広報いばらき

特集 いま、防災を考える

 平成23年3月11日に発生した東日本大震災から約3年。昨年9月には、台風18号により市内でも土砂崩れや倒木などの被害がありました。大きな災害が起こったとき、自分や家族の身を守ることができるのか…。今月の特集では、あらためて茨木の防災の現状を見つめ、今後に必要なことを考えます。

問合先 危機管理課 電話620-1617

高まる関心 進む取組み

防災に対する関心の現状

 東日本大震災は、過去に例を見ないほどの大きな被害を与え、自然がもたらす計り知れない力を見せつけました。それは同時に多くの人にとって、防災を考えるきっかけとなりました。本市でも、防災の出前講座の実施回数が、震災の前後で約3倍に増えており、市民の関心の高まりがわかります。

 昨年の3月に実施した「茨木市のまちづくりに関するアンケート」(下記)から、市民の防災に対する関心の現状を見ることができます。道路の整備や物資の備蓄、避難場所の充実といったハード面の整備はもちろんのこと、情報伝達手段の整備や避難場所の周知など、災害が起こった時や、起こる前の情報に対する関心も高いことが読み取れます。

茨木市のまちづくりに関するアンケート

最も重要だと思う防災に関する取組み

(上位回答を抜粋、複数回答可)

進む行政の取組みと課題

 市では、建築物の耐震化のほか、備蓄の強化や、緊急情報を伝える防災行政無線スピーカーの配備などを進めています。(下記参照)

 一方で、このような行政による防災・減災の取組みの効果を最大限に発揮するためには、同時に地域や各家庭における取組みを推進していくことが不可欠です。安全な避難所や、災害を知らせる有効な手段があったとしても、その存在を知らなかったり、避難をするための準備ができていなかったりすると役に立ちません。

 では、地域や家庭での取組みの状況はどうなっているのか。そして今後必要なことは何なのか。次では、地域や家庭の「防災の姿」を紹介していきます。

ここまで進んでいる!市の防災施策

建築物の耐震化を推進

 今年度、すべての市立小・中学校の耐震化を完了。耐震改修促進計画により平成27年度における市内の建築物の耐震化率90%という目標を達成するため、建築物の耐震化に対する補助を実施している。

備蓄の強化

 9か所の公園や運動広場に飲料水確保のための耐震性緊急貯水槽を設置。市内10か所の拠点備蓄倉庫には食料品や医薬品・毛布などを備蓄し、その他の小・中学校には食料品等を備蓄している。

防災行政無線スピーカーの配備

 緊急地震速報など、国からの発信により、市の防災行政無線などを自動起動させ、大切な情報を瞬時に伝達。また、避難勧告等の伝達にも活用。今年度に36か所、来年度はさらに39か所に設置予定。

地域・家庭 教訓を経て動き始める

地域で考える

大池地区自主防災会会長 宮部 清さん

地域防災の要「自主防災組織」

 小学校区単位などで結成されている自主防災組織の活動は、地域防災の要といえる存在です。市内では現在、28の自主防災組織が活動しており、それぞれの地域での防災訓練や、災害時の活動の先頭に立つ、防災リーダーの育成などに取り組んでいます。

動けなければ意味がない

 「結成するだけで実際に動けなければ、意味がないんです」。そう話すのは、市内で最も活動期間が長い大池地区自主防災会の宮部会長。同地区では、一部の役員を除き、自主防災会の役員は、自治会などとは独立した防災委員で構成しています。「自治会など地域の役員を務める人たちが自主防災会の役員も兼務すると、どうしても多忙になります。それによって活動が進まなくならないための工夫です。おかげで、毎年着実に活動を続け、定期的な訓練だけでなく、地区の防災マップや防災ハンドブックを作成して地域に配布するといった成果が出ています」。

進化する取組み

 長年にわたる取組みは、さらに進化を続けています。役員が集まるミーティングではいつも活発な意見交換が行われ、最近では、災害時に特に援護を要する人たちの情報を集約した緊急連絡世帯名簿や、地域の中で災害時に役立つ資格や技術を持った人の情報を集めた「チャンピオンマップ」の作成も検討しています。「地区の中で、顔が見える関係作りをすることで、地域の防災力が高まっていくと思います」と宮部会長は話します。

自主防災の課題

活動の中では課題にも直面しています。宮部会長は「活動の中心になるメンバーの高齢化と、活動のマンネリ化の2つは、自主防災組織の大きな課題です。小学校との合同防災訓練を行うなど、対策を考えながら行っています」と話します。こうした課題もまた、知っておかなければならない現在の地域防災の実情です。

事業所でも進む災害への備え

社会福祉法人 府社会福祉事業団 特別養護老人ホーム春日丘荘
荘長 森 賢二さん

 私たちのような福祉に携わる事業所では、災害時でも利用者へのサービスを安定的に提供することが最も重要な使命です。以前から、府内にある同じ法人の事業所と合同で防災訓練をしたり、災害時の計画策定に取り組んだりしてきました。しかし、地域の皆さんと合同で訓練などをする中で、地域の実情や利用者の状況に即した、より良い計画が必要だと気付きました。そこで最近では新たな計画作成に向けて動き始めています。

 また、私たちの事業所も加盟している市高齢者サービス事業所連絡会では、市と協定を結んで、災害時に介護が必要な要援護者を受け入れるための準備を整えています。事業所同士の横のつながりで、市域の事業所全体に災害に備えた計画を普及させたり、いざというときの協力体制の構築を進めたりしていけるようにと思っています。

 地域の中で事業を営む立場として、それぞれの事業所が災害に対してどのように備えるかを計画し、さらに地域に対する貢献もしていくことが必要だと思います。

家庭で考える

家庭から始める防災

 日々の生活で、最も身近な存在が家族です。災害への備えを考えるとき、まずは家庭での取組みを抜きに語ることはできません。実際の災害を経験した木方さんの話には家庭から始める防災のヒントが含まれています。

役立った備え

 東日本大震災が起こった3年前の3月、木方さん一家は宮城県の仙台市に住んでいました。普段から非常用の持ち出し袋を用意していたおかげで、困っていた近所の人にライトやろうそくを貸してあげることができたそうです。「備蓄していた品で十分に生活を賄えるようなことはありませんが、それでも準備が無いのとは大違いでした」と話す木方さん。引っ越して茨木に住むようになってからも、家の備品置き場には非常用の水や食料、簡易トイレやライトなどを常に用意しています。仙台での経験を踏まえて、給水車用のウォーターバッグなど新たに買い足したものもあるそうです。

家族で決めておくこと

 「地震が起きたのは平日の昼間だったため、仕事で外出中だった夫とはしばらく電話での連絡ができませんでした。今は、家族が災害時に別の場所にいた場合に、『自宅にいなければ小学校にいる』というように、集合場所を決めています。災害の中で家族の居場所がわからないという不安を解消するためにも、ぜひ普段から話し合っておくと良いと思います」。

ご近所のありがたさ

 また、木方さんが大切だと強く話すのは、近所の住民の協力です。「子どもの年齢が近いこともあって、日ごろから親しくしていたのが良かったと思います。物の貸し借りもそうですが、自分の家族だけではどうしても情報不足に陥ってしまうところを、周りの人に助けられました。また、何と言っても心細いときに『大丈夫?』と声をかけ合える人がいることは、何物にも代えがたいことです」。

準備とは心構え

 「私たちの家族がしている準備には、難しいことは特に何もありません。最近ではホームセンターなどでも防災に関連する商品が手軽に手に入ります。でも、そんな簡単なことの積み重ねが、災害の時に大きな力になってくれるんです。子どもたちにはこうした日ごろの心構えを、今のうちから自然と身につけていってほしいですね」。

 家庭での防災は、特別なことではなく、日常生活の一部だという感覚が必要です。

これからを見据えて

専門家が見る課題

 地域や家庭で、防災の取組みが進む一方、そこには課題も見えてきます。今後の課題について立命館大学の准教授で、防災まちづくりを専門に研究を行う、豊田祐輔さんに話を聞きました。

意識と行動をつなぐ難しさ

 「大災害は、いつ起こるか分からないものです。また、頻繁に起こるものでもありません。そのせいで『まだ当分は大丈夫だろう』と、つい意識が薄れてしまいがちになります」と豊田さんは指摘します。「ニュースなどで災害の様子を知った直後は、『防災について考えなくては』と思う人が増えますが、その後何か具体的に行動を起こす人となると、ずいぶん少なくなります。そこが難しいのです」。

 災害が起こると、行政や消防など「公助」の機能だけで住民全体の安全を守りきることは不可能です。まずは、自分と身の回りの地域で安全を守るという「自助・共助」の意識を持ち、行動することが必要です。

地域防災における2つのアプローチ

 また、豊田さんは地域に防災活動を広く浸透させ、継続的に行っていくためには、大きく分けて2つのアプローチ(下記)があると話します。

 「1つめは、地域での活動に参加するためのハードルを低くすること、2つめは、訓練などを通じて、災害をより具体的にイメージできるようにすることです」。

 この2つのアプローチは、それぞれ、「すそ野を広げる」、「取組みを深める」という効果を持っており、地域防災を推進する両輪をなすものと言えます。

人・モノ 地域の資源を共有する

 豊田さんは「災害時にその地域で活用できる資源は、住民・事業所などがそれぞれ備蓄しているものだけではありません」と話します。

 「日常の生活や事業活動の中で使っている大きな鍋や工具、重機なども大切な資源です。また、住民や関係する人の力も立派な資源です」。

 市内でも、大学生が小学校の児童と触れ合いながら防災に関する取組みを行うという例が出てきています。学生の若さと行動力は、地域の防災を推進するうえで大きな力になりうるものです。

 「ただ、その貴重な資源がどこにどれだけあるのかが分からなければ活用できません。地域の情報を共有し、いざという時に活用可能な資源を把握しておくことで、その地域の防災力は向上します」。

地域防災2つのアプローチ

立命館大学准教授 豊田祐輔さん

1.地域活動へのハードルを下げる 

「防災の活動」ということにこだわらず、まずは地域でつながりを持つためのきっかけ作りを考える。地域でのお祭りやイベントの際に、炊き出しや体験型のゲームなど、防災に関する取組みを織り交ぜることで、子どもたちやその親の世代が気軽に防災に触れ合うことができるようになる。

2.災害を具体的にイメージ

災害時に発生する、予想していないさまざまな事態に対応するため、実際の避難の場面をイメージし、考えながら行う訓練。家族で決まった小学校に避難するという普段の訓練に少し手を加えて、参加者やその避難経路に「地震で家具が倒れて、自力で家から出られない」、「小学校へ続く道路が、冠水のため通行できない」などの課題や条件を設定。それにより、災害現場を想定した訓練効果が得られ、各家庭でもいざという時の行動につながる。設定を変えることで想定する場面をいくつも作りだすことができるのも、この手法の特長。

身を守るために

情報に手を伸ばして

 地域や家庭での備えにおいて肝心なことは、災害や気象に関する情報が、どこで手に入るのかを知っておくことです。そして、必要な時に手を伸ばすことができるように、さらには、周囲の人たちにそれを伝えていけるようにすることです。災害で携帯電話がつながらなくなってしまったら…。停電でテレビが見られなくなってしまったら…。さまざまな事態を想定して情報を入手する手段を準備しておかなければなりません。

 市では洪水・内水ハザードマップの配布、ホームページやFacebook・Twitterを使った情報発信(下記参照)など、防災・災害情報に関するさまざまな取組みを進めています。

災害は他人事ではない

 今後30年以内には、約60~70%の確率で、関西地方に影響を与える大規模な地震が発生するといわれています。また、近年、突発的な大雨が降ることが多く、安威川をはじめとする市内を流れる河川が氾らんすることも考えられます。そのとき、皆さん一人ひとりが備えをしていれば、被害を最小限に食い止めることができます。災害は他人事ではありません。自分や家族の身を守るために「誰かが何とかしてくれる」のではなく、「自分たちでできることを自分たちでしっかりとやる」という考えを持ち、できることから行動を起こしていく。それが茨木市の防災力を高めていくことにつながっていきます。

自ら情報収集する

3月末に市内全戸に配布

市洪水・内水 ハザードマップを発行

新しいハザードマップの特長
  1. 洪水(河川の氾らん)だけでなく、内水(水路や下水道の氾らん)にも対応
  2. 戸建や集合住宅など、自宅の形態に合わせて災害時の対策をフロー化
  3. 冊子型で見やすく、保管にも便利
  4. 校区別に地図を掲載し、自宅付近が探しやすい
  5. 事前の備えのポイントや、緊急時のテレフォンガイドなど役立つ情報が満載 など

おおさか防災ネット
ホームページアドレス、http://www-cds.osaka-bousai.net/pref/

 おおさか防災ネットは、府と府内の市町村が共同で、気象や地震情報、災害発生時の被害・避難情報の防災情報を提供するサイトです。

 携帯電話メールアドレスを「防災情報メール」に登録すれば、地震情報などがメールで配信されます。専用メールアドレス(touroku@osaka-bousai.net)へ空メールを送信すると登録用メールが届きます(登録は無料、右記にQRコード)。

問合先 危機管理課 電話620-1617

市Facebookページ・市公式Twitter

 市では、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を活用し、市政の情報発信のため、市Facebookページと市公式Twitterを運用しています。大規模災害時には迅速な情報提供にも活用しますので、ぜひ「いいね」やフォローをお願いします。

問合先 広報広聴課 電話620-1602

市ホームページ「いばなびマップ」でもハザードマップが見られます

 いばなびマップでは、施設情報だけでなく、洪水と地震のハザードマップも閲覧することができます。ぜひ、ご活用ください。

ホームページアドレス、http://www2.wagamachi-guide.com/ibanavi/

問合先 危機管理課 電話620-1617