広報いばらき

特集 北部地域最前線

自然や独自の歴史など魅力が多い市の北部地域。

いま、そこで市の未来を見据えた重要なプロジェクトが進んでいます。

今回の特集では、そのプロジェクトによって生まれる

新たな北部地域の魅力に迫ります。

問合先 北部整備推進課 電話620-1609

魅力あふれる北部地域

北部の魅力

 自然豊かな山間部が広がる北部地域。そこには、さまざまな魅力があふれています。農業や林業など、山間部ならではの産業や、そこから生み出される特産品の数々。また、かつて隠れキリシタンたちが住んでいた地域には当時の信仰がしのばれる遺物が残され、今もその歴史に触れようと足を運ぶ人が絶えません。さらに、山間部の澄んだ空気の中での運動は気持ち良く、山あいのスポーツ施設でさわやかな汗を流す人も多くいます。

 今、その北部地域が、大きく変わろうとしていることを皆さんはご存じでしょうか。

北部で進むプロジェクト

 市が現在、取り組んでいる「5大プロジェクト」。「立命館大学大阪いばらきキャンパスの開設」・「(仮称)JR総持寺駅の開業」・「彩都(国際文化公園都市)のまちづくり」・「安威川ダムの建設」・「新名神高速道路の建設」の5つをさします。そのうち、「安威川ダム」・「新名神高速道路」・「彩都」の3つは、市の北部地域で府など関係機関と連携しながら、進められています。5大プロジェクトは、いずれも茨木という都市の将来を大きく左右するもので、それらが同時に進行している北部地域は、まさに重要な時を迎えています。

 これらの大型事業を、普段の生活からは縁遠いものと感じる人も多いのではないでしょうか。確かに、ダムや高速道路といったハード面の整備については、市民の皆さんは接する機会が少ないかもしれません。しかし、これらによって、まちの魅力が大きく向上すると言ったら、皆さんはどう感じるでしょうか。次のページからは、北部地域で進むプロジェクトの「今」を追うとともに、それらがもたらす新しい「未来」の姿について紹介していきます。

北部地域の魅力

農・林
緑が豊富で、農業も盛ん。里山センターや青少年野外活動センターなどでの体験活動やイベントで、自然を満喫できます。
新鮮な野菜やお米だけでなく、米粉パンや野菜のジェラートなども楽しめます。これらは野菜等の直販所「見山の郷」で購入できます。
歴史
隠れキリシタンの里と呼ばれる千提寺地区。マリア十五玄義図などの文化財をキリシタン遺物史料館で見ることができます。
スポーツ
きれいな空気はスポーツにぴったり。忍頂寺スポーツ公園や桑原運動広場などの充実した施設で気持ちの良い汗を流せます。

人を守り魅力を育む安威川ダム

人命や市街地を守る

 昨年11月に本体部分の起工式が行われ、本格的に工事が始まった安威川ダム。その目的は安威川の治水です。昭和42年(1967年)、北摂豪雨による水害で、本市を含む周辺地域は61人の死傷者を出すなど甚大な被害を受けました。これを受けて府は、河川改修と安威川ダム建設を決定しました。ダムが完成すれば、時間雨量80ミリメートルの大雨で想定される被害を防ぐことができます。ダムは、人命はもちろん、市街地や鉄道・幹線道路等の交通網などを災害から守り、市民の日常生活を維持するための重要な施設です。

 現在、ダム建設予定地の谷を削る作業や、一時的に川の流れを変える転流工を施工しており、ダム本体の完成は平成32年(2020年)の予定です。

北部地域の観光拠点に

 市ではダムをいかした新たな地域づくりを始めようとしています。

 安威川ダム周辺は、特別天然記念物のオオサンショウウオをはじめとする約4千種類以上の動植物が生息しています。また、人と自然の関わりから生まれた里山や棚田が広がっています。これらの恵まれた環境に加え、ダム湖が新たに生まれることで、その地域を「自然の中で過ごす休日」などをコンセプトにしたレクリエーションの場として活用することが可能です。特に、近くには運動広場があることから、ダムと運動広場を含めた周辺地域でスポーツ系のレジャーを充実できるよう、検討しています。

 ダムを「治水施設」としてとらえるだけではなく、その特性をいかしながら周辺の施設などと連携して独特の魅力を作り上げていく。そうすることで、市民だけでなく、市外からも人々が気軽に訪れ、楽しいひと時を過ごすことができる憩いの場所となるよう取組みを進めています。

車作自治会長 大迎正和さん

 車作は緑豊かでのどかな地域です。ダムができると聞いた時、正直住民の間に不安はありました。しかし、府や市、事業者と話し合う中で、生活再建、環境保全など「地元の思い」もちゃんと聞き入れてくれて、ダム建設に協力しようということになりました。皆さんの尽力のおかげで建設が始まった安威川ダムであり、ダム湖や自然をいかした魅力あるダムとして、地域を盛り上げて欲しいです。

北部地域への架け橋 新名神高速道路

従来の交通機能を補完

 新名神高速道路は、名古屋市から神戸市にまたがる約174キロメートルの高速道路です。現在の交通の要である名神高速道路では渋滞が頻発し、本来の機能を十分に発揮できていません。その状況を是正するため、平成28年度末の供用開始を目標に、建設が進められています。

 完成すれば名古屋~神戸間の時間が大幅に短縮されることや、大規模な災害時にほかの高速道路ネットワークが機能停止した場合の代替道路としての役割を果たすことが期待されています。

特色ある地域づくり

 本市域内では千提寺地区に(仮称)茨木北インターチェンジ(以下IC)が設けられ、全国と高速道路網でつながることになります。既存の高速道路や主要道路は市内中心部を通っていますが、ICができれば、遠方からでもダイレクトに北部地域にアクセスできるようになります。またICまでの道路が整えば、市内中心部からの利便性が格段に増します。とは言え、実際に北部地域を訪れて、その魅力に触れてもらうためには、特色ある地域づくりが必要不可欠です。

 そこで、市は、ICとパーキングエリアができる予定の千提寺地区が隠れキリシタンの里であることに注目しました。既存のキリシタン遺物史料館と、それら地域の特性をいかしたまちづくりを進め、北部地域のほかの資源をいかしながら、多くの人に地域の魅力を感じてほしいと考えています。

 さらに、広域医療の拡大や文化交流・産業・経済の活性化など、市民生活へのさらなる貢献も期待されています。

千提寺自治会長 中谷 光さん

 千提寺は隠れキリシタンの里として有名です。そこに高速道路が通るということは、今までこの付近に来たことがない人も訪れてくれる可能性が高くなるということ。隠れキリシタンという魅力を肌で感じてもらうには、うってつけだと思いました。住民が一丸となり、市と協力することで、この地域ならではの魅力の発信ができるような環境ができれば良いなと思います。

彩都は新たなステージへ

複合機能都市「彩都」

 彩都は、平成16年(2004年)に本市北部から箕面市東部の丘陵地にまたがって誕生した新しいまちです。西部・中部・東部の3つの地区に分かれており、このうち西部地区は、昨年まちびらき10周年を迎えました。

 人口は本市域と箕面市域を合わせて1万人を超え、今後も増加が予想されています。人口の増加に合わせて、西部地区では商業施設、幼稚園、小・中学校や大きな公園などができました。また、モノレールのほかに彩都と中心市街地を結ぶバス路線が開通するなど、生活の利便性はますます向上しています。さらに、バイオや医薬等の関連施設が並び立つシンボルゾーン「ライフサイエンスパーク」では、事業用地全20区画に企業が立地することが決まりました。まちびらき当初とは大きく様変わりし、自然と都市が調和した「働く、住む、学ぶ、憩う」ことのできる複合機能都市として成長しています。

さらなる躍進に向けて

 まちびらきから10年という節目を迎えた彩都は、さらなる躍進に向けて中部・東部地区も動き始めています。

 中部地区は来年春の宅地造成工事完了に向けて、都市再生機構が整備を進めています。また、物流施設等の進出も決まっています。

 東部地区については、来年度の一部地域の事業着手に向けて、官民連携による取組みを進めています。

 このように西部地区と同様、中部・東部地区も活気づき、彩都全体がより魅力的な都市へと進みだしています。

彩都西自治会協議会長 松本和久さん

 まちびらき当初から彩都に住んでいますが、10年が経ち、住民・企業・公共施設が増えて彩都は活気づいています。自治会数も10となり、住民同士のつながりも強くなっています。その最たる例が彩都夏まつり。毎年、彩都の西部地区をあげて開催し、昨年は8,000人近くの来場者がありました。今後は交番ができるなど、彩都の安全・防犯が強化されていけば良いと思います。

北部地域からにぎわいを

まちの未来を決めるのは地域の思い

 北部地域で展開されようとしている、新しい未来の茨木。しかし、それを実現するためには、絶対に欠かせないものがあります。

 それは、市民の皆さんの「自分が住む地域が好きだ」という気持ちです。

 もちろん、ハード面の整備は、自治体等が行うべきものですが、そのハードが整ったとき、それをどのように活用していくかには、地域の協力が欠かせません。なぜなら、その地域の進むべき道や、その魅力は何なのかを最も良く知っているのが、そこに住む皆さんだからです。

 実際に、北部地域のプロジェクトにも、地域が積極的に関わっている事例があります。

 たとえば、安威川ダム周辺の魅力と課題、将来像などについて考える「ワークショップ」。平成25年に設けられ、今までに10回行われてきました。地域住民や市観光協会などが参加し、ここで話し合われたことはその後のまちづくりに役立てられています。昨年、ダムの魅力を知ってもらうために開催された「安威川フェス2014」のプログラムも、ワークショップで出された意見をもとに実現されたものです。

 また、千提寺地区では、新名神高速道路のICができたとき、より魅力ある地域だと感じてほしいという思いのもと、地域住民が「千提寺まちづくり委員会」を発足。「隠れキリシタン」という資源を発信するためのイベント「千提寺さと巡り」を始めました。3回目となる次回は、4月に行われます(「イベント」ページ参照)。

にぎわいは広がっていく

 地域に住む人たちが地域の魅力に気づき、育み、発信していく。今、北部地域で活発になりつつあるこの動きは、市民が主役のまちづくりの姿です。そしてそれは、地域を問わずめざすべき姿でもあります。

 大きなプロジェクトをきっかけに起こった北部地域のまちづくりがもたらすにぎわいは、遠からず、ほかの地域の皆さんの元へも訪れることでしょう。そして、それをきっかけに、より多くの地域の人たちがにぎわいをつくり出そうと立ち上がったら、市の魅力はより一層高まっていくのではないでしょうか。市民の皆さんがまちづくりの「最前線」に立つこと、それが将来のまちのにぎわいにつながっていきます。

地域と一緒に魅力をつくる

北部整備推進課長 浦野芳博

 北部地域は大きなポテンシャルを秘めた地域です。3つのプロジェクトはもちろん、4月には人工芝運動場を備えた桑原ふれあい運動広場が開設されますし、旧北辰中学校跡地を「農・林」と「食」の分野の新たな魅力の一つとして活用していく計画も進んでいます。しかし残念ながら、市民でも北部地域の魅力を知らない人はたくさんいます。まずは市民が地域の魅力を知り、誇りや郷土愛を持ってもらう。そこから同じ気持ちを持った仲間たちとのつながりを作ってもらうまでが第一歩です。

 ダムや高速道路にはそれぞれに大切な役目がありますが、作って終わりではありません。本当に大切なことは作ったものをどういかしていくか、地域住民と市が一緒になって考えていくことです。地域住民の情熱をくみ取り、より良いまちづくりができるように市がサポートする。このように、熱意や積極性を持った地域と市が連携すれば、今ある魅力と新しくできる魅力を掛け合わせたより良い魅力をつくっていくことができると思います。