広報いばらき

文化財めぐり

Vol.102

問合先、文化財資料館 電話634-3433

銅鐸を描いた絵画土器

 平成16年(2004年)、東奈良遺跡の調査で、銅鐸の「鈕」と呼ばれるつり手部分が描かれた土器が発見されました。これは、全国でも初めての発見で、考古学上、大変重要な発見だと言われています。では、この発見からどのようなことがわかるのでしょうか?

 1つは、銅鐸が作られていた時期です。銅鐸は単独で見つかることが多く、年代を特定できる他の遺物と一緒に出土した例が少ないため、その製作時期を特定することは困難でした。しかし、今回の発見では、製作時期が特定できる土器に銅鐸の絵が描かれていました。それは、土器の製作時期が弥生時代中期(紀元前1世紀頃)であることから、そこに描かれた銅鐸もその時期までに製作されていたということです。

 もう1つは、弥生時代の人々の信仰です。この土器には、銅鐸の絵だけでなく、銅鐸の文様にもよく用いられる「流水文」や「シカ」と思われるモチーフも描かれています。一般的に銅鐸は豊穣をもたらす祭りの道具として使用されていたと言われています。絵が描かれた土器自体が珍しい上に、そこに描かれた文様が銅鐸の文様と共通しているという今回の発見は、銅鐸を用いた祭りの様子と、その根底にある当時の人々の信仰のあり方を解明する材料になると期待されています。

 はるか2,000年以上の時を経て見つかった土器は、現代を生きる私たちと、弥生時代の人々とをつなぐ大切な手掛かりといえるでしょう。