広報いばらき

特集1 つくろう地域色

問合先 市民協働推進課 電話620-1604

「あなたの住む地域はどんな地域ですか?」

 この質問にすんなり答えられる人はどれくらいいるでしょうか。地域の特色を知るには、地域との関わりが不可欠です。自分の住む地域と関わることは煩わしいものでしょうか。それとも生活を豊かにしてくれるものでしょうか。

 今月の特集では、茨木の地域活動の現状を紹介し、これからの地域のあり方を考えます。

地域活動してますか?

生活の近くにある地域活動

 私たちは普段、日々の生活を「地域」の中で送っています。「地域」は、一定の範囲の地理的空間の中に存在する人や事業所、施設などによって形成されています。そこでは、さまざまな結びつきによって自治会、こども会、老人クラブ、自主防災会など数多くの団体が組織され、活動を行っています。そうした活動に参加することで、普段の生活に必要な情報が得られたり、近所に住む人たちとの親睦が深まったり、さらには地震などの災害時に助け合う大きな力になったりと、生活を豊かにする数多くのメリットがあります。

地域活動の厳しい現状

 ただ、地域活動を取り巻く現状は明るいものばかりではありません。平成23年に市が実施した「地域コミュニティに関するアンケート」で、さまざまな地域活動への参加状況を調べたところ、すべての項目で参加者の割合が30%に満たないという厳しい結果でした。活動への参加に積極的でない主な理由としては、「時間に余裕がない」、「参加のきっかけがない」、「役員になると大変」などがあります。現状では、活動に参加することによるメリットよりも、負担感の方が上回っていることがうかがえます。自治会をはじめとする地域の組織が共通して抱える課題は、役員のなり手不足や活動の形骸化、また、組織の運営や活動への無関心層の増加です。この問題がさらに深刻化していけば、役員の固定化・高齢化や活動内容のマンネリ化につながり、組織としての力は衰退していってしまいます。

各地域コミュニティ活動に「参加している」と回答した割合

(1)地震、風水害等に備える自主防災の活動 10.6%
(2)地域の安全を見守る、防犯・パトロール活動 11.5%
(3)ごみ収集・花植替・清掃などの環境活動 29.6%
(4)高齢者・障害者などに対する福祉活動 5.8%
(5)子育て支援に関する活動 6.3%
(6)青少年健全育成に関する活動 4.8%
(7)こども会、PTA活動 10.4%
(8)地区体育祭などのスポーツ活動 18.6%
(9)趣味の活動や文化展などの文化活動 14.4%
(10)地域イベント(お祭りなど)の運営 16.1%
(11)歴史、文化の継承活動 4.2%
(12)生涯学習の推進活動 5.7%

大切とは思っているけど

 一方で、アンケートでは、これからの地域での生活において、こうした地域にある組織の果たす役割が「大きくなる」と考えている人が多いことも分かっています。また、地域が抱える課題を解決するためには、行政の協力や支援の下で「地域住民が主体となって」取り組むことが望ましいとの意見が多くなっています。つまり、地域活動の必要性や大切さは感じているのに、その活動への参加には積極的になれないという一見矛盾したような状況が生じていることになります。

生まれ始める「地域自治組織」

 こういった状況の中で、住民自治の強化や行政と住民との協働を進めていくために求められているのは「今よりも効率的かつ効果的」な仕組みづくりです。そこで近年、注目を集め全国各地で生まれ始めているのが「地域自治組織」です。地域自治組織は、地域内の既存の団体が中心となり、その団体に関わる住民や、地域行事に参加する住民が広く協力し合い、より活発な地域活動を推進していこうというものです。地域自治組織ができることによって、年代・性別を超えて、より幅広い住民が住民自治を進めるための1つの協議の場に参加することができるようになります。そこでは今までになかったアイデアが生まれたり、それまでの活動がより魅力的なものへと生まれ変わったりということが期待できます。また、それまでは各団体が別々に行っていた活動を地域自治組織で一本化することで、重複を省いた効率的な活動になり、各団体の役員を中心とした、運営に携わる人の負担が軽減されることも大きな利点の一つです。

先進地域の実例を見る

 そうは言っても「今の団体運営だけでも精一杯なのに、この上新しい組織を作るなんて」、「ほかの団体や住民と一つの組織を作ろうと思っても、何かのきっかけがないと難しい」と、地域自治組織の設立へ不安を感じるという意見があるのも事実です。市内には、既に地域自治組織として活動を始めている先進地域があります。その一つ、郡地区で設立されている地域自治組織の活動と成果をご紹介します。

地域自治組織のイメージ

自治会、PTA、自主防災会など
地域の中のさまざまな団体が参加する

意思決定
地域全体の事柄について1つの協議の場を持ち、行事などの方向性について決定する

効率的で効果的な組織運営へ

前に進む地域のちから

最初は大変でも

 郡小学校区では、もともと自治会をはじめとする地域の各団体が個々に活動をしていました。複数の団体の役員を掛け持ちしている人は、それぞれの会合をこなすだけでも大変な負担です。そこで平成24年、同地区の地域自治組織である「郡まちづくり協議会」が設立されました。しかし、すんなりと設立までたどり着いたわけではありません。最初に協議会設立の話が持ち上がった時には、地域の中に反対する声もありました。会長の菱本哲造さんは「それまで活動をしてきた各団体が、新しい組織ができることで独自性が失われるのではという懸念が強かったんだと思います」と話します。それでも、協議会設立をめざすメンバーが根気強く説明や話し合いを重ねたことで、最終的には地域の協力を得て協議会が設立されました。

楽に、効果的に

 協議会を設立した効果は、早い段階から活動の効率化という形で現れます。協議会の設立を契機に、それまで各団体が行ってきた行事を洗い直す作業を行いました。すると、同じような時期に同じような行事をいくつもの団体が行っているというようなことが次々に見つかりました。仮にその全てに役員として関わったとしたら、その労力はとても大きなものです。そこで協議会では行事を統合する、役員間の連絡にメールを活用するなどの工夫を行い、結果、地区によっては役員の会合の回数が半分以下に減るようなケースも出てきました。特に家事や子育てと地域の活動とを両立している母親世代の人からは、負担が減って楽になったと好評です。また、防災訓練は、各団体が別々に小さい規模で行うより、地域全体で大規模に行う方が、実際に災害が起こった時に近い状況下での訓練を行うことができ、一層効果的なものになりました。

一つになってより良く

 続いて取り組んだのは、各団体がそれぞれで発行している会報などの見直しと「郡まちづくりだより」の発行です。各団体の主催行事の予定や、地域の中の出来事を一つにまとめて見られるよう、協議会の設立から約一年半が経過した昨年、市の交付金も活用して創刊にこぎつけました。地域の人たちが読みやすいようカラー印刷にし、配布も自治会を通じて全戸に行っています。協議会でも地域の中で定着してきたと手ごたえを感じています。半年に1号のペースで発行され、まもなく第4号が発行されます。

さらに活力あふれるまつりに

 また、地域にとっての大イベントである夏の「郡ふるさとまつり」の運営も、協議会の主催へ移行しました。以前は、毎年まつりの開催前に、各団体からメンバーを集めて短期間の実行委員会を組織していました。常設の協議会の主催になったことによるメリットは、しっかりと準備の期間をとることができるようになった点です。長い間地域で愛され、地域住民の集いの場となっているまつりに、更なる活力を与えていくことが、協議会の目標です。今年のふるさとまつりも、たくさんの人が訪れ、大変なにぎわいを見せました。

地域でつくるふるさとまつり

地域のおまつりには、その地域ならではの良さがありますね

年齢・性別に関わらず、地域みんなが参加して盛り上がっています。

持続可能な地域へ

 地域活動に必ずつきまとう悩みの種である役員などの人材不足について、菱本さんはこう話します。「協議会のおかげで、地域の中のさまざまな団体のメンバーと顔が見える関係ができたことで、何か困ったことがあったときに助け合える人の数が増えました。今後の人材育成については、難しく考えるよりも、まず気軽に地域の行事に顔を出してくれる人が増えればいいなと思っています。そういう人の中から、地域のために協力してくれる人が出てくる。それでこそ持続可能な協議会であり、地域なんだと思うんです」。

好きと思えるまちづくり

 「自分たちの地域のことについては、まず自分たちが一所懸命に考える。それでも解決できない問題は行政やほかの地域の力を借りる。これが本当の意味での住民自治です。一所懸命に地域のことを考えるためには、この地域のことを好きと思えなければいけません。協議会にはまだまだ課題が多いですが、住民の協力や制度の整備など、これからどんどん良くなっていく可能性を持っています。だから、私たちは今、地域を盛り上げようと頑張っているんです」。力強く話す菱本さんをはじめ、協議会のメンバーたちの視線はこれから先を見据えています。

地域づくりを応援します

地域の活性化をサポート

 地域が活性化するためには住民自らが考え、決定し、行動していくことが大切です。しかし、住民の力だけでは解決しにくい問題も多く存在します。そこで市では、平成24年10月に「市地域コミュニティ基本指針」を定め、地域の自主性を損ねることの無いように配慮しながら「場所・人・モノ」など、さまざまな面からサポートをしています。

住民による地域活動の拠点 コミュニティセンター

 市政施行以来、社会教育の地域拠点として公民館を、また、約20年前からは、地域住民の活動の拠点としてコミュニティセンターを、各小学校区に設置してきました。現在は、地域住民による施設の運営や活用を推進するため、公民館をコミュニティセンターとする再整備を進めています。コミュニティセンターの運営は主に、その地域内で構成される管理運営委員会や地域自治組織が行い、運営内容等について、地域住民の意思を反映して決定することができます。市内ではコミュニティセンターごとに特色ある取組みを進める動きも見られます。

コミュニティセンター

 大池コミュニティセンターは、昨年、公民館からコミュニティセンターに移行しました。「自分たちの地域は自分たちで守る」という考えの下、急な災害時に避難してきた住民の水源として役立つ防災井戸を設置しました(飲用は不可)。これは、大池地区の地域自治組織「大池地区自治連絡協議会」の中で検討を進め設置したもので、組織内で防災用に積立を行っていたお金から費用を捻出しました。さらに同地区では、今後コミュニティセンターをより地域組織や住民が集いやすい雰囲気の場所にするため、館内照明のLED化などを検討しています。

地域と行政とをつなぐ 地域担当職員

 また、地域の連携促進を図り、地域との顔の見える新たな関係づくりを進めるため、平成20年度から地域担当職員制度を設けています。地域担当職員が担う役割は大きく分けて(1)地域の実態把握、(2)情報の提供、(3)課題解決への助言、(4)提言・アイデアの受付、(5)組織化の支援の5つです。従来は職員が通常の職務との兼任で地域担当職員の職務にあたっていましたが、昨年度からは専任の地域担当職員2人を配置し、より支援・連携の体制を強化しています。地域の中の話し合いで見つかった課題を拾い上げ、解決に向けて支援しています。

地域担当職員

染川誠一

職員も共に成長
 地域担当職員の制度は、われわれ職員を育てる制度だとも思っています。職員が地域の声を聞いて地域で起こっていることを知る。それは、市の職員として仕事をしていくうえで、とても大切なことだと思います。今後、職員が今より積極的に地域に参加していくことで、地域力と職員の力が同時に向上していくのが、この制度がめざす理想ですね。

酒井 博

地域との橋渡し

 地域担当職員の仕事を一言で表せば「地域と行政の橋渡し役」です。普段から地域の行事に顔を出したり、会合に呼ばれて出向いたりと、地域の人たちと互いに顔の見える関係作りをすることが第一歩です。そして、地域課題解決のため、さまざまな機関との間をつなぎます。その地域の人たちと活動を共にした分だけ、地域とのつながりが強くなると感じます。

地域自治組織を作りやすく

 市では、今後地域自治組織が住民自治の中心になると位置づけ、その結成に向けた動きを助けるため、昨年度から地域自治組織の登録制度と結成等の支援をする交付金制度を設けています。この交付金は、組織についての理解を深める研修や、地域情報誌の発行など、結成前後に必要な取組みをサポートします。

 今後は、従来各団体個々に対して支給されていた補助金などの交付の方法も見直し、地域自治組織が自ら考え、その使途に主体性・独自性を出すことのできるよう、さまざまな補助金を地区単位で一括化する検討を進めています。

地域自治組織を支援

【地域自治組織の登録制度】対象、おおむね小学校区を単位として、自発的・継続的に活動を行っていること、規約等が定められていること、自治会の連合組織(その連合組織がない場合は小学校区内の8割を超える自治会)が参加していることなど、備考、登録は原則として1小学校区に1団体

【地域自治組織結成等支援交付金】対象、対象組織 (1)地域自治組織として登録されている組織、(2)地域自治組織の結成に向けた準備を行う、各種地域組織の連合体、対象事業 地域自治組織についての研修に関する事業、地域自治組織の結成に向け、地域住民が取り組む事業、地域情報の発信または共有に関する事業など、費用、上限30万円(2年を限度)、備考、予算の範囲内で実施

備考、詳細は要問い合わせ、問合先、市民協働推進課 電話620-1604

自分たちの地域に目を向けて

巻き込もう、巻き込まれよう

 地域の持つエネルギーは、関わる人が増えれば増えるほど大きくなっていきます。まずは小さな一歩で構いません。今、地域での活動をしている人は、ほかの団体や住民に声をかけ、いつもの地域行事に巻き込んでみませんか。また、活動をしていない人は、地域のお祭りや運動会のようなイベントをきっかけに、地域の活動に巻き込まれてみませんか。

 今の生活に何の不便や問題も感じていない人も、一度じっくりと考えてみてください。地域との関わりを持つことで、自分の生活や住む地域が良くなっていく可能性があることを。そして覚えていてください、あなたの地域にも必ずいる、地域への熱い思いを持った人たちの頑張りが、今の地域をつくっているということを。

「あなたの住む地域は どんな地域ですか?」

 自分たちの地域の特色についてひたむきに考えることはすなわち、自分たちの地域がどんな地域だったら良いかを考えることへとつながっていきます。地域づくりは間違いなく住民が主役。皆さんそれぞれが、自分たちの地域の色を考え、話し合い、決定していくのです。

あなたの住む地域、どんな色にしたいですか?