広報いばらき

特集 その不安、相談しませんか

 不安定な雇用形態や失業などの仕事の問題だけでなく、心身や生活環境などさまざまな問題で生活が苦しくなる場合があります。そのような状況から自立し、安定した暮らしができるよう、今年4月から「生活困窮者自立支援制度」が始まっています。

問合先 福祉政策課 電話620-1634

生活

健康

仕事

お金

1 現状と新制度

市の現状

 生活保護受給者数は、全国的に増加しており、平成23年に過去最高に達してからも、増え続けています。本市でも生活保護受給率が、平成6年頃から緩やかに上昇し続けており、全国と同様の経過をたどっています。

 また、安定した雇用機会の縮小や勤労世代の所得の低下、コミュニティの機能低下による社会からの孤立化など、さまざまな問題を抱える個人や家族も増加しています。

 「生活困窮者自立支援制度」は、そういった人たち、またはその心配のある人たちが、生活保護を受給する前に、生活の不安を解決し、ひとり立ちできるよう支援を行うために、今年4月から始まりました。

相談は誰でも

 生活困窮者自立支援制度と聞くと、自分は生活に困っていないので関係ないと思うかもしれません。しかし、ついこの間まで日々の生活について心配がなかった人でも、会社の倒産や病気など思いもよらないことから、突然生活が立ち行かなくなることもあります。また、支援を受けるためには「収入は●円以下」「重い病気を患っている」などの厳しい要件があるのだろうと想像してしまうかもしれません。ですが、この制度には相談する人や相談内容に要件はありません。お金や生活などさまざまな悩みについて、誰でも相談することができます。

 具体的に本市ではどのような支援が行われているか、下記で紹介します。

安心して生活できるように

福祉政策課長 青木耕司

 今までは、生活保護の受給に至る前の早期支援が難しく、相談者に合った支援ができていない場合もありました。今回の制度は、内容にとらわれず、相談者を幅広く受け入れることができます。ためらわず相談に来てください。

 まだ始まったばかりの制度です。広く市民の皆さんに知ってもらい、「この制度があるから、安心して生活ができる」と思ってもらえるよう、支援内容を充実し関係機関との連携を深め、より良い制度にしていきます。

2 支援の内容

自立のための力を養う

 この制度がめざすのは、日常生活を送ることに困っている人の自立です。ここで言う自立とは「他者からの援助を受けずにひとり立ちすること」ではなく、「自分の決定によって主体的な生活を営むこと」を意味しています。そのため、基本的に現金の給付ではなく、相談者が、安心して社会生活を送ることができるよう、アドバイスをしたり、いろいろな経験を積むサポートをしながら、自立のための力を養っていくことを支援します。

一つの窓口から複数の支援へ

 生活に困っている人が抱えている問題は一つではないことがほとんどです。これまではさまざまな相談を一括して受け付ける仕組みや窓口がなく、そのため相談者に余計な負担をかけてしまうこともありました。

 新しい制度では、一つの窓口で相談者を各支援事業につなぐほか、関係機関と連携し、適切な支援を行うことで、相談者が利用しやすくなりました。また、必要な場合は生活保護へのつなぎも行っています。

一人ひとりにあったプランの提供を

 市が行う支援事業の内容は、幅広いものになっています(下記の市の支援事業参照)。新しい制度では、さまざまな支援事業を最大限に活用してもらうため、相談を受けるとまず、相談内容から一人ひとりの状況に適したプランを作成します。その際、相談者の意思を尊重しながら進めていきます。作成されたプランに基づいて相談者が自立した生活を取り戻せるよう、各種事業・制度の活用を支援します。その後も、状況の変化や相談者の意向によって、プランを見直しながら、自立まで相談者を支えます(下記の相談から支援までの流れ参照)。

相談から支援までの流れ
(1)まずは相談窓口へ

ひとりで悩まずにまずは相談を(電話も可)。

(2)生活の状況を分析

生活の状況と課題を分析。

(3)あなただけの支援プランを作成

相談者の意思を尊重しながら、自立に向けたオリジナルのプランを作成。

(4)サービスの提供

支援プランに基づいて、各種サービスを提供。

(5)定期的な状況確認

支援の状況等を定期的に確認。状況によっては、支援プランを再検討。

自立した生活へ

支援は地域からも

 生活に困っている人の中には、社会的に孤立している人も多くいます。そういった人たちは、自分から相談に来ることが難しく、周りが発見することも困難です。そのような時に、頼りになるのが民生委員やCSW(コミュニティソーシャルワーカー)です。民生委員は地域住民の立場にたって生活上の相談に応じるボランティアで、市内では約400人が活動しています。CSWは支援が必要な人やその家族に、生活環境や人間関係を重視したサポートを行っています。両者とも、地域の中で、生活に困っている人を見つけ出し、支援をしています。

市の支援事業

就労訓練事業 まずは短時間の軽作業から

一般の企業などでの就労が困難な人には、短時間の軽作業(清掃、リサイクル、農作業など)の機会を提供して、就労に向けた訓練を行います。それとあわせ、就労支援プログラムに基づき利用者の状況に応じた就労の機会を提供します。

事業者インタビュー
庄栄エルダーセンター 理事長 中尾 巌さん

まずは訓練の中で、お互いを知り、人間関係を深めていくことが大事です。農作業や軽作業で体を動かしながら、体力やコミュニケ—ション能力を養っていきます。その中で、どういった仕事がしたいのか、また向いているのかを知ることができれば、次の支援にもつなげることができます。

就労準備支援事業 社会に出るための基礎を養う

「社会参加に不安がある」「人とコミュニケーションがうまくとれない」など、すぐに就職することが困難な人には、基礎能力を養いながら、就労に向けた支援や社会的な居場所の提供などを最長で1年間行います。

住居確保給付金の支給 住居を確保して就労を支援

離職などにより住居を失った人またはそのおそれの高い人に、就職に向けた活動をすることを条件に、一定期間(原則3か月)家賃相当額(上限あり)を支給します(一定の要件あり)。生活の土台となる住居を確保したうえで、就職活動の支援を行います。

自立相談支援事業 あなただけのプランを作成

相談内容に応じ、一人ひとりに合わせたプランを作成し、制度や事業などのサービスの提供につなげます(弁護士による法律相談もあります)。

一時生活支援事業 緊急時に衣食住を提供

住むところがないなど住居が不安定な状況にあり、生活に困っていて収入等が一定水準以下の人に、ごく短期間、宿泊場所や衣類、食事を提供し、あわせて退所後の就労支援などを行います。

家計相談支援事業 家計の立て直しをアドバイス

失業や借金など根本的な課題を理解し、相談者が自ら家計を管理できるようにキャッシュフロー図を作成し、家計の状況を把握しやすくします。状況に合わせた支援計画の作成や関係機関へのつなぎ、必要に応じた生活福祉資金の貸付の相談などを行います。

事業者インタビュー
市社会福祉協議会 佐村河内 力さん

相談者の収入と支出を見ながら、改善すべき点を一緒に考えていきます。収支のバランスが悪いことが多いため、どちらかを改めていきます。継続的に支援するので、本人の意思を尊重し、信頼関係を築くことがとても大切です。相談者に寄り添いながら、自立できるよう支えていきます。

3 相談から自立へ

勇気を出してSOSを

 自立するために大切なのは、早期発見・早期支援です。状況が悪化してしまってからでは、自立が難しくなります。生活に不安を抱えている人は、ひとりで抱え込まずに、市にご相談ください。また、窓口まで相談に来ることが難しい場合には、電話での相談も受け付けています。

 また、皆さんの地域にいる民生委員やCSWは、地域の事情にも詳しく、気軽に相談できます。

 はじめは本人でなく家族や友人など周りの人からの相談でもかまいません。勇気を出してSOSを発信してください。

ひとりではなくみんなの力で

 自分の悩みを誰かに打ち明けることはとても勇気がいることです。ですが、ひとりでは解決できないこともあります。個人ではどうしようもないことでも、市や地域、関係機関などみんなの力を合わせれば、状況が好転するきっかけが見えてくるかもしれません。実際、この制度を利用して自立できた人もいます。誰かに助けを求めることは決して恥ずかしいことではありません。

 「生活に困る」それはいつ誰の身に起こっても不思議ではありません。大切なのは相談できる人や場所があることです。市では複数の相談場所を用意しています(下記参照)。どこに相談してもかまいません。「自立」をめざして、まずは「相談」から始めませんか。

ご相談はこちらまで 福祉政策課窓口

生活に困っている人やその不安を抱えている人は、まずは電話または窓口まで足を運んでください。相談支援員が話をうかがいます。

問合先
市役所南館3階
福祉政策課 電話620-1634
こちらでも相談できます 民生委員

生活のことなどで悩んでいるときは、近くの民生委員にご相談ください。地域の身近な相談相手として相談に応じます。

福祉まるごと相談会

市内各所の公民館やコミュニティセンターなどで定期的に開催しています(詳細は12月の無料相談ホームページ参照)。福祉のことから地域の困り事まで相談に応じます。

CSW(コミュニティソーシャルワーカー)

2〜3小学校区に1か所の割合で市内14か所に福祉の専門員を配置しています。お気軽にご相談ください。

Interview 外に出るきっかけが大切

平野滋也さん(35歳)

 18歳から家の仕事の手伝いをしていましたが、いつの頃からか手伝いをやめ、家から全く出なくなりました。そんな中、父が重い病気を患い、入院したんです。世話になり続けていた父に、恩返しがしたいという気持ちが込み上げた時に、この制度のことを知り、市の窓口に足を運びました。

 就職のために、色々な関係機関を紹介してもらい、たくさんの支援を受けることができました。その中で一番心に残っているのは、農作業を行う職業訓練です。外に出て仕事をすることは、長い間、太陽の光を浴びてこなかった私には新鮮で、指導担当者をはじめ多くの人と接することで人の優しさに触れることができました。短い期間でしたが、私にとってはかけがえのない経験です。

 今は就職に向けて、アルバイトをしながら、会計事務を学んでいます。この制度がなかったら、きっとまだ家から出ていないと思います。きっかけさえあれば外に出られる。そのきっかけが大切だと感じました。

Interview 話を聞いてもらえて楽になった

小森伸治さん(59歳)

 個人で運送業を営んでいましたが、収入が安定しなかったんです。転職を考えたのですが、新しい就職先がなかなか決まらず、お金に困るようになってしまい、友人にも相談できずにいました。そこで、市に電話で相談したところ、新しい制度のことを教えてもらい、支援を受けることを決意しました。

 相談員が私の話を親身に聞き、弁護士への相談やハローワークとの連携など、私に合った支援を選んでくれました。おかげで、お金の整理もつき、新しい職場も見つかりました。今では自分で仕事をしながら家計も管理し、生活もだいぶ安定してきました。

 あの頃のことをふり返ってみると、私一人では自立は難しかったと思います。何より、ありがたかったのは、話を聞いてもらえたことです。精神的につらかった部分が楽になり、周りからも表情が明るくなったと言われるようになりました。あの時、勇気を出して相談してみて本当に良かったです。