スポーツを通じたまちづくりとは? ~株式会社スポクリ代表取締役 阿部達也さんに聴く~

平成28年6月29日(水曜日)午後3時~午後4時 

対談要旨

株式会社スポクリ代表取締役の阿部達也さんに、スポーツを通じたまちづくりについて、これまでのご経験も踏まえてご意見、アドバイス等をお聞きしました。

まとめ

・日本全体の問題として、観戦するためのアリーナが不足している。
・スポーツには「するスポーツ」と「見るスポーツ」の二つの文化がある。
・何かシンボル的なものがあると、まちの知名度が上がり、それを軸に全体を底上げすることが
できる。
・ハコ物は、建設したあとにどう運用するのかが最も大切なことである。
 

対談内容

日本のスポーツ行政の現状と長岡市の取り組み

福岡市長(以下、市長):日本のスポーツ行政の現状と、阿部さんが取り組まれてきた長岡市の状況について教えていただけますか。


阿部達也氏(以下、阿部氏):現在の日本ではスポーツ人口が増加していますが、たくさん観客が入って観戦しやすいアリーナが足りていません。プロのゲームを行うには、3,000人から5,000人入る規模で、音響、照明、ビジョンといった設備を備え、さまざまな演出を行うことのできるアリーナが必要です。
スポーツは大きく分けて、「見るスポーツ」と「するスポーツ」に分けられます。「するスポーツ」のための市民体育館のような施設は大体の都市にありますが、「見るスポーツ」のためのアリーナのようなものはまだ十分ではありません。「するスポーツ」の文化と「見るスポーツ」の文化、両方を作っていきたいと考えています。
「見るスポーツ」というのは、コンサートやミュージカルに近いものであり、アメリカでは、スポーツ専門ではなく、多目的アリーナのような形で作られているものが多いです。日本では、「アオーレ長岡」がそうです。長岡市では、大きなショッピングモールができたことで、それまであった商店街がシャッター街になってしまいました。そうした中、駅前や駅中にどうやって人を呼び込むかという一大プロジェクトが10数年前に始まり、市役所と併設した複合施設である「アオーレ長岡」を建設することになりました。立地している場所は、駅から少し距離があるのですが、雪が多い地域なので、駅から濡れずに行けるよう通路が造られています。


市長:建設に係る予算はどうされたのですか。


阿部氏:中心市街地活性化関係予算というものがあり、それを活用しました。


市長:アオーレ長岡はどのような稼動状況でしょうか。


阿部氏:現在のところほぼ100%です。これには理由がありまして、多くの方に集まっていただくため、使用料をほぼ無料、もしくはかなり安い金額にしているからです。市は、アオーレ長岡に多くの市民の方が集うことで、まちに新たなにぎわいが生まれ、市全体が活性化されることを目的としています。


市長:駅から濡れない通路を造ってしまうと、人が商店街に流れなくなってしまうと思うのですが、そこはどうされているのでしょうか。

阿部氏:それにも理由がありまして、通常であれば、市役所内には食堂やレストランがあるのですが、アオーレ長岡ではそれを作りませんでした。そのため市役所内の職員は、食事を取るために駅前へ行くようになり、それとともに駅前に賑わいが戻ってきました。

市長:アオーレ長岡のアリーナについてですが、バスケットボールチームが使うのは年間で何日ぐらいでしょうか。

阿部氏:だいたい20~30日ぐらいです。その他は、市民の方主催のイベントや、これまでは市外で行われていたコンサートなども開催されるようになりました。

市長:アリーナの設備はどのような特徴がありますか。

阿部氏:ロールバック式といわれる収納式の観客席になっていて、状況に応じた使い方をすることができます。

市長:長岡市の行政サービスについて、阿部さんの目に留まったものがありますか。

阿部氏:ワンストップサービスのようなことをされています。例えば、引越しの手続きに来た場合、通常ならいろいろな部署を周って手続きを進める必要がありますが、長岡市では、それぞれの部署の人が来てくれて、移動することなく手続きをすることができます。

プロバスケチームと地域・市民との関わり

市長:阿部さんはbjリーグの立ち上げに携わってこられたわけですが、チームによってまちとの関わりに差があったりするものでしょうか。

阿部氏:もちろん、地域によって差はあります。その中でも、行政と組んで先進的なことを進めてこられたところもあります。
「スポーツ=健康」というようなところがあって、市民の健康増進とスポーツを結びつけて展開することで、医療費の抑制などに繋げていくこともできます。

市長:長岡市でのバスケットボールチームの浸透度はどのくらいでしょうか。

阿部氏:アオーレ長岡で試合を行いますので、有名選手はかなり知名度があります。

市長:他のまちではどうでしょうか。

阿部氏:地方にいくほど知名度が高くなっていきます。沖縄はチームも強く、知名度も高いです。あとは秋田も挙げられます。能代工業高校もありますし。

市長:チームを立ち上げるとまちの活性化に繋がると思いますが、長岡市以外でうまくいっているところはありますか。

阿部氏:そうですね。長岡が突出して進んでいるところはあります。長岡市の出身者がbjリーグの設立に関わっていて、まちづくりと併せて進めていくことができたので、長岡市が先進的な例になったというところはあります。これからこうしたことを全国に広めていきたいと考えています。

市長:長岡市に追随しようと頑張っているまちはありますか。

阿部氏:長野県の千曲市がそうですね。千曲市にもバスケットボールのチームがあって、取り組みを進めているところです。

市長:チームができることによって、まちのバスケ人口が増えたりしますか。

阿部氏:子どもたちが興味を持ったりするので、もちろん増えます。

市長:高齢者の方との関係はどうですか。

阿部氏:試合観戦に、お子さんやお孫さんとよく来ていただいています。家庭での共通の話題にもなっているようです。首都圏では高齢者の方の応援は少ない印象ですが、地方ではたくさんいらっしゃいます。

市長:阿部さんがbjリーグを立ち上げられたのは、ご自身がバスケットをされていた経験から来るものでしょうか。

阿部氏:そうですね。中学校のときの担任の先生がバスケ部の顧問をされていて、声をかけられました。その後、高校、大学でもバスケを続けていました。
社会人になってからも、仕事をしながらバスケットボール協会のボランティアの仕事をしていて、その時、bjリーグ立ち上げのお話をいただきました。当時働いていた会社が、社員が独立して新しいビジネスにチャレンジすることを応援してくれていて、独立して起業することが普通だったので、挑戦することができました。スポーツを観に来た人たちが楽しくなるような、スポーツを通じたまちづくりをしようと決めました。

市長:バスケットボール以外のスポーツについても、今後こういった可能性はあると思いますか。

阿部氏:もちろんあります。最近注目しているのはパラリンピックの競技です。
パラリンピックの種目は見れば見るほど興味深い選手がいて、これから協会の人たちがうまくやっていければ、ますます見て楽しいスポーツにしていけるのではないかと思います。

市長:スポーツは競技の数もさることながら、さまざまな側面があると思います。ですので、それぞれの面から取り組みを行おうとすると、結局、焦点がぼけてしまうおそれがあります。何かお考えはありますか。

阿部氏:例えば吹田市では、吹田スタジアムがあります。今では、どこに行ってもスポーツ関係者なら吹田スタジアムのことを知っています。これまで吹田市のことを知らなかった人でもです。
そういう意味では、何かシンボル的なものがあると、まちの知名度が上がり、それを軸に全体を底上げすることができるのではないでしょうか。

茨木市のまちづくり

市長:茨木のまちに対する印象はどうでしょうか。最近は帰ってこられていますか。

阿部氏:小学生のときに高槻から茨木に引っ越してきたのですが、当時は茨木の方が発展しているイメージでした。JR茨木駅と阪急茨木市駅の間は一番の目抜き通りなので、若者が行き交うような通りになるといいな、と思っています。今は月に1回ぐらい帰っています。

市長:茨木出身の方でも、同窓会を梅田でされていたり、茨木に帰ってこられることが少なくなっていると感じています。そういう人たちに茨木に来てもらうことを通して、茨木との関係を保つことが今後の発展に大切なことだと考えています。

阿部氏:茨木は立地に恵まれているので、可能だと思います。

市長:今後の茨木のまちづくりについて、何かしらアイデアはお持ちですか。

阿部氏:いきなりアリーナのようなハコ物を作っても意味がないと思います。なぜそれを造るのか、どうしてその場所に造るのか、全体を見て考える必要があります。
私がいつも建設会社に言っているのが、造ることだけが仕事ではなく、造ったあとにどう運用するのが大事かということです。使う人や観に来る人に、どう楽しんでもらえるかということを考えることが、一番大切だと思います。

市長:アリーナ、バスケットボールのいずれも、これまでの茨木市に少し縁遠いお話でしたので、その分勉強になりました。これからも阿部さんがご活躍される中で、茨木市に耳よりな情報がありましたらぜひお届けいだければありがたいです。
本日は、お忙しい中ありがとうございました。ますますの阿部さんのご活躍を期待しております。