広報いばらき

文化財めぐり

問合先、文化財資料館 電話634-3433

Vol.111

竜王山の山岳信仰と道標

 日本には、古くから山に神が宿るという山岳信仰が根付いています。北摂に連なる山々にも信仰は存在し、市北部の竜王山も、その名の通り龍神が宿る山として崇められていました。山のふもとに位置する忍頂寺は、高槻の神峰山寺、箕面の勝尾寺などとともに多くの信者を抱えた山岳寺院であり、山で修行をすることで悟りを開こうとする修験道の拠点として繁栄しました。

 かつての信仰をしのぶことができる道標が、忍頂寺の正門付近に残されています。2本並んだ道標のうち、背の低い方は竜王山への道案内。道標を立てた人物の名前が彫ってありますが、この人は「設立者」ではなく「施主」とされています。「施主」は物品を寄付した人のことで、仏教ではそれが功徳になるとされていることから、この人物の信心深さが分かります。また、背の高い方の道標は高槻の神峰山寺への案内であり、「日本最初神峰山寺毘沙門天王道」と刻まれています。「日本最初」というのは神峰山寺が日本で初めて毘沙門天を本尊とした寺とされているためで、わざわざ道標に記したところに強い信仰心が伺えます。

 雄大で、時に厳しい一面を見せる山々。当時の人々はその峰を歩くことで、山の偉大な力を感じながら、自身の信仰を深めていたのでしょう。

 なお、竜王山の山岳信仰について、文化財資料館でテーマ展を開催します(特集2のホームページ参照)。ぜひお越しください。