広報いばらき

市史編さん室だより

費用の記載がない場合は参加無料。定員・申込などの記載がない場合は事前申込不要または当日直接会場へ。

其ノ30

問合先、市史編さん室 電話622-2184

パッと開いた“大空の花” わが国最初のパラシュート塔

 昭和13年(1938年)、茨木町の郊外に異様な建造物が出現しました。それは木造で、高さ50メートルをこえる巨大な「やぐら」でした。当時の新聞記事によると、これは日本最初の「パラシュート塔」で、建てたのは日産パラシュート製作所。場所は、現在の阪急茨木市駅の東側にあった5,000坪の土地だと報じられています。

 この塔には、先端の50メートル部分と途中の30メートルの部分に、飛び込み台のような「飛降台」があり、そこからパラシュートを背負って飛び降りることで、開き具合などをテストしたようです。設置者は、パラシュート塔の利用を、性能テストだけでなく、「大空を舞うスリルを楽しむ近代スポーツにしよう」と意気込んでいたようです。

 しかし、テスト当日飛び降りたのは人ではなく、作業服姿の人形でした。人形を吊るしたパラシュートは、飛降台から投げ出されたあと、地上25メートルのところで「見事大傘をひろげて鮮やかな征空振りをみせ観衆をうならせた」と新聞には書かれています。まるで、大空に咲いた花のようだったのかもしれませんね。

 残念ながら、このパラシュート塔のその後の詳細については分かっていません。写真にみえる一本のはしごで、50メートルの木造の不安定なやぐらを上がると考えただけでもぞっとしますが、果たしてこの塔から実際に飛び降りた人はいたのでしょうか。また、この塔はその後どうなったのでしょうか。もし、ご存じの人がいましたらご一報ください。

 なお、この新聞記事は市史編さん室が発行している新修茨木市史史料集19「新聞にみる茨木の近代5」に収録されています。同史料集は明治12年から、第二次世界大戦が終わった昭和20年までの茨木市域に関係する記事を集成したもので、このほど全巻が完結しました。市民相談室などで頒布中(1部1,000円)ですが、図書館にもありますのでどうぞご覧ください。