広報いばらき

文化財めぐり

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Vol.107 三咲町の風雅な道標

 田中町から三咲町へ行く道路の西側に、旧街道が残っています。その旧街道の傍らに、高さ1mほどの道標が立っています。この道標が立てられたのは、寛政9年(1797年)9月で、市内にある製作年代が分かっている道標の中では最古のものです。正面には「すくそうちし」(すぐ総持寺)、裏面には「すくかちをてら」(すぐ勝尾寺)の記載があり、両面に「大坂」と「丹波」の方角を示す記載もあります。

 この道標には、市内のほかの道標には見られない特徴があります。それは、道標上部の四角すい部分の南北の面にそれぞれ刻まれた「禽」、「亀」の文字です。中国には、四神(青竜・白虎・朱雀・玄武)がそれぞれ四つの方角(東西南北)をつかさどるという思想があります。このうち南の方角を示すのが朱雀であり、道標の南の面には鳥を意味する「禽」の文字が、また、北の面には北の方角を示す玄武を表した「亀」の文字が刻まれたと推測できます。現在では風化によって凹凸がなくなり、読みにくくなった文字ではありますが、200年以上も前にこの道標を立てた人の風雅なさまがうかがえます。