広報いばらき

特集 本との出会いをあなたに

活字離れが進み、年齢を問わず読書への興味が薄れていると言われています。しかし、本は感動や勇気、気づきを私たちにもたらしてくれます。さあ、あなたも素敵な本との出会いを見つけてみませんか。問合先、中央図書館 電話627-4129

chapter 1 赤ちゃんと本

言葉と心を育てる絵本

 赤ちゃんに絵本は早いと思っていませんか?赤ちゃんは生後2か月ぐらいから色を識別し、親の声を聞き分けると言われています。
 この頃から赤ちゃんに絵本を読み聞かせると、絵本の中に出てくる色や形、言葉を声に出して覚えます。そして、だんだんと言葉の意味を理解し、親が話しかける内容に笑ったり、あるいは泣いたりと、豊かな感情表現をするようになってきます。
 赤ちゃんの体の成長にミルクが必要なように、赤ちゃんの言葉と心を育むためには、抱っこの温かさの中で優しく絵本を読んであげる時間も必要です。

絵本を通して親子のつながりを感じる

 子育てをする親は、赤ちゃんとの関わり方で戸惑うことが多いと思います。言葉を話さない赤ちゃんに何を話しかけていいのか分からず、話しかけても返事がないので独り言のようになりがちです。
 絵本を読み聞かせると、赤ちゃんが絵を見つめたり、声に出して笑ったり、指をさしたりと反応するようになります。そうした赤ちゃんの新しい反応・興味・関心を発見することで親は赤ちゃんの成長を実感することができ、絵本を通して親子のつながりを感じることができます。
 読み聞かせをするときは親も絵本を楽しんでください。そして、赤ちゃんの反応に合わせてページをめくり、止まり、体を揺らしながら、同じ世界を親子で分かち合ってください。赤ちゃんは大好きなお父さん・お母さんの肌のぬくもりを感じながら安心できる声で語りかけてもらうことで、愛情を感じて人と心を通わせることを学びます。

親子で出会う初めての本

 市では、4か月児健診で赤ちゃんと保護者を対象にブックスタート事業を行っています。健診の待ち時間に図書館職員が本の大切さを説明したり、おはなし会ボランティアが絵本の読み聞かせを行ったりして、4種類の絵本から好きな絵本を1冊プレゼントしています。
 ブックスタート事業は赤ちゃんと親が絵本を開く楽しさを共有し、親子の心がふれあうきっかけを作ることを目的としています。
 ブックスタートが始まって今年で7年目。プレゼントする絵本がもしかしたら初めて親子で読む絵本になるかもしれない。そんな思いで、親子のスキンシップを促す本やリズム遊びができる本などを図書館職員が厳選し、プレゼントしています。もらった絵本がきっかけで図書館に同じ作者の絵本を借りに来た人もいます。
 図書館では0歳から利用カードを作ることができます。そして館内では、赤ちゃんが興味・関心を持つような絵本を自由に触って見ることができます。

ブックスタートで絵本をもらった加藤祥子さん、大地くん(1 歳5 か月)

 ブックスタートでもらった「ぴょーん」という絵本がこの子にとって初めての絵本でした。絵本の中の動物の絵を見て笑ったり、指をさしたりとよく反応し、気に入ったようだったのでボロボロになるまで読み聞かせました。私も絵本を通して子どもとのふれあいを楽しんでいます。

chapter 2 子どもと本

子どもが読書から学ぶこと

 成長するにしたがって子どもは本を「眺める」だけでなく「読む」ようになります。本を読むことで登場人物になりきってごっこ遊びをしたり、話の続きを自分で考えたりと想像力を働かせます。想像力が豊かになれば、登場人物の喜び、悲しみを自分のことのように感じられるようになり、そのうち現実においても他人の感情を理解できるようになります。相手がいま、どういう気持ちで話しているのか。それが分かれば、自然と人の意見を受け入れられるようになります。
 また、本の中の言葉を覚え、語彙を増やすことは子どもが自分の気持ちを他人に伝える際に大きな手助けとなります。自分の感情をうまく言葉で表現できないと、子どもにストレスがかかり、伝えたいことが伝わらないというもどかしさで常にいらいらしたり、人とのコミュニケーションが苦手になったりしてしまいます。自分がどういう気持ちなのかを適切に他人に伝え、それが理解されることで、子どもは「言葉で伝える」ことの大切さを知ります。
 人と付き合う経験の少ない子どもにとって、読書は単なる娯楽ではなく、色々な考え方や生き方、自分を表現する方法などを知ることができる絶好のチャンス。本を通して感じたこと・学んだことは、子どもの中でそのまま「体験」として蓄積されます。子どもは本を通して数多くのことがらを「体験」し、人との付き合い方を学ぶのです。

本に興味を持ってもらうために

 市内の各図書館、分室では、子どもたちに本に興味を持ってもらい、読書を習慣にしてもらうため、おはなし会を定期的に開催しています。
 おはなし会ではボランティアによる絵本・物語の読み聞かせ、絵本や紙芝居などを何も使わず物語を語る素話を行っています。ボランティアは、絵本を片手に、声の緩急・高低、間の取り方、ページのめくり方に気を配りながら話の世界を作ったり、小さなろうそくやライトの光だけが灯る部屋で素話を行ったりするなど、子どもの想像をかき立てる工夫をしています。
 また、中央図書館に依頼があれば、ボランティアを市内の保育園や幼稚園、小・中学校に派遣し、おはなし会を開いています。

おはなし会は読書への入口 おはなし会ボランティア大谷千由子さん

 保護者の中には、じっと座っていられない子どもを連れていくのは周りの迷惑になるから気が引けるという人もいます。しかし、子どもはじっとしていられないもの。慣れてくるとだんだんと座って話を聞けるようになるので、親子で一緒に楽しんでください。おはなし会は読書への入口です。その入口へ小さな子どもが自分で来ることはできません。子どもが本に触れる機会を積極的に作ってあげることが大切なので、親子でぜひ一緒に来てもらいたいですね。

おはなし会に参加した松山真琴さん、歩加ちゃん(5歳)、結香ちゃん(2 歳)

 おはなし会には3 人でよく来ています。家でも読み聞かせをしていますが、ここに来れば年齢が同じくらいの子どもたちと一緒に会話をしながら絵本を楽しめるので2 人ともおはなし会が大好きです。子どもたちには本を通していろんなことを学んでほしいですね。

chapter 3 本との出会い

心揺さぶられる本を見つける喜び

 皆さんの中には、以前は読書をしていたけれど、現在は本から遠ざかっている人や、子どもの頃からあまり本に興味がない人もいるかもしれません。
 本がなくても生きていくことはできます。しかし、本は年齢に関係なく私たちに大切なことを教えてくれます。例えば、本の内容が新しい気づきにつながったり、今の自分を見つめ前向きになるきっかけになったりします。本から離れている人は心揺さぶられる本を探し、見つけたときの喜びを体験してみませんか。本との出会いはまるで人との出会いのように、運命的な巡り会いを感じることもあれば、その後の人生を大きく変えることもあります。ここで紹介する福山恭子さんはそんな素敵な体験をしました。

「人生の師」になった一冊の本

 物心ついた頃から本が大好きだったという福山さん。高校時代に学校の図書館司書に紹介されたことがきっかけでドイツの作家ヘルマン・ヘッセを好きになったそうです。
 「思春期の私の悩みとヘッセの作品の主人公の苦しみに共通点を感じました。ヘッセは丁寧に言葉を選んでいて文章がとても上手なので、哲学的な内容でもすっと頭に入ってきます。生きるとは、愛とは、青春とはというメッセージが込められているヘッセの作品が大好きで全作品を読みました」。
 その中でも、19歳のときに出会った「愛と反省」という本は「私の聖書です。」と本に書き込むほど、福山さんの人生に大きな影響を与えました。
 「『愛と反省』を読み、ヘッセが作品に込めた『自分の人生を振り返りながら人を愛していく』というメッセージを自分なりに解釈し、いろんな人に愛を広めていきたいという人生の目的ができました。現在は視覚障害を持つ子どもに読書を楽しんでもらう活動を行っています。振り返ればこの本をきっかけに私の人生は広がっていきました。私にとってこの本は生き方を示してくれた人生の師のような存在です」と福山さんは自身の人生を変えた本への思いを語りました。

運命の出会いを、あなたも

 「その本をきっかけに人生が広がる」
 福山さんのように、そんな本に巡り会えることはとても幸せなことです。もちろん、心を揺さぶられる本は、人によって違うもの。皆さんがより多くの本に出会える場として、市内には5か所の図書館と8か所の分室があります。いずれの館でも、皆さんの興味・関心に合う本を提供できるようさまざまな分野の本を数多くとりそろえています。
 日々の暮らしを豊かにする読書を生涯にわたり支えるのが図書館です。ふと手にしたその本が、皆さんの人生を変えるきっかけになるかもしれません。まだ見ぬかけがえのない運命の本に出会いに、ぜひ図書館へお越しください。皆さんの来館を待っています。

どれにしようかな
今年度はこの中から1 冊をプレゼント

一度行ってみようかな
本との出会いをみんなで共有 読書会

 中央図書館では毎月2回読書会を開催しています。読書会は事前に決められた作品を読んでおき、その内容や感想を発表する場です。
 意見を交換して刺激を受けたり、思いがけない着想を得たりと、本との出会いを共有しています。

今月の読書会

とき、(1)5月9日(木曜日)、午前10時〜正午、(2)5月24 日(金曜日)、午後1時30分〜3時30分、内容、(1)「阿部一族」 森 鴎外著 新潮文庫、(2)「悲しみよこんにちは」 フランソワーズ・サガン著 新潮文庫

読書会に参加した矢谷信彦さん

 読書会にはよく参加しています。本を読んでみたいけど、どの本を読んでいいのか分からないという人もいると思いますが、読書会ではあらかじめ読む本が決まっているので良いきっかけになるのではないでしょうか。また、ほかの人の意見を聞いて作品を読み返すと新たな発見があり、面白いですね。

司書が選んだ こんな本はいかがですか?

(小学生向け)
『ボクがつくった世界のおやつどうぞ』 平野恵理子 作(偕成社)
世界のおやつ10 種類の作り方が書いてあるレシピ本です。
(ヤングアダルト向け)
『ビブリア古書堂の事件手帖』 三上 延 著(アスキー・メディアワークス)
接客が苦手な古書堂の若い女性店主が、いわくつきの古書にまつわる秘密を解き明かしていきます。
(一般向け)
『中野京子と読み解く名画の謎』 中野京子 著(文藝春秋)
キリスト教絵画をカラーで紹介し、その魅力を読み解いていきます。

そうだ、図書館に行こう
図書館の便利なサービス

  1. 相互貸借
    探している本が市内の図書館にないとき、府立図書館やほかの自治体の図書館から中央・中条・水尾・庄栄・穂積図書館に取り寄せができます。
  2. レファレンスサービス
    探している本や資料の調べ方が分からない場合などは、専門の司書が調べものや資料探しのお手伝いをするレファレンスサービスを行っています。
  3. Webサービス
    図書館でパスワードを登録すれば、自宅のパソコンから図書館が所蔵している図書・雑誌・AV資料の予約や貸出・予約状況の確認、貸出延長手続きができます。また、メールアドレスを登録すれば予約資料が用意できたときなどにメールでお知らせします。
  4. 商用データベース
    中央図書館では雑誌や新聞の記事、判例を検索できる商用データベース端末を設置しています。相談カウンターでお問い合わせください。
  5. おはなし室
    中央図書館の児童室にはおはなし室があり、親子で図書館の本を声を出して読むことができます。