

 産業技術総合研究所名誉リサーチャー。化学反応を助ける触媒化学や地球温暖化防止のための二酸化炭素再資源化を研究。
 平成23年(2011年)、国際学術機関が世界で優れた業績をあげた女性化学者23人を顕彰する「女性化学賞」を日本人で唯一受賞。同年本市市民栄誉賞贈呈。

がんばる! 理科キッズ

部活動やクラブ活動

 学校の中で理科を学ぶ機会は、授業以外にもあります。現在、市内には小学校で10校、中学校で4校、理科や科学に関する部活動・クラブ活動が行われています。そこでは、普段の授業ではできないような実験をしたり、学校の外に出て教材となる動植物の採集に行ったりと、限られた活動時間の中でも、児童・生徒たちの意欲的な取組みが行われています。

創部2年目の科学部

 太田中学校では、昨年度に科学部が発足しました。昨年の部員は、当時新入生の2人だけ。とくに生物に興味があるという2人の理科キッズは、最初は右も左も分からない中、顧問の先生の力を借りて活動をスタートさせました。

 学校のすぐ近くを流れる安威川には、さまざまな水生生物が生息し、多くの植物が生えています。また、川の流れや水質、流域の石や砂の形など、理科教材の宝庫と言っても良い環境が整っています。活動の内容をまとめた「科学部通信」は、昨年度1年間に4号発行し、校内に掲示しました。今年度は、新たに1年生の新入部員6人が加わり、活動の幅を広げています。

人気の理科クラブ

 沢池小学校で毎月1回行われるクラブ活動の中で、理科クラブは希望しても必ず入れるわけではないほどの人気クラブです。人気の理由はやはり楽しい実験。とは言え、実験器具の中には火を使うものなど、取扱いに注意が必要なものもあります。担当の先生の指示に従う子どもたちは真剣です。4年生から6年生までが協力して実験を行い、実験がうまくいったときは、班ごとに分かれたテーブルから歓声が上がります。また、思ったような結果にならなかったときには、なぜうまくいかなかったのか、何を改善すればよいかなどを考えることも活動の大切な一部分です。

応援するちから

一歩進んだ理科の楽しさを提供

 理科を好きになって、興味が高まると、もっと色々な実験や経験をしたいと思うようになるものです。小学3~6年生を対象に毎月開催している「第2土曜科学教室」では、学校の授業では取り扱わないような変わった実験にも取り組んでいます。昨年度に行ったテーマの中には「音の謎にせまる!」、「うそ発見器を作ろう」「紫外線を利用して見えないものを見つけてみよう」など、理科が得意でない子どもでも興味をひかれるような内容がたくさんあります。教室は毎月大人気で、繰り返し参加する子どもも少なくありません。

理科キッズに活躍の場を

 また、理科好きの子どもたちには、スポーツや音楽に比べて普段の頑張りの成果を発表したり、評価を受けたりする場が少ないことも問題です。市では昨年度、夏休みの自由研究の成果をまとめあげ、たくさんの人に見てもらう取組みとして、市科学賞を創設しました。昨年度は市内の小・中学生から256点もの力作が寄せられ、その中から優秀作を表彰しました。こうした活躍の場で得た充実感や達成感は、子どもたちにとって大きな力になり、その先の取組みへの意欲向上にもつながります。

「相馬芳枝科学賞」へ

 今年度からは、科学賞をさらに盛り上げるべく「相馬芳枝科学賞」として、装いも新たに実施します。この科学賞では、テーマの決定からはじまり、それをどのようにまとめていくか、さらには研究の成果をわかりやすく伝えるプレゼンテーションの部分までを自分で考えます。そこでは、小・中学生と言えども1人の立派な研究者です。理科が大好きな子どもはもちろん、理科の自由研究をしたことがない子どもたちも、この賞を夏の目標としてチャレンジしてみてください。

 相馬さんは「自分で研究をすることもそうですが、ほかのみんなの研究を目にすることも、新たなアイデアや発見のヒントになります。この取組みを通じて、子どもたちの理科への興味が高まっていってほしいですね」と、期待を寄せています。

未来への期待

 理科の楽しさに気づいて、熱心に取り組んでいく子どもが増えれば、その子にとっての可能性が広がるのはもちろん、将来日本や世界の役に立つような発見・発明につながるかもしれません。いずれ、本市出身の子どもの中から、ノーベル賞を受賞する科学者が出るかも…なんて期待が広がっていきます。

 今まで理科は苦手だと思っていた子どもたち。勉強は教科書でするものだと決めつけて、家庭で理科の話をしてこなかったお父さんやお母さん。ちょっと周りに目を向けてみませんか。そこにある理科の世界はとても楽しいものですから。

好奇心いっぱいの子どもたちを待っています!

相馬芳枝科学賞 ~自由研究の募集~

対象
市内在住・在学の小・中学生
作品について
以下の要件を満たすこと
・画用紙・模造紙などに写真、絵、グラフなどをまとめて展示できる形式にしたもの
・研究の動機、実験・観察内容と結果、結果から分かったことを必ず記述すること
審査および作品の展示
選考の上、「相馬賞(最優秀賞)」、「優秀賞」を決定。11月8日に表彰式、8日・9日には教育センターに作品を展示。
備考
詳細は教育センターホームページ参照
申込
9月5日までに、学校を通じて提出、または直接教育センター 電話626-4400(提出作品は後日返却)

第2土曜科学教室

とき、毎月第2土曜日(8月を除く)、午前10時~11時30分、ところ、クリエイトセンター科学実験室、対象、市内在住の小学3~6年生、定員、先着35人、内容、簡単な実験や観察、理科工作など、備考、内容によって材料や道具の持参が必要な場合あり、申込、毎月、平日初日から実施日前日までに、電話で教育センター 電話626-4400

子どもと保護者の科学教室~モンキーハンティングに挑戦~

とき、7月27日(日曜日)、午前10時~11時30分、ところ、クリエイトセンター301号室、対象、市内在住の小学3~6年生とその保護者、定員、40組(多数の場合抽選)、申込、7月10日(消印有効)までに、往復ハガキ(住所・児童と保護者の氏名・学校名・学年・電話番号を記入)で、〒567-0888 駅前四丁目6-16、教育センター 電話626-4400

モンキーハンティングって?

 猟師が木にぶら下がっているサルを正確に狙って鉄砲を撃ちます。「バーン」と撃った瞬間サルが手を離して落ちたとすると…鉄砲の弾はサルに当たる?当たらない?

 結果は実験をしてのお楽しみ!!