広報いばらき

特集 大阪北部地震から5年 防災体制の強化により安全安心の茨木へ

5年前の6月18日、茨木市を突然襲った震度6弱の揺れは、さまざまな混乱や被害をもたらしました。
市では当時の状況を検証し、教訓を生かそうと防災計画などの見直しを重ねながら、命と暮らしを守る体制づくりを強化しました。
問合先 危機管理課 電話 620-1617

あの日の記憶と課題を、今後の災害へ生かすために

 大阪北部地震が起こったのは月曜日の朝、通勤・通学の時間帯でした。目的地に向かっていた人は駅での足止めや電車内に閉じ込められるなど混乱。家や建物でも、市の広範囲で被害が発生。梅雨時ということもあって、屋根瓦への被害にはブルーシートで応急処置、家具の転倒や散乱した家財の片づけなどにも追われました。電気やガスなどライフラインも乱れ、ガスは全面回復に約1週間かかりました。避難所に身を寄せた人は最も多い日で750人。最後の避難所が閉じたのは、地震から47日後の8月4日でした。
 今後も大きな地震が起こる可能性があり、風水害など自然災害も年々増えています。5年前よりもっと素早く、より細やかな対応ができるよう、市ではこれまでの防災計画などを大きく見直しました。とくに発生直後の支援体制を強化。市民の皆さんの安全・安心を守るための取組を推進しています。

災害に強いまちづくりを進めています

危機管理課 野崎 覚(さとる)

大阪北部地震における茨木市の被災状況

発生日時

平成30年6月18日午前7時58分

規模及び震度

マグニチュード6.1
最大震度6弱(本震発生後、震度1以上54回、うち震度3以上6回)

人的被害

死亡1人 負傷102人(重症53人、軽傷49人)

家屋被害

全壊 3棟、半壊 95棟
一部損壊 1万3,511棟

ライフライン

停電 約5,500戸
ガス供給停止 6万4,254戸

避難者

のべ6,264人

開設避難所

75カ所

「平成30年大阪府北部を震源とする地震等の記録及び災害対応の検証」より
詳しくは市ホームページ

いざというとき、命と暮らしを守る
この5年で市が進めてきた主な対策

今後30年以内に70%〜80%の確率で起こるといわれる南海トラフ地震はマグニチュード8クラス〜9クラスの想定も。
市では社会情勢の変化に合わせてアップデートしながら、大規模災害でもすぐに対応できる体制の構築を進めています。
茨木市地域防災計画は市ホームページで

迅速で円滑な災害対策に向けて

計画を整備して事前に備える

災害時の防災体制や応急活動、復旧・復興対策などをまとめた「地域防災計画」と、災害発生時においても必要な通常業務の継続や早期再開するための「業務継続計画」を修正。「受援計画」も策定し、他の自治体や企業などへの応援要請や応援受け入れも円滑に対応できるようにしました。

職員間での速やかな情報共有

災害発生時の全市域の被害状況や避難所、職員の安否などの状況を把握することができる市の防災情報システムを整備。速やかに情報を共有し、部局間の連携体制を強化しました。

訓練を通じて実践・検証

修正・策定した各計画やマニュアルをもとに、災害対策本部の運営や羅災証明書の発行などテーマに沿った訓練で実効性を検証。災害発生時の対応を細かく確認し、職員の災害対応力と市の防災体制のさらなる強化に努めています。

インターネットなどを利用しない(できない)人に災害情報を発信

携帯電話やインターネットを利用しない(できない)人などを対象に、災害時の避難情報などの緊急情報を、固定電話やファックスへ自動で発信するサービス(登録制)を実施しています。また、屋外スピーカーの情報を電話(電話050-5433-9161)やインターネットで確認することができるサービスも同時に開始しました。
申し込み・問い合わせは電話620-1617(危機管理課)まで
詳しくは市ホームページ

避難所の取組

安心して避難できる避難所運営に向けて

市、地域、施設管理者のさらなる連携のもと、避難所を円滑に開設・運営ができるように基本的な考え方やポイントを示した避難所運営マニュアルを修正しました。

市・地域・施設管理者で訓練を実施

避難所開設と運営にあたる市、地域、施設管理者が、災害が発生した時にそれぞれどのような行動を取るかを確認する初動確認訓練を実施。修正したマニュアルにしたがって、三者の連携がスムーズに取れるかなども確かめました。

避難所開設状況がわかるサービスや避難所環境の充実も進行中

インターネットで避難所の開設状況や場所がわかるしくみを導入。避難所となる学校などの公共施設は耐震化だけでなく、空調やWi-Fi環境の整備、災害時用情報端末の配備などのほか、プライバシーを確保するパーティションや簡易トイレなど備蓄品の充実も進めています。

防災対策になるすっきりした家づくり

大阪北部地震では家具の転倒やものの散乱による被害が多くみられました。季節の変わり目に合わせて家の中を見直し、防災対策にもなる部屋づくりをしてみませんか。

家具選びや配置のしかたで危険は防げる

 ついついものがあふれてしまう、家具で圧迫感を感じて狭く感じるなど、住まいの悩みはいろいろです。夏に向けた衣替えの時期は、持ちものや空間づくりを見直すいいチャンス。すっきり暮らしたい!と思っている人は、できる範囲で始めてみるのもいいかもしれません。
 ものが少ない部屋は、実は安全に暮らせるというメリットも。棚が倒れたり、ものが落ちて怪我をしたりという危険は日常生活にも潜んでいますが、収納のしかたや家具の向きなど、ちょっとしたことで防ぐことが可能。暮らしやすさはそのまま、防災対策にもつながります。

テレビ台などに置く場合は固定しておくと、なにかの拍子に当たって倒れたり落下したりするおそれがないので安心。もっとすっきりさせるなら壁掛けタイプ

リビング Living room

防災ポイント1
家具はできるだけ少なく置くなら低めの家具を

リビングには家具をできるだけ置かず、すっきりした空間に。転倒する可能性がある家具は、座る範囲にないほうが安心です。背が低いほど転倒しにくくより安全です。

キッチン Kitchen

防災ポイント2
キッチンの上や周りも家電やものを置きすぎない

すっきりしたキッチンは転倒や落下するものが少なく、防災対策にも。収納をリビングから見えない場所にすると、落下しても食卓やリビングへの影響を減らせます。

本棚 Book shelf

防災ポイント3
本棚には要注意 転倒対策を忘れずに

本棚は倒れたときに最も被害が出やすい家具。天井で突っ張るか、床固定金具や耐震マットなどで固定を。また、重い本を下にすると重心が下がり、倒れにくくなります。

寝室 Bed room

防災ポイント4
寝室はとくに家具を少なく寝る場所に倒れないように

寝室は家具を極力減らし、置くならベッドから離れた場所へ。ベッド周りをすっきりさせれば何かあった時も安全で、すぐ逃げられます。配置換えが難しいなら固定を。

バルコニー Balcony

防災ポイント5
廊下やベランダにもものを置きすぎない

出入りや家の中の移動はスムーズにしたいもの。ものにぶつかったりつまづいたりすると、ケガの原因にもなります。もの置き場にならないよう、すっきりと。

玄関 Hall

インテリア雑貨 Interior etc...

こんなものも快適&防災に便利!

地震対策になる家具の置き方

Interview

シンプルな家は安全で子育てもしやすい

5年前の地震の経験もあって、家具は極力減らして倒れない、ものが飛び出さないことを重視しました。普段から安心でき、地震対策にもなっています。開放的な空間にしたことで暮らしやすく、子どもも自由にのびのびと過ごしています。
青野 秀紀さん
青野 望さん
青野 圭吾さん

我が家の場合「まずは自分で備える、整える」を大切に すっきり暮らしと防災を実現

障害がある息子と快適に過ごせて、災害時には「おうち避難所」にもなる家づくりをしています。ものが多いと息子の気が散るうえ、災害時も危険なので、造り付けの収納棚をメインに階段下スペースなども利用。家具も減らし、家全体をすっきりさせています。
収納の中はボックス型引き出しに仕分けて散乱しにくいように
キッチンの奥に造り付けの収納を
森脇 祥子さん
森脇 蓮太郎さん

防災を日常生活の一部に。

住まいを見直して、安全性の向上を とくに本棚を置く位置や向きは命に関わります

 すっきりした家は、防災面から見てもメリットが多いです。家具を固定するなどの対策も大切です。しかし、大阪北部地震後の調査では、家具が転倒した人の約半数が元に戻しただけということがわかりました。特に危険なのは本棚です。寝ている時に重い棚や本の下敷きになると命に関わります。本棚はできるだけ寝室に置くのは避け、置く場合は寝る場所に倒れてこない場所や向きにしてください。
 対策が大切だとわかっていてもできない人は多いものです。今後は、危険な家具を目にしたら声をかけるだけでなく、防災意識のある人が一緒に固定してあげるなどの取組が、防災対策を広げるために重要なことだと思います。

大阪北部地震で転倒した家具・家電ベスト5

家具や家電が転倒した市民は約半数

1 本棚(18.9%)
1 テレビ(18.9%)
3 食器棚(17.7%)
4 タンス(11.3%)
5 冷蔵庫(5.1%)

転倒した家具・家電への対応状況

地震後、対策しなかった人も多数
※関西大学社会安全学部総合防災・減災学分野 奥村研究室調べ

(※各項目、家具・家電、廃棄した、移動させた、固定した、元に戻したの順で)

本棚
8.4%
14.9%
20.6%
56.1%

テレビ
28.0%
2.8%
13.1%
56.1%

食器棚
8.0%
2.0%
37.0%
53.0%

タンス
6.2%
4.7%
39.1%
50.0%

冷蔵庫
0%
6.9%
31.0%
62.1%

関西大学 社会安全学部教授 奥村与志弘さん

プロフィール
中央防災会議防災対策実行委員会、内閣府『南海トラフ巨大地震モデル・被害想定手法検討会』委員。社会安全学分野の人材育成、地域活性化と防災・減災の両立をめざしたまちづくり支援など、多岐にわたり活躍