" 特集:広報いばらきHTML版 平成25年12月号

広報いばらき

特集 救命

命を救うためにできること

1秒を争う救急の場面で命を救うため、私たち市民にできることがあります。

問合先 救急救助課 電話622-6959

自分や家族に何かあったとき

救急車を正しく使う

もしものときの救急車

 急病や事故など、もしもの時に駆けつけてくれる救急隊員。市消防本部では、災害や事故でけがをした人や病気にかかった人などを医療機関に緊急に搬送するため、8台の救急車を配備し、24時間365日、いつでも出動できる体制を整えています。

救急車の利用を考える

 救急搬送の現場で、現在問題になっているのが救急車の不適切な利用です。
 救急車の出動件数は年々増加しており、平成24年の出動件数は1万3524件で、前年に比べ171件増加しています。搬送人数は1万2292人で、291人の増加となっています。そのうち、全体の6割以上にあたる7869人が入院の必要のない軽症者でした。軽症者は前年に比べ207人増加となっています。
 軽症だからといって必ずしも救急車が必要でないということではありません。しかし、中には「突き指をした」「歯が痛む」といった本当に救急車が必要だったのかと疑問に思う事例があります。
 このような不適切な利用が増えれば、本当に搬送が必要なときに救急車を使用できなくなります。軽い気持ちで行った行為は、緊急を要する場面で救急車の到着の遅れにつながります。
 119番通報をする前に、救急車を必要とするほどの緊急な状態かどうか考えてください。もし何か迷うことがあれば、皆さんが利用できる救急電話相談があります。

救急隊員に聞く

市消防署救急救助課 小林良久・浅野道広

みんなの救急車

 私たち救急隊員は市民から救急車の要請があれば、その人がどんな症状であっても必ず現場に向かい、状況を確認します。

 怖いのは各消防署に配備されている救急車が出払ってしまったときです。通常、119番の出動要請を受けると、現場を管轄する最寄りの救急隊が出動します。一つの管轄で要請が重なった場合には、遠くの署の救急隊が出動することになります。出動場所が遠くなるほど心肺停止などの本当に緊急を要する人のもとへの到着が遅れ、救える命が救えなくなってしまうおそれがあるのです。

 茨木市民27万人に対して救急車は8台しかありません。「みんなの救急車だ」という意識を持って正しく使ってほしいと思います。

迷ったら#7119

119番の一歩手前の窓口

 「救急車を呼んだほうがいいのか、病院に行くほどの状態なのか判断できないー。」
 そんなとき皆さんの迷いや不安を解消するために、「#7119」の番号でつながる「救急安心センターおおさか」があります。
 同センターは、119番の一歩手前の判断をする窓口です。「病院に行くべきか」、「応急手当の方法が分からない」、「近くの救急病院はどこにあるのか」、「救急車を呼ぶべきか」という市民の皆さんの相談に応じます。
 同センターでは相談員や看護師が医師の支援体制のもと、24時間365日、対応できる体制を整えています

相談の流れ

 相談の電話が入ると、まず相談員が話を聞きます。近くの救急病院はどこかという問い合わせについては相談員が住所を聞き、近くの救急病院を案内します。
 それ以外の相談は看護師に転送し、看護師が症状を聞いたうえで、助言を行います。看護師だけで判断できない場合は、常駐している医師に確認します。
 話を聞く中で、症状が重く、救急車を呼んだほうが良いと判断した場合は相談者の居住地域の消防本部に転送し、救急車を出動させます。

迷いや不安を取り除く

 「こんなことで電話していいのか、大したことなかったら恥ずかしい」と相談をためらう必要はありません。
 相談員や看護師は皆さんの立場に立って親身に話を聞き、皆さんの迷いや不安を取り除いたり、症状の悪化を防ぐお手伝いをしたりします。
 相談の中には、相談者が思っていたより症状が軽く、救急車を呼ぶ必要がなく様子をみることを助言する場合や、脳梗塞やクモ膜下出血などの疑いがあり、すぐに救急車の出動を要請する場合もあります。
 もちろん、緊急時には迷わず119番をしてください。しかし、救急車を呼ぶ前に何か迷うことがあればぜひ#7119という番号を覚え、ご利用ください。

救急安心センターおおさか

24時間 365日

電話#7119または
電話06-6582-7119

こんな相談がありました
脳梗塞
朝から左上肢の痺れが続き、夕方まで様子を見たが治まらないため本人が相談。→緊急入院後11日後に退院。 
鼻血
鼻血が止まらないため本人が相談。→鼻を押さえてうつむく、喉に流れてきた血は飲まないなど応急手当を説明し、自宅で様子をみて、ひどくなれば病院に行くよう助言。
〔相談の流れ〕

相談

救急安心センターおおさか→救急出動要請
救急安心センターおおさか→救急医療機関案内

中学生以下の子どもを持つ保護者の皆さんへ

 夜、病院が開いていないとき、子どもが次のような症状になって慌てたことはありませんか。

 平成24年に救急搬送された小児(15歳未満)のうち82.5%が入院の必要のない軽症でした。夜間の子どもの急病時、病院に行ったほうがよいか判断に迷ったときは、下記の電話相談をご利用ください。小児科医の支援体制のもと、看護師・保健師が相談に応じます。

小児救急電話相談 (午後8時から翌朝午前8時)
電話#8000 または 電話06-6765-3650

救急安心センターおおさかでは24時間小児の相談ができます。

夜間休日の小児救急は高槻島本夜間休日応急診療所へ

 夜間休日に小児科を受診する場合は高槻島本夜間休日応急診療所をご利用ください。
 同診療所は小児科専門医などのスタッフや検査機器が充実しているほか、入院・手術が必要な場合は、対応可能な医療機関へ迅速に搬送します。
 なお、来年3月31日で市保健医療センター附属急病診療所での小児科(中学生以下)の診療を廃止します。
 詳しくは、広報いばらき12月号と同時期に配布するチラシをご覧ください。

問合先 保健医療課 電話625-6685(救急搬送については救急救助課 電話622-6959)

緊急な場面に居合わせたとき

いざという時は119番

通報から救命のスタート

 もし、皆さんが、誰かが倒れるなどといった、緊急を要する現場に居合わせたときは、まず、119番通報をしてください。あなたの通報から救命がスタートします。市消防本部通信指令室の指令員が住所や容態などを質問し、住所を聞いた時点で救急車を出動させます。

落ち着いて、冷静に、受け身で

 心肺停止や事故など、いざというときは気が動転することもあります。しかし、慌ててしまうとそれだけ時間がかかってしまいます。また、通報する人の中には、動揺して一方的に話す人がいます。1秒を争う救急の場面では落ち着いて冷静に受け身で指令員の質問に答えるよう心がけてください。
 皆さんが答えた内容が現場に向かっている救急救命士など救急隊員に伝わり、到着後の処置の方法や搬送先の病院を決める重要な判断材料になります。

救急通報119をしたら
指令員が次のことを質問します
住所、氏名、電話番号、年齢、性別
今の症状、いつごろから
現在の通院歴、かかりつけの病院(分かれば)

命を救う応急手当

救急車到着までが大切

 心臓や呼吸が止まった人、大けがをした人に、何も手当をしなかった場合、心臓停止で約3分、呼吸停止で約10分、多量出血で約30分経過すると、死亡率が50%を超えるといわれています。
 救急車の現場到着平均時間は、本市で「6分12秒」。現場で救急車が到着するまでの間、その場に居合わせた人が迅速な手当ができるかどうかが、救命のカギとなります。

自分にできる救命処置を

 けがや病気の人がいたとき、現場でできる手当を応急手当といいます。中でも心臓や呼吸が止まるなど、命の危険が迫っている人を救うための応急手当を救命処置といいます。市では毎週土曜日・日曜日に講習会を開催しています。応急手当の方法等を学ぶことができますので、ぜひご参加ください。
 万が一、緊急の場に居合わせたときには、救急車が到着するまでの間、勇気を持って一つでも自分にできる応急手当をしてください。それが救命の可能性や後遺症の軽減などにつながります。

応急手当講習会

 市では、市民の皆さんに応急手当の正しい方法を身につけてもらうため、次のとおり講習会を開催しています。
とき、毎週土・日曜日、対象、市内在住・在勤・在学者、備考、入門コース(90分)、普通救命講習(3時間)、上級救命講習(8時間)とレベルに合ったコースがあります。時間など詳細はお問い合せください。自宅のパソコンで受けられる「応急手当Web講習」もご利用ください。申込、救急救助課 電話622-6959、ファックス621-0119、メールアドレス、o40000091@osaka.qq-net.jp、市ホームページ・携帯サイトから電子申込も可

普通救命講習(3時間)

内容 心肺蘇生法(一人法)、止血法、AEDを使用した心肺蘇生法など

上級救命講習(8時間)

内容 普通救命講習の内容に加え、心肺蘇生法(二人法)、小児・乳児・新生児を対象とした心肺蘇生法、傷病者管理法、副子固定法、熱傷の手当、搬送法など

受講者インタビュー

衣田ひとみさん

講習を受けるのは2回目です。今回は1歳の男の子が倒れているという設定でAEDを使って訓練しました。前の講習では成人が倒れているという設定だったので、違う条件で貴重な体験ができてよかったです。胸骨圧迫や人工呼吸の正しい方法を忘れてしまうこともあるので、繰り返し受講するべきだと思います。

命を救うために

皆さんの協力が必要

 緊急を要する人を救えるのは、救急隊員や医療従事者だけではありません。私たち市民にもできることがあります。
 想像してください。どこかで生命の危険がある傷病者やその家族が救急車の到着を待っている場面を。そんな時に、皆さんが「緊急性がない、自分で病院に行ける場合は救急車の要請は控える」「救急安心センターおおさかの電話番号『#7119』を覚える」などを心がけることで救える命があります。
 想像してください。さっきまで元気にしていた人が、突然倒れ、心臓や呼吸が止まってしまった場合を。そんな時に、そばに居合わせた人が「119番通報する時は慌てない」「普段からAEDの設置場所を確認しておき、いざという時にためらわず使用する」などを行うことで助かる命があります。
 1秒を争う救急現場で命を救うためには、皆さんの協力が必要不可欠なのです。命を救うために自分ができることをこの機会に考えてみてください。

救われた命、救った命

 救急車を早く呼べた、救命処置がうまくできた・・・。いくつかの偶然が重なり救われた命。
 しかし、そこには命をつなぐため懸命に行動した市民がいました。
 迅速・冷静な通報、ためらいのない救命処置により成功した人命救助の一例をご紹介します。

生きているのは皆さんのおかげ

 昨年5月27日、賀川将夫さんは小学校の体育館で趣味のバドミントンの練習をしている最中に突然倒れました。心筋梗塞が原因でした。
 その様子をコートのそばで見ていた濱正俊樹さんはすぐに119番通報をします。「賀川さんの様子がおかしいと気づき、すぐに救急車を呼びました。体育館の場所が正門から遠い場所にあるので、住所だけなく体育館により近い入口を説明しました」。
 ほぼ同じタイミングで船井由香さんはAEDが職員室にあるのを思い出し走り出します。「倒れた直後はまだ脈も呼吸もありましたが、念のため準備しておこうと思い、AEDを取りに行きました」と船井さん。
 しかし、船井さんが戻ってすぐ、賀川さんの脈と呼吸が止まります。その場にいた人の中でAEDを使ったことがある人は一人もいませんでした。船井さんは思い切ってやろうと電源ボタンを押します。「AEDの音声案内のとおりに操作をすれば電気が流れました。思ったより簡単で、初めてでも正しく使うことができました」。
 その後、船井さんが胸骨圧迫を行い、平森公三さんが人工呼吸を行います。「とにかく助けなければという思いがいっぱいで、ためらう気持ちは全くありませんでした。息を3回吹き込んだあと、賀川さんの呼吸と脈が戻りました」と平森さんは振り返ります。
 賀川さんが倒れて約6分後に救急車が到着。病院で治療を受け、3日後に意識が戻り、その後、周りが驚くほど速いスピードで回復しました。「担当の医師から、AEDなどによる救命処置が順調な回復につながったと言われました。迅速かつ冷静に救急車を呼んでくれた濱正さん。全く初めてでも怖がらずにAEDを使ってくれた船井さん。ためらわずに人工呼吸をしてくれた平森さん。皆さんの助けがあったからこそ今こうして元気に生きていられます。本当に感謝の気持ちしかありません」と賀川さんは笑顔で話します。
 「賀川さんが助かって本当に嬉しいです。一人では賀川さんを救えなかったかもしれません。みんなで協力して、勇気を持って行動したことが救命につながったと思います」と濱正さん、船井さん、平森さんは喜びました。