広報いばらき

特集2 リノベのいばらき
DIYでまちをリノベーション

 自分の手でものを作ることを、DIY(Do It Yourself)と言います。以前は日曜大工のように、男性的なイメージが強かったDIYですが、最近では自分好みのサイズやデザインのものが自らの手で作れると、若い人や女性にも身近なものになっています。また、リノベーションには、古くなったものを取り替えるだけでなく、「手を加えて価値を高める」という意味があります。

 このDIYとリノベーションをキーワードに、茨木のまちを盛り上げようとするプロジェクトが進行中です。その名も「リノベのいばらき」。今月はこのプロジェクトの概要と今後について紹介します。問合先、政策企画課 電話620-1605

STEP1 DIYがまちを盛り上げる

人口減少とまちの活気

 少子化に伴い、全国的に人口が減少しています。人口減少や少子高齢化に伴う人口構造の変化は、社会保障経費の負担の増大や空き家の増加などをもたらし、まちの活気を損う恐れがあります。現在、毎年少しずつ増加している本市も、市人口ビジョンでは、おおよそ2年後に、減少に転じると予測し、まちの活気を維持していくという、大きな課題に直面しています。

リノベのいばらきでまちの価値を高める

 活気を維持するために、本市が取り組んでいるのが「リノベのいばらき」プロジェクトです。これは、今後もまちを持続的に発展させていくために、定住・交流人口の増加だけでなく、まちづくりや社会活動などに参加する「活動人口」を増やすことを目的としています。DIYとリノベーションを切り口に「自分たちで、まちの価値を高めるまちづくり」を進めています。その一つがDIY工房の整備です。

若い世代が注目するDIY・リノベーション

 ではなぜDIY・リノベーションなのでしょうか。過去の調査では、20歳代・30歳代の地域活動や社会活動の参加割合は、40歳代以上と比べて15%以上低く、その理由として「きっかけがない」が多いことが分かりました。また別の調査では「DIY」「リノベーション」が、若い世代を中心に、おしゃれでかわいいというイメージがあり、さらに主に20歳~69歳の府民を対象に、昨年3月に市が行ったプロジェクトの市場調査からは、特に女性は20歳代、男性は40歳代がDIYに興味がある割合が高いことが分かりました(下記参照)。これらの結果から、DIY・リノベーションが、これまでまちづくりに関心のなかった若い世代が、楽しみながらまちとの関わりを増やすきっかけになる可能性が高いと考えています。

DIYをしてみたいか(プロジェクトの市場調査)
女性

20歳代
そう思う 52%
そう思わない 30%
分からない 18%

30歳代
そう思う 45%
そう思わない 38%
分からない 17%

40歳代
そう思う 41%
そう思わない 36%
分からない 23%

50歳代
そう思う 42.5%
そう思わない 38%
分からない 19.5%

60歳代
そう思う 37%
そう思わない 42.5%
分からない 20.5%

男性

20歳代
そう思う 44%
そう思わない 36%
分からない 20%

30歳代
そう思う 37.5%
そう思わない 36.5%
分からない 26%

40歳代
そう思う 56.5%
そう思わない 27%
分からない 16.5%

50歳代
そう思う 51.5%
そう思わない 27%
分からない 21.5%

60歳代
そう思う 54%
そう思わない 30.5%
分からない 15.5%

人やものを循環させ、まちに活気を

立命館大学 建築都市デザイン学科教授 武田史朗さん

 少子高齢化や人口減少、都市化などの社会構造の変化により、茨木のような市街地では人の転入出が多くなり、一つのまちの中で世代が入れ替っていくということが少なくなる場合が多いでしょう。特に若い世代が出ていくと、まちに活気がなくなっていきます。まちに活気をもたらすための手段の一つとして、企業誘致なども有力ですが、市民がさまざまな場面で活躍できることが大切です。転入してきた人も含め、多くの市民が活躍できる環境をつくり、活躍する市民を増やす、その結果として人やものが循環していき、まちに活気を広げていきます。

 リノベのいばらきは若い世代をターゲットとしていますが、DIY自体が子どもからお年寄りも楽しめる要素がありますので、世代間の交流も期待できます。また、地元の市民だけでなく市外から来た学生が連携するなど、外からの目線が取り入れられるので優れていると思います。DIYの知識を学んだ市民が別の場面でその知識を活用したり、別の団体と連携して新たな事業に取り組んだりと、長期に渡りさまざまな方面での展開が期待できます。

STEP2 プロジェクトの拠点 DIY工房

 阪急本通り商店街にあるプロジェクトの拠点「DIY工房」。ワークショップ等を行い、こども服のお店だった店舗を、市民の皆さんと一緒に楽しみながらリノベーションし、昨年12月10日にオープンしました。ここではハンドメイド作家など、市内で活躍しているさまざまな人の協力の下、棚や木工作品をつくるワークショップの開催や工具の貸し出し、DIYアドバイザーによる指導など、DIY・リノベーションの楽しさが味わえます。また、貸スペースとしてもご利用できます。

利用案内
日時
水曜日・木曜日・土曜日・日曜日
午前10時~午後4時
住所
元町3-39
費用
2時間 500円(1テーブル)
終日 1,500円(1テーブル)

全体貸切は1時間1,500円
指導は1時間1,000円(要予約)

 メニューや利用・予約方法についてはリノベのいばらきホームページをご覧ください。

1 解体
 リニューアルに向けた第一歩として、お店の壁紙や天井などをはがしました。DIYの経験がほとんどない立命館大学の学生を中心に、和気あいあいとした雰囲気の中で作業が行われました。
2 使い方を考える
 立命館大学の学生とDIYアドバイザーなどが工房前のカフェ「くものね」に集まっての話し合いや、工房のプレオープンイベント「リノベのいばらき×マルシェドママン」で、工房の使い方についてさまざま意見をいただきました。「手軽な金額で使えると嬉しい」「色々な人と交流できる空間にしたい」「休みの日に利用したい」など、実際に多数の意見が反映されました。
3 しっくい・壁塗り
 学生や親子連れなど約30人が参加し、塗料のモルタルや漆喰を丁寧に塗っていき、とても素敵な空間に仕上がりました。
4 完成
Interview

絹野 めぐみさん

 私は立命館大学の院生で解体ワークショップに参加しました。DIY経験がなくて作業自体は少し大変でした。でも、実際に体を動かして作り上げたものには、特別な愛着が湧いてきますね。これからも大学で学んでいることをプロジェクトに活かしていき、DIYにもまた挑戦してみたいです。

STEP3 みんなでリノベーション

工房で出会い、つながる

 DIY工房は、ただDIY・リノベーションができるだけの場所ではありません。家や学校、職場など日常の居場所以外に、気軽に集まれて居心地の良い場所「サードプレイス」となり、工房を訪れる人たちが、出会いつながることで、新たな幸せと豊かさを実感できる場所をめざします。

広がるリノベの輪

 DIY工房の完成でプロジェクトは終わりません。今後は、立命館大学をはじめとする市内大学や地元金融機関、商工会議所、市民活動団体、里山センター、商店街や子育て中の母親が集う店などと連携し、まちづくりや社会活動等で活躍する市民を増やす取組みを行っていきます。

私たちのまちのことは私たちで

 リノベのいばらきには「DIO(Do It Ourselves)」というキャッチフレーズがあります。これは「私たちのまちのことは私たち自身の手でする」という意味が込められています。まちを元気にするには、まちと関わり、まちづくりの活動をする人を増やしていくことが大切です。DIY工房で家族や友達と楽しくDIYをすることが、まちづくりや社会活動の第一歩となります。DIYを通じて、みんなでまちをリノベーションしてみませんか。

Interview 集まりたくなる場所へ

山下智子さん

 私はDIYが趣味で、その趣味が高じて、DIY工房のワークショップや講座の講師として呼ばれています。私がDIYを始めたのは、欲しいサイズのカウンターがお店になかったので作ってしまおうと思ったのがきっかけです。それから夢中になり、これまでにたくさんのものを作ってきました。

 DIYを始める時に一番困ることが、作業する場所がないことです。私も玄関で作業をしています。DIY工房ができることで、その問題が解決するだけでなく、工具も一式揃える必要がなくなるので、DIYをより始めやすくなると思います。

 DIY工房ではDIY以外の利用や講座も行われるので、色々な趣味を持つ人の交流が生まれるといいと思います。互いに趣味の幅や交友関係を広げられる、にぎやかで誰もが集まりたくなる、そんな場所になってくれると嬉しいです。

Interview

鈴木みどりさん
大悟さん・楓さん

 子ども2人と参加しました。こういった作業はお兄ちゃんの方が好きなのですが、妹もとっても楽しんでいました。私自身も昔DIYをしていたので、工具も借りられる便利な工房ができたら、またDIYを始めてみようかなと思いました。