公的支援だけに頼らない 自律的な健康都市とは? ~藍野学院大学短期大学部学長 佐々木惠雲さんに聴く~

平成28年10月31日(月曜日)午前11時~正午 

対談要旨

 平成27年11月に、本市は学校法人藍野学院と連携協定を締結しました。これは、福祉・医療・文化・教育・子育てなど、さまざまな分野において積極的に連携を行い、相互に協力していくことを目指すものです。
 今後、具体的にどのような可能性が広がっていくのか等について、藍野大学短期大学部の佐々木惠雲学長と対談いたしました。 

藍野大学短期大学部の佐々木惠雲学長の顔写真
茨木市長の顔写真

まとめ

  • 社会的なサービスで支える「公助」「共助」がシステム的に限界を迎えているいま、医療や福祉を支えるのはセルフケアである「自助」、当事者同士の助け合いである「互助」である。
  • 高齢者の居場所と出番を創出し、コミュニティづくりを促進する。
  • 子育て世代の問題は、社会全体の問題として考える。
  • 市と藍野学院との連携は「手段」だけではなく「目的」の部分から共有することが大切である。

対談内容

高齢化が進む街で、今後必要になってくること。

市長が椅子に腰掛けている写真

福岡市長(以下、市長):本日はどうもありがとうございます。まず最初に、私共の藍野学院様への期待について簡単にお話させていただきたく思います。この茨木市には6つの大学があり、高等教育の非常に充実した都市として知られていることは、ご承知の通りです。そこで市としては、各大学との連携を生かした、より活気ある地域づくりを考えていますが、藍野学院様はその中でも、医療・福祉のスペシャリストとしての知見をお持ちです。これをぜひ、これからの地域に生かしていただければと思います。 

佐々木学長(以下、学長):ご期待くださり、ありがとうございます。私たちも市と協力させていただくことで、地域から必要とされる教育機関という価値を高めていきたいと考えています。

市長:まず医療・福祉分野の問題を語る上で避けて通れないのが、高齢化のトレンドです。本市の高齢化率は平成28年9月現在で、23.2%となっており、北摂の近隣市と比べて若干低い数字ではありますが、今後都市部での高齢化は急速に進むことが予想されます。これまでは公的なサービスによって、市民の皆さんに満足いただける状況を維持してきたわけですが、今後は人材面からも、財政面からも、厳しくなってくるが予想されますね。

学長:社会的な制度やサービスで支える「公助」「共助」がシステム的に限界を迎えているいま、医療や福祉を支えていくのは、セルフケアである「自助」、当事者同士の助け合いである「互助」ではないかと思います。ではどうすれば、「自助」「互助」の部分を強化できるかと言いますと、ここで重要なのはまず教育なんです。

市長:確かにそうですね。とくに高齢者の方について言いますと、私たちが最重要課題と考えていることは、「健康寿命を延ばすこと」「認知症の予防と理解」の2点ですが、どちらもご本人や周囲の方が正しい知識をつけてくださることが不可欠ですから。

学長:私たちはその点に着目し、「健康長寿講座」と題した市民講座を今年から開催しています。がんや生活習慣病、あるいは認知症のことなど、さまざまなテーマを取り扱います。そして肝心なことは、一般的にこのような市民講座は1回限りのものが多いと思いますが、本学では、私自身が内科の医師であり、住職でもあるというバックグラウンドも生かし、さまざまな専門知識を結び合わせ、系統的な連続講座を開講します。これによって高齢者の方々が何事も、例えば自分の死といったデリケートな問題についても自分自身で考えられるよう支援したいのです。これまではこのような統合的な学びの機会が、あまりにも少なかったのではないでしょうか。

市長:なるほど。行政の側ではなかなか対処できない部分に藍野学院様が力を注いでくださるのは頼もしい限りです。私自身、高齢者の方にはもっと学びの機会が必要ではないかと思っていました。 

市民が自ら豊かに生きるためのコミュニティづくりを。

椅子に腰掛けている佐々木学長

学長:いまご紹介した「健康長寿講座」ですが、連続講座ですので毎回顔を合わせる人同士のつながりが生まれるというコミュニティ促進の効果もあります。皆さん大学に来て学食でランチを食べ、集まった人たちと楽しそうに話されていますよ。

市長:コミュニティづくりは、私も非常に重要だと考えているポイントです。本市では、「高齢者の居場所と出番の創出」を合言葉に、高齢者ご自身が主体となって公的サービスなどを提供する「新しい公共」の理念の実現に向けて取り組んでいます。具体的に礼を挙げますと、老人クラブが運営する「いきいき交流広場」、地域住民が主体的に取り組む「街かどデイハウス」を、それぞれ小学校区に1箇所を目標に整備を進めているところです。このほかにもさまざまな活動を推進しています。

学長:最近は全国的に「認知症カフェ」などの動きも盛んなようですが、やはり当事者が集まって学び合うというのが理想的ですね。コミュニティが活発な地域は、よい地域と言えそうです。

市長:このような施策の背景には、もっと高齢者の方が活躍できる地域をつくりたいという思いがあります。意欲と能力のある高齢者の皆さんがいきいきと日々の健康を維持され、その多彩な社会経験を生かして、地域社会の重要な支え手、担い手として活躍していただければ、いわゆる「サービスの受け手」「支えられる人」という高齢者の見方を変え、人々の暮らしに必要な「賢者」としての高齢者像を創り上げていけるでしょう。そうなればこの茨木市が、本当の意味で魅力的な地域となるのではないでしょうか。

学長:まったく同感ですね。 

子育て世代の問題は、社会全体の問題と考える。

市長:ここまで高齢者を中心にお話しさせていただきましたが、次にもう少し若い世代について考えてみたいと思います。とくに気になるのは、子育て世帯です。茨木市に限ったことではありませんが、日本は核家族化が進み、育児を任される母親のストレスは並大抵のものではありません。

学長:母親が孤立してしまい、最悪の場合は虐待に発展するというケースもありますからね。この点については、藍野大学短期大学部は市と連携して「子育てサロン“だっこ”」という取り組みを継続的に行ってきています。子育てをするお母さんたちを短大に集め、赤ちゃんの身体測定をしたり、育児相談会を行ったりして、不安を解消することが目的ですが、年間100名以上の方が参加してくださっています。ところがその中にも、なかなか難しい問題を抱えたお母さん方がいらっしゃるんですよ。本学としてはそのような事例は速やかに市に情報を共有し、協働でフォローしていく体制を今後ますます充実させていきたいと考えています。 

学長(左側手前後ろ姿)と市長(右側正面)が対談している様子

市長:子育て支援の問題は、女性のキャリアの問題でもありますし、近年の日本の社会が抱えるさまざまな問題に結びついているように感じます。そういった意味からも、私たちはこの問題をしっかり受け止め、藍野学院様との連携も含めてより手厚くフォローしていければと思います。

学長:ここで私の方から一つご提案があるのですが、いまは高齢者、子育て世代とそれぞれに話し合ってきましたが、今後はそうした垣根を越えた多世代交流が必要ではないかと思うのです。例えば本学では講座に参加してくださった高齢者の方に、「子どものためのオモチャ」をつくってもらう機会を設けてみたらどうかと考えています。高齢者の方が、目に見えるカタチで、子育てに参加する。そこにきっと、新しいコミュニティが生まれるでしょう。

市長:多世代交流、まさにこれからの時代のまちづくりのキーワードの一つです。市民会館跡地の検討にあたり、茨木市では市民の意見を広く聞くために、「市民会館100人会議」という会議を行っているのですが、ここでも「多世代交流をやりたい」という意見が実際に出てきます。先日は10代・20代からもこうした声が上がりました。

学長:10台・20代からですか?それは驚きますね。

市長:いま既存の組織ではうまく新陳代謝が起きていません。参加者数、参加率の低下が起きているように感じています。その中で、このように新しいコミュニティを求める声が上がります。まずは新たな交流のきっかけづくりが重要ということでしょうね。だから私は敬老会などに参加すると、出席された方々に「街中で知らない人にもどんどん声をかけるおせっかいなおじいちゃん、おばあちゃんになってください」とお願いしています。 

これからもっと市民主導の街が実現していくために。

市長:最後に、これからの両者の連携の可能性についてもう少し具体的な部分を話し合ってみたいと思います。藍野学院様の短期大学部では看護師・保健師を養成されていますが、予防医療に注目が集まる今後はとくに保健師の方の活躍が求められると思います。児童養護施設においては発育相談、療育相談といったことや高齢者の認知症予防など、さまざまな要求があるでしょう。そこで若い保健師の皆さんが、もっと茨木市の暮らしのさまざまな部分で活躍してくだされば心強いです。私はこれからの市政は「市民協働」ではなく、「市民主導」と考えていますので、積極的に活動してくださる人が増えることを期待しています。

椅子に腰掛けている学長と市長が対談している様子

学長:その点については、私からもお願いしたいことがあります。藍野大学短期大学部専攻科では、看護師資格を取得している学生たちが保健師を目指して学ぶ中で、高齢者の方のお宅を継続的に訪ねる「継続訪問実習」を行っています。学生は実際に一人暮らしの高齢者の方に触れ、人を支える保健師の役割を理解していきます。ところが、学生が高齢者のお宅に伺うということ危惧されてか、なかなか承諾を得られないことが多いのです。このあたりでもう少し、市からのご協力をいただければありがたいのですが。 

市長:独居老人の問題がますます深刻になっており、どの自治体も手が回らない現在ですから、学生の皆さんがそのように活躍してくださることは市民全員の願いではないでしょうか。現実的にはいろいろ問題もあるのでしょうが、うまく交通整理できればと思います。

学長:ありがとうございます。これからも市との連携では、単に「手段」でつながる存在ではなく、「目的」の部分から共有させていただき、パートナーとして積極的に取り組んでいければと考えています。

市長:本日は、有意義なお話しができました。これを機会に今後はより密に藍野学院様とお話しをさせていただき、よりよい地域づくりに向かっていければと思います。よろしくお願いします。