防災とコミュニティデザインークリエイティブと人材育成ー~NPO法人プラス・アーツ理事長 永田宏和さんに聴く~

平成29年5月10日(水曜日)午後0時~午後0時30分

対談要旨

国内外での防災教育普及に取り組んでおられ、家族や友達と楽しみながら防災知識が身につくイベント「イザ!カエルキャラバン!」を企画・プロデュースされている、NPO法人プラス・アーツ理事長の永田宏和さんに、「防災とコミュニティデザイン ~クリエイティブと人材育成~ 」をテーマに対談しました。

椅子に座っている福岡市長と永田氏

まとめ

・東日本大震災は、全国的な防災意識を大きく変えたが、まだ市民全員には届いていない
・防災も含めて、地域コミュニティ構築に壁がある
・防災の訓練等もイベントの質の向上など工夫次第で参加者を増やせる
・センスとノウハウを備えたつなぎ役、コーディネーターが大切だが、足りていないので育成が必要
・ワークショップを開くのであれば「閉じる」ことが大切で、場の力の引き出し方などクリエイティブな要素が不可欠
 

対談内容

防災意識の高まり

福岡市長(以下、市長):全国でいろんな活動をされる中で、今の防災意識の高まりはどのように見えていますか。

手に動きをつけて説明する永田さん

永田宏和氏(以下、永田氏):阪神淡路大震災の記憶の風化、意識の低下をどう食い止めるかが課題であった中、東日本大震災は、全国的な防災意識をガラッと変えました。
地震に関する講座で言えば、東日本大震災前はお客さん一人のケースもありましたが、震災以降はほぼ満席です。企業のCSR(企業の社会的責任)といえば環境でしたが、防災へシフトしてきました。環境問題は地球規模でやることなので、効果がダイレクトにはなかなか反映されません。防災は、訓練などにしても、来た人の意識が上がったとか、効果がダイレクトにわかります。そうした部分も企業が防災へシフトした要因かもしれません。
 

防災とコミュニティ

市長:今は、防災というテーマが一定の到達点に達したといえる状況なのでしょうか。

永田氏:良い流れにありますが、まだまだだと捉えています。最終目標は、私たちの活動がなくても、防災が当たり前になることです。私たちの支援が必要なところもまだまだありますし、支援を終えても活動が自立・自走できないところもあります。防災というテーマは、まだ市民の方全員には届いていません。

市長:防災のカギは、知識を得ることと人のつながりにあると感じています。人のつながりは、防災にとどまらず、もっと根本的なところを考えなければならないと思っています。

永田氏:そうですね。コミュニティの問題はやはり大きな課題でもあり、そこで壁に直面している方が圧倒的に多い現状があります。ですので、私は防災の問題だけでなく、コミュニティの問題も軸として扱っています。
例えば、「カエルキャラバン」も、ただの防災の訓練ではなく、地域をあげてのお祭りになることが大事です。コミュニティカフェのような、コミュニティにも効果がある、いろんな取組みも絡めていかないといけません。
また、マンションはそもそも制約が多いのですが、いくつかモデル事業を行っています。管理組合のやり方を変えたり、イベントの質を変えたりしていますが、かなり効果が出ています。感覚的には、これまで参加率が2~3割だったのが、6~7割ぐらいに増えています。それも、参加するだけの客ではなく、運営側に回ってくれる人も増えています。

市長:それは素晴らしいです。ぜひ今後ご教示願いたいです。

必要な役割・人材とは

永田氏:特に「つなぎ役」が大切です。そうした役割をするコネクションセンターのようなところがあれば、きっと地域は大きく変わるでしょう。現状ではそういった場所も人も足りていません。
私は、「デザインセンター」(※『デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)』)を人と人をつなぐ場所にしようと考えています。人材育成の拠点にもしたいと考えています。当初、大学でそういうことができないかと考えていましたが、つなぎ役とかコーディネーターを育てるためには、現場がないとダメなのです。実際にプロジェクトを自分で動かしながらそこで汗をかいて、いろいろなことにもまれてはじめて育ちます。
 

永田氏に説明する市長

市長:「カエルキャラバン」の事業構築では、被災された方からとことん話を聴いたという現場主義の徹底がポイントだと感じました。次に、ターゲットを決めたら、ターゲットの方の心を動かすためのひと工夫、ふた工夫を研究されている点もポイントに感じました。

永田氏:今に至るまでに何度も改良を重ねていますし、子ども向けのイベントだからといってほどほどでいいということはないです。子どもが相手であっても、子どもだましは通用しないですね。イベントで成功する、あるいはターゲットの心をつかまえるには、センスが大切です。

市長:自分がどうかはさておきとして、それは私も感じるところです。

永田氏:若者を参加させて、挑戦させることが大事ですが、そういう場が圧倒的に足りません。最近仕事でニューヨークに行くことがあるのですが、あのように、みんながチャレンジしているまちというのは、ワクワク感で溢れています。日本でそれをやりきれているまちはないと思っています。

市長:茨木市のような規模において取り組めるテーマはありますか。

永田氏:人材育成の部分では、職員のスキルアップも重要です。
具体的な事例と一緒に説明することが大切です。そうすると、職員の方が、普段の自分たちの仕事と結び付けるきっかけになります。普段の仕事に追われていますので、研修がいいきっかけになると思います。

市長:自身も含めて「これから」についてどうお考えですか。

永田氏:今は、あるものをどう活かすかという編集の時代だと思っています。そのセンスとノウハウを持ち合わせて実行に移せる人が一人いるかいないかで、地域が変わるかもしれません。ただ、残念ながら、そのような人はほとんどいません。デザインセンターでも担い手を育てることに力を入れていきたいと思っています。

市長:ぜひとも、そういうセンスある人たちをたくさん輩出していただきたいと思います。

説明する永田さんと市長

ワークショップのあり方

永田氏:関連して気になっているのが、最近、防災など様々なテーマでワークショップが開かれるようになりましたが、お題が「みんなで作る」だけにとどまっているのではないかという点です。
みんなで作ったものが必ずしも良いとは限らない中で、大事なことは、開いた以上「閉じる」ことです。いろんな人の意見を聴くことはもちろん大切なことですが、ワークショップの質が問われていると思います。

市長:マイナスをゼロにする取組みと、ゼロをプラスにする取組みがあるとすると、ゼロをプラスにする取組みの構築に関しては、参加者が経験も体験もしていない領域の話なので、良いアイデアそのものは出にくいです。そこは、ワークショップで出た意見からエッセンスを抽出して、誰かが作り上げていく、いわゆる「閉じる」作業が別に必要だと考えています。

永田氏:やはり、クリエイティブの領域があると思います。そういう意見を出すには場の力もあると思いますし、やはり、ワークショップはやり方が一番大切です。みんなで作ると、それだけで良いとされて否定しにくくなるので、危うさがあります。開いた以上は閉じる責任があることをちゃんとわかっていなければいけません。

市長:今後の対話のあり方、やり方の参考にさせていただきます。今日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

永田氏:ありがとうございました。

握手をする市長と永田さん